ただ、君を愛してる 
〜恋愛寫眞 もうひとつの物語〜 

 




誠人は大学の入学式の日、交通量の多い道を横断しようとしている静流と出会う。コンプレックスを抱え人となかなか打ち解けられない誠人だが、不思議と静流とは仲良くなれる。そして、静流はそんな誠人に恋をする。誠人は、学校近くにある森で趣味の写真を撮り、静流も誠人と一緒にいたい一心で写真を始める。そんな中、同じクラスで秘かに恋心を寄せていたみゆきに声をかけられ、喜ぶ誠人。誠人のみゆきへの想いを知り、成長してきれいになると静流は宣言。

3年生の秋、静流が家出し、誠人の家に居候することに。抱いてもいいと言う静流だが、誠人は静流を女性として見ることができないでいた。ある日静流は、コンクール用の写真を撮るためにキスしてほしいと誠人にねだる。森でキスする二人。その時ようやく静流への想いに気付いた誠人だったが、静流は姿を消す。


 
卒業後、カメラマンになった誠人の元に、ニューヨークで個展を開くことを知らせる静流からの手紙が届く。早速ニューヨークへ向かうが、静流は仕事でロサンゼルスに発っていた。静流とルームシェアするみゆきと落ち合うが、留守番電話に入った静流の父からの伝言を聞き、誠人は愕然とする。静流は1ヶ月前に死んでいたのだ。静流は病を抱え、病が大きくなるので自分自身も成長しないように生きていたが、誠人と出会い恋をし、愛されるために成長しようと決意していたこと、誠人の中だけでは生き続けたいと願っていたことを知る。

翌日、静流の個展に足を運ぶと、そこには大人びた静流のセルフポートレート、誠人の日常風景、そして『生涯ただ一度のキス、一度の恋』と題されたあの日の写真が飾られていた。日本に帰ると、静流が生きているように見せかけるために書いていた葉書が届き、誠人は嬉しそうに受け取る。