告発〜ヘンリー・ヤングの物語 

 

Murder in the First 



貧しい生活を妹と共にしていた青年ヘンリー・ヤング(ケビン・ベーコン)はある日貧しさに耐えきれずに妹のためにお金を盗んでしまいます。盗んだ金額は5ドルでした。あえなく捕まり投獄されるヘンリー。収監されたのは孤島に作られた脱出不可能と言われるアルカトラズ刑務所でした。5ドルを盗んだ罪で25年の服役を課されたヘンリー。

刑務所でできた仲間にそそのかされ脱獄を試みるヘンリー。しかし裏切りにあい脱獄は失敗に終わります。ヘンリーは独房に入れられ、三年半もの期間閉じ込められます。陽の光も届かない独房と簡素な食事でヘンリーは少しずつ精神を蝕まれていきます。独房生活から解放されたヘンリーへ虐待は続き、中でも副刑務所長のミルトン・グレン(ゲイリー・オールドマン)の虐待は常軌を逸したもので、二度と脱出しようなどと思わぬようにとヘンリーはアキレス腱を切られてしまいます。

ある日食堂で食事をしている時に、脱走の際に裏切りを働いた服役者を見つけたヘンリーは、衝動に駆られ手にしていたスプーンで襲いかかり柄の部分で相手の首を刺し殺害してしまいます。

その事件により裁判にかけられることになるヘンリー。ヘンリーの弁護士として新人弁護士のジェームズ・スタンフィル(クリスチャン・スレーター)がヘンリーの元を訪れます。ヘンリーは最初まったくジェームズに心を開かず、話ができないヘンリーの態度にジェームズは閉口しますが、ジェームズの根気強いアプローチにより大きな距離があった二人の関係は徐々に縮まっていきます。ジェームズはヘンリーからアルカトラズの異常とも言える虐待の話しを聞き、アルカトラズを告発し闘うことを決意します。

ジェームズはヘンリーと接していくうちにヘンリーに対して親身になっていき、自分自身もこの裁判を戦い抜こうと覚悟を決めます。しかし、アルカトラズ刑務所を敵にするということはアメリカという国家を敵に回すことと同じでした。ジェームスとヘンリーの訴えは世界中から大きな注目を浴にることとなります。しかし、敵に回した相手はあまりに大きく様々な圧力と嫌がらせがジェームズとジェームズの周囲の人間に降りかかります。

無謀とも言える闘いを挑んだジェームズの元からは兄で弁護士であるバイロンも離れていき、さらには恋人のメアリー(エンヴィスデイヴィッツ)すらも離れて行ってしまいました。ジェームズは大切なものを失いながらも奮闘します。裁判は流れが徐々に変わっていき、死刑判決が濃厚とされていたヘンリーに過失致死罪の判決が出される可能性が出てきました。しかし、突然ヘンリーが裁判に勝つことを拒み出します。ヘンリーは死刑にして欲しいとジェームズに頼みます。刑が軽くなることよりも死刑をヘンリーは強く望んでいました。説得を試みるジェームズですがヘンリーの考えは変わりません。頑なに死刑を望み続けていました。

ジェームズは最後の手段として裁判でヘンリーを証言台に立たせます。証言台に立ったヘンリーは裁判で、『あそこには戻りたくない。あそこに戻るくらいなら死んだ方がマシだ』と心から絞り出した声で絶叫します。泣き叫び死刑にしてくれと懇願するヘンリー。ヘンリーはアルカトラズ刑務所に戻されればどんな目にあうかがひたすら怖かったのです。その叫びは裁判に来ていた人達の心に響き、ヘンリーは死刑にならずに過失致死となり、結果的にヘンリーとジェームズはアルカトラズ刑務所との裁判で勝利を収めました。アルカトラズ刑務所には実態調査をするために捜査が入る事となります。

ヘンリーは刑務所に戻る際に、精一杯背筋を伸ばしていました。長い間独房生活を強いられた彼の身体は明らかにおかしな形になってしまっていました。アキレス腱を切られた足を引きずりながら、ヘンリーは「俺は勝った!」と何度も叫んでいました。

再び刑務所に戻されたヘンリーは、独房に閉じ込められた3日後にく自殺し、その生涯を終えました。独房の壁には『VICTORY』という文字が刻まれていました。妹を飢えさせたくないがために盗んだ5ドルがきっかけで始まったヘンリーの刑務所生活は、終わりを告げたのでした。この裁判をきっかけに刑務所内では様々な改革が行われ、やがて63年に完全閉鎖された。



ケビン・ベーコンの素晴らしい演技力!1941年に閉鎖され今は観光地となっているアトカトラズ刑務所で、実際に起きたヘンリー・ヤング裁判をもとに作られた映画です。最後には裁判で勝ちながらも、結局命を落とすことになってしまう…終盤ではとても泣けました。