(BMXライダー島比加瑠選手との対談 2021/8/9)
綿引:本日はBMXライダーの島比加瑠選手と対談をさせて頂くことになりました。私の同級生の弟である比加瑠選手と私は彼が3歳の頃から交流があります。小さい頃から人懐っこくて、負けず嫌いな印象ですが、いつの間にか背も高くなって、どんどんかっこよくなっていると感じます。 そんな比加瑠選手の、普段の競技だけでは明かされない、競技に対する思いやプライベートな側面などをこの対談を通して紐解いていきたいと思います。
綿引:今も負けず嫌いですか。
島:今はBMXですが、運動会や競争する行事などでは絶対に負けたくないと昔から思っていました。
綿引:段々と背も高くなって、かっこよくなっていく印象です。普段、トレーニングや練習で忙しいと思いますが、プライベートの時間はどんなことをすることが多いですか
島:休みの日はYou tubeやアニメや映画を見たり、地元の友だちと遊んだりとBMXをやっていないときには、あまりBMXのことを考えないようなことをしてオンオフを切り替えています。
綿引:オンオフを切り替えるコツとかはありますか。
島:練習を終える時に、完全にやりきったと思えるくらい完全燃焼することで、スッキリとオフにすることができます。逆に、リラックスするときも全力です。(一同笑)
綿引:BMXを始めたのはいつ頃ですか。
島:6歳の頃にはじめました。誕生日にマウンテンバイクを買ってもらって、走れるコースを探している時に、BMX用のコースを見つけました。そこで、マウンテンバイクとは少し違うBMX用の自転車を見つけて、それでBMXコースを走るのを見て、非常に魅力を感じました。それが、僕とBMXの出会いであり、BMXを始めたきっかけです。BMXには、技などのトリックを決める競技と、着順で順位を決めるレースがあるのですが、その時見たのがレースだったので、僕もそちらを始めることにしました。
綿引:マウンテンバイクとBMX用の自転車はぜんぜん違うのですか。
島:タイヤの太さ、フレーム、重さも全く違います。
綿引:BMXをしていて辛かったことや嬉しかったことはどんなことですか。
島:嬉しかったことは、大会で優勝したり、試合で色々な県に行くことができるので、ご当地のグルメを食べたりできることです。また、競技人口が少ないので、競技を通して地方にも人との繋がりができるのは嬉しいです。逆に、辛いのは、怪我が多いことです。そして、何より勝てないことが辛いです。僕は、小学校4年生までは結構勝てていたのですが、5、6年生になると、周りがどんどん身長も伸びて、全く勝てない時期がありました。いわゆるスランプというやつですが、体格の変化など今までと感覚も変わって本当に辛かったです。
綿引:小学生の頃は成長期もあるし、辛いですよね。それをどのように乗り越えたのですか。
島:中学1年生の時に、手術しなければならない大きな怪我を立て続けにしたことで、BMXに対する恐怖心が生まれてしまいました。その時に、成績不振だったこともあり、どんなに練習しても乗り越えられない壁だと感じてしまって、一度BMXから離れました。とにかく、BMX以外の他のことに視線を向けて切り替えた方がいいと考えました。中学では3年間バスケットボール部に所属してそちらを頑張っていました。
中学3年生のある日、動画サイトのオススメにBMXレースが出てきました。「3年ぶりに見てみよう」と思い、久しぶりに見た瞬間に自分の中から湧き上がってくる感情がありました。「もう一度BMXをやりたい。そして日本一になりたい」と。そうして僕は、日本一になることを目指してBMXに戻ることを決意しました。
綿引:一度離れたことで、BMXのことが大好きだったと再認識することができたのですね。一度離れてしまったことで険しくなる道ではあると思いますが、辛いと思いながら続けるより、もう一度新鮮な気持ちでチャレンジできる点では良かったのかもしれませんね。
島:はい。自分のように上からどん底までしっている方が強くなれると思います。勝ち続けている人は、一度負けると、なかなか立ち直れなかったりしますからね。そして、僕は再スタートで追う立場として下から這い上がるしかないという状況だったので、精神的には追われるより楽でした。ただただ上だけを見てがむしゃらに頑張りました。
綿引:話は変わりますが、紅茶が好きで良く飲むと聞きましたが、どんなときに飲むことが多いですか。
