愛を読むひと 

 

The Reader



終戦後のドイツで裕福な家庭に育った15歳のマイケル。
ある日の学校帰りに体調不良で電車を途中下車し近くのアパートに駆け込むと、ちょうど帰宅した住人のハンナに助けられます。

その後体調が回復したマイケルはお礼をするためハンナの部屋を訪れ、20歳以上年上の彼女に魅かれました再び彼女に会いに行った際に、二人は体を重ねます。マイケルにとって初めての女性経験でした。

読書好きなマイケルはハンナの希望で朗読を聞かせるようになります。ハンナにとってそれは大きな喜びであり、朗読は愛し合う二人を繋ぐ大切な儀式でした。



マイケルの計画で二人はサイクリング旅行に出かけます旅先のレストランでメニューを見て戸惑うハンナ、立ち寄った教会で賛美歌を聴いて涙をするハンナ。

電車の切符切りの仕事をしていたハンナは、真面目さを買われ事務職への昇格を言い渡されますが、悩んだ末に突然姿を消しました。マイケルが部屋を訪れた時はもう既にもぬけの殻でした。この時のマイケルには、ハンナが抱える深い闇を知る由もなく、ひどく打ちひしがれますひと夏の恋が終わりました。
 


優秀なマイケルはその後法科大学生となり、受講したゼミで実際の裁判を見学します。その法廷で被告人として名前を呼ばれたのは、驚くことにハンナでした。

ハンナは大戦中に、ユダヤ人収容所の看守をしていた経験を罪に問われていたのです。ハンナと同じように、ナチスの一員として働いていた人間は数多といましたが、ハンナが勤めていた収容所で生延びた親子が手記を出版したことにより、ハンナを含め6名の元看守が裁きにかけられました。

裁判の主な争点は、収容所での火災により約300名が亡くなったことが殺人にあたるか否かでした。実直なハンナは当時のことを正直に証言するため、他の被告から疎ましく思われます。そのため看守全員で作成した火災後の報告書を、ハンナ1人が記載したものだと罪を擦り付けられます。
必死で否定するハンナでしたが受け入れられず、筆跡鑑定のために彼女にペンと紙が用意されます証言台で動揺したハンナは、真実とは異なるのに自分が報告書を書いたと認めてしまいます。

その様子を傍聴席で見ていたマイケルの脳裏にハンナとの思い出が走馬灯のように流れ、彼は気づきます。

彼女が文盲であるということを…



自分が証人となればハンナの刑が軽くなると理解していたマイケルでしたが、彼女が非識字であることを恥じている気持を察し、結局証言することが出来ませんでした。そしてハンナに下されたのは、殺人罪による無期懲役刑でした。

その後結婚し一女を設けたマイケルですが、離婚報告のため、久しぶりに実家を訪れます。自分の部屋にはかつてハンナに朗読した本が残ってあり、彼は再び読み聞かせをすることを決意。朗読をテープに録音し、獄中のハンナに届けました。驚くハンナでしたが、マイケルの朗読に心を打たれます。そしてハンナは音源を元に、独学で字を覚えました。

時を経て朗読がまた二人を繋げたのです。



服役から20年後、ハンナの釈放が決定します。身寄りがないハンナの引受人を刑務所から依頼されたマイケルは、出所前にハンナとの再会を果たします。

マイケルは出所後の彼女の身の回りを用意しますが、出所の日にハンナは獄中で自殺をしました僅かな遺産は、収容所で生延びた娘さんに渡して欲しいと遺書を綴って…。