大停電の夜に 

 



12月24日のクリスマスイヴの日。東京は大停電になり、街は真っ暗になる。ラジオではこのニュースを緊急で扱い、国民はざわついている。

この停電が起こったまさにその時、天体お宅の翔太は病院の屋上から空を見ていた。彼が見ていたのは天体ではなく、今にも自殺でもしそうな女性が心配で双眼鏡を覗いていたからだ。彼女の名前は麻衣子、思い悩んでいる様子。翔太は自転車の後ろに彼女を乗せて走り出した。

プレゼントを持って約束のレストランに向かう妻(原田知世)。夫の遼太郎(田口トモロヲ)は忙しくドタキャンは日常茶飯事だった。そして今夜もドタキャン。1人寂しく家に戻るのだった。

忙しいと電話をして妻を帰らせた後、向かった場所はホテルの1室。そこには美寿々(井川遥)が立っている。そして奥さんの元に返したくないのだと駄々をこね、遼太郎を困らせている。泣きながらホテルのエレベーターに乗り込んで来た美寿々。そこにいたのはホテルマンの冬冬(阿部力)だ。あまりに泣いている美寿々に大丈夫かと声をかけた。すると停電でエレベーターが止まってしまう。

街で惚れた女・礼子(寺島しのぶ)に再会する銀次(吉川晃司)。元ヤクザの銀次は礼子に会いに出所後すぐに戻る。しかし礼子は銀次を待てず他の男の子を身ごもっていた。地下鉄に乗っている最中に陣痛が来た礼子を銀次は担ぎ車外に出て線路を負ぶって歩くことにした。

小夜子は初老の女性。停電で子供達との外食も無くなり、夫婦で火鉢を囲んで酒でもと夫に提案した。そこで昔女学校の教師時代に同僚の男性との子供を出産した過去を初めて語り始めた。そしてその息子という人物から電話が来たことを話す。

キャンドル屋のオーナーの女性はのぞみと言う。彼女は店の前にあるバーのオーナー(豊川悦司)が気になっている。毎日彼の行動を観察していた。停電になり店のキャンドルを持ってバーにやって来たのぞみ。バーの店長の木戸はもう店をたたんでしまうのである。そのことを聞いたのぞみにキャンドルのお礼にビールでもどうかと誘った。そして弾かないベースのこと。好きだった彼女を待ち続けていること。木戸はのぞみに色々な事を語り出した。

産気づいた礼子を銀次と偶然居合わせた初老の男が病院に運ぶ。無事に出産したことを確認し、バーを訪れる。店の前には美寿々がいて、1人では入りづらく躊躇している様子だった。こうして見ず知らずの3人は入店する。

遼太郎の妻は離婚しようと決めていた。夜にふっと街に出て、バーの前へ。そう彼女こそがバーのオーナーが待っていた元彼女である。彼女は店には入らず通り過ぎた。

バーから帰宅後、初老の男は息子と名乗る人物と会うように妻の背中を押した。そして瀕死である元愛した男性に会ってきなさいと。妻の人生全てを受け入れた。

遼太郎は自分を産んだ母と再会し、バーの前を通った。そこには妻の姿が。左遷になったのだと告げる遼太郎に、妻は引っ越しの準備をしようと微笑んだ。こうしてやり直せるのかもしれない。

バーのマスターは店を辞めるからと、のぞみにニューヨーク行きのチケットをあげる。好きな人と行ってこいと。のぞみはじっとオーナーの目を見つめた。動揺しうろたえるオーナー。「やっぱり店辞めるのや〜めた!」と言うのだった。