島:姉の影響で紅茶やコーヒーのようなリラックスするような飲み物を飲むようになりました。1日の疲れを癒やすために、寝る前に飲むことが多いです。飲むとホッとできるのでとてもリラックスした気分になります。どんな種類の紅茶でも好きで色々なものを楽しみたいです。
綿引:ベルフィーユの紅茶はブレンドティーがほとんどなので、今までにない紅茶の味わいだと思うので色んな種類の紅茶を楽しんでいただけたら嬉しいです。
島:そうですね。今日だして頂いているの(HC Andersen)もとても美味しいです。部屋に入ってきたときも、紅茶の香りがふわーっとして感動しました。
綿引:東京2020のオリンピックでBMX競技の手伝いをしたそうですが、どんなことをしたのですか。
島:コースのラインを引いたり、選手が転倒した時の対応のお手伝いをしたり、BMXを知らないスタッフさんに対してBMXの立ち振る舞いなどに関して説明したりしました。あと、コースの掃除や整備もやりました。小さな石でもとても大きな危険になります。それを取り除いたり、乾いて乾燥してしまうのを防ぐために水をまいたりしました。
綿引:今回、手伝いをすることによって、どんなことを思いましたか。
島:今まで多くの大会に出てきましたが、一度もコースのメンテナンスをやる経験はありませんでした。今回、レースをする側ではなく、裏方として実際に携わらせて頂くことで、整備されたコースを走ることの有り難みをより一層強く感じることができました。自分が練習や大会で走ることができるのは、このような裏方として頑張ってくださっている人がいるということを常に忘れないようにしたいと思いました。
綿引:オリンピックのコースを実際に走ったりしてみましたか。
島:本気では走っていないですが、1回だけ走りました。コースが長くて、コブが立っていて難しそうだと感じました。
綿引:BMXは場所によって全然コースが違うのですか。
島:そうですね。全く違います。土かコンクリートかという違いや、コブの高さ、コースの長さに至るまで、世界中のどこを探しても一つとして同じコースはないです。なので対応力が重要になってきます。さらに、動画でコースを見て、走り方やレース展開をイメージして、実際に会場に行った時にそれが体現できるという力が非常に大切であると思っています。僕自身は、そこがまだまだなので、これから先、世界と戦っていくために強化しなければならない点のひとつであると考えています。
綿引:今までで一番印象深い大会はありますか。
島:昨年(2020年)の全日本選手権です。今まで、全日本選手権の年齢別の試合で優勝したことがありませんでした。復帰した時の目標でもあった全日本選手権男子ジュニアクラスの優勝は本当に嬉しかったです。やっと1歩を踏み出せたという感覚でした。次に繋がる大きな自信となりました。
綿引:最後になりますが、今の一番の目標はなんですか。
島:今年からU-23クラスが設立されました。そのクラスでワールドカップ優勝することが当面の目標です。そこから段階を経て、その上のエリートクラスでも勝てるようにしたいと考えています。今回、東京2020オリンピックで、目の前でBMXの世界のトップ選手の走りを見ることができたのは大きな経験となりました。まだまだ、自分がいるところから、オリンピックというところまでは遠いと感じました。今の目標として、オリンピックに出場することと言う資格は自分にはないです。緊張感やレベルの高さをしっかりと胸に焼き付けたので、最終的な目標であるオリンピックの決勝の舞台でスタートを切ることができるように頑張りたいと思っています。まずは、自分の現状をしっかりと把握した上で、ひとつひとつステップを上がっていきたいと思っています。BMXは恐怖心との戦いだと思うのですが、攻めるべきところをしっかりと攻めて積極的な走りが常にできるようになりたいです。
綿引:今回は忙しい中、時間をつくって頂きこの対談が実現しました。まだまだ、日本ではマイナースポーツで競技人口が少ないためスポンサーの獲得も大きな課題となっています。BMX試合の遠征費などに多くの資金が必要です。私が代表を務めるベルフィーユでは、これからも比加瑠選手を応援し、収益金の一部を寄付致します。ベルフィーユがまだまだ収益も少ないので微力ですが、これからの未来を担う若者を応援できるように、私自身もベルフィーユを盛り上げていけるように頑張っていきたいと思います。本日はありがとうございました。