海街diary 

 



綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずが四姉妹を演じた是枝裕和監督の『海街diary』(15)は、第68回カンヌ国際映画祭コンペティション部門にて公式上映され、国内でも各映画賞を席巻。納豆や浅漬けが並ぶ朝ご飯に始まり、人気女優たちが飲み食いする姿が印象深い。

父の葬儀で出会った異母妹のすずを鎌倉に呼び寄せた日には、もちろん引っ越しそばに天ぷら。お節介だけれど、どこか冷静に四姉妹とその母(大竹しのぶ)を見守る大叔母(樹木希林)は、粒あんとこしあん、両方のおはぎを差し入れる。

近所の「海猫食堂」では定番のアジフライもいいが、アジの南蛮漬けも捨てがたい。長女・幸を中心に料理が苦手な母の定番シーフードカレーを作り、チカはすずにおばあちゃんの味のちくわカレーを振る舞う。すずにとって、仙台の生しらす丼も、鎌倉「山猫亭」のしらすトーストも亡き父の思い出の味だ。そして、庭の梅の木から収穫した実でつくる自宅で作る梅酒も、焼酎たっぷりだったり、酸味が強かったりと四者四様。

そんな日常の食卓を通じて、それぞれに問題を抱え、どこか心に距離があった四姉妹は、1歩ずつ成長しながら家族になっていく。特に“似た者同士”の幸と母、幸とすずが心を通わせるのに、自家製梅酒がひと役買う。希林さんが「この子に出会ったのがこの映画のポイント」と語ったように、新人賞を総なめにした広瀬すずの瑞々しさも見逃せない。