続・深夜食堂 

 




「食べたいものがあったら、何でも言ってよ」深夜になると開店する、繁華街の路地裏にある小さな食堂「めしや」。その店を営むマスター(小林薫)が、作り出す料理はどれも見るからに絶品のものばかり。どこか懐かしい雰囲気が漂った街並みと趣のある店内。そこで展開される悲喜こもごもな人生ドラマ。


■「焼肉定食」

喪服を着るのがストレス発散という一風変わった女性・範子(河井青葉)は、出版社で編集者をしており、仕事でストレスが溜まると、気分転換に喪服を着て街を出歩き、シメに「めしや」で焼肉定食をたべる。そんなある日、本当の通夜の席で喪服の似合う渋い中年男(佐藤浩市)に出会い心惹かれていく模様を描く――。

 フライパンの上で炒められているのは、画面越しにでも香ばしい匂いが漂ってきそうなほど、きれいな焼き色がついたジューシーな豚肉。もやしと玉ねぎとともに、甘辛いタレがたっぷりと絡まったお肉に、シャキシャキな千切りキャベツを添えて、豪快に口に運ぶ。程よく脂が乗ったお肉の味を忘れぬうちに、ふっくらとした白米を勢い良く口にかき込む女性。


■「焼うどん」

近所のそば屋の息子・清太(池松壮亮)は、好物の焼きうどんをすすりに「めしや」に足を運ぶ。そんな清太は、父亡きあと、店を切り盛りする母親・聖子(キムラ緑子)が子離れしてくれず、年上の恋人さおり(小島聖)との結婚を言い出せずに悩んでいた。思わずクスッと笑ってしまう滑稽さと、1人ひとりの感情が絡まりあった複雑さの中にも愛が詰まった物語――。

 ツヤツヤと水々しいおうどんとともに、人参やピーマン、キャベツ、もやし、お肉といった彩り豊かな具材たちがフライパンいっぱいに炒められ、ジュージューと音を立てる。全体的に香ばしい焦げ目がついたら、アツアツの鉄板の上へ。仕上げに、踊る鰹節と淡いピンクの紅しょうがを添えて出来上がり。青年が、お箸で麺をすくい上げ、「フーフー」と冷まし、勢い良くズズズッと口いっぱいに頬張る。


■「豚汁定食」

お金に困った息子に頼まれ、九州からやってきた夕起子(渡辺美佐子)。息子の同僚という男性に大金を預けたというが、話を聞いた常連客たちは、“来て来て詐欺”ではないかと心配する。だが、あまり気にも留めない様子で、豚汁定食を美味しそうに頬張っている夕起子。迎えにやって来た義弟(井川比佐志)が夕起子の身の上話を明かしたことから、思いがけない真相が明らかになる――。

 「めしや」の看板メニューである“豚汁定食”。お鍋にゴマ油をしき、鮮やかなピンク色をした豚肉をサッと炒める。そこにちぎったぷるぷるのこんにゃくや、ゴロッとした根菜など溢れんばかりの具材を放り込み、ダシを注ぐ。最後に味噌をじっくり溶かして具材に染み込ませ、フワッと湯気が立ち込めたら、食欲をそそる刻みネギと、お好みで唐辛子を。アツアツな豚汁を包み込むように持って、丁寧にゆっくりとすする。ホフホフとしながら大根を咀嚼し、キラキラ輝くスープを体内に染み渡らせる。