風と共に去りぬ 

 

Gone with the Wind 



舞台は奴隷制が残る1860年代のアメリカ南部・ジョージア州。南北戦争の頃である。

アイルランド系移民で一代で成功した農園主の娘、美しいスカーレット・オハラは、自分と同じ上流階級で長身の美青年アシュレー・ウィルクスに恋をしていた。だがアシュレーは、アシュレーの従姉妹メラニーと婚約していた。「12本の樫の木屋敷」でのバーベキューパーティーで、2人の結婚を知って愕然としたスカーレットはアシュレーに想いを打ち明けるが、アシュレーはスカーレットに惹かれていることは認めながらもメラニーと結婚すると言う。
アシュレーが去った後、癇癪を起こしたスカーレットはそばにあったウィルクス家の花瓶を投げつけて壊す。偶然、一部始終を目撃したレット・バトラーは、彼女の生命力にあふれた躍動的な精神に強く魅かれる。

スカーレットは軽蔑する友人達の陰口を聞き、アシュレーへの当て付けのためにメラニーの兄が自分に求婚をするように仕向けた。何も知らないチャールズは、スカーレットの思惑通り、南北戦争の開戦のニュースに沸き立つ中で彼女に求婚、スカーレットは後悔しながらも結局結婚してしまう。しかしチャールズは結婚後間も無く戦場に赴き病死。スカーレットは17歳にして未亡人となる。

アトランタに赴き、ピティパット・ハミルトンとメラニーとの新生活を始めたスカーレットの前に、かつて無頼な行為で社交界から締め出されたレットが、彼女が未亡人になった事を聞いて現れる。スカーレットに自分と似たものを感じるレットは、スカーレットが被る淑女の仮面を取り去り、彼女本来の姿を露わにしようとする。またスカーレットも、喪服姿でダンスパーティに参加する等破天荒な行為で周囲の度胆を抜く。

そんな中、南軍は北軍に対して苦戦を強いられ、遂にアトランタの陥落も目前となったが、出産を目前に控えたメラニーの看護をしていたスカーレットは、脱出の機会を失ってしまう。進撃する北軍の砲声の中、産後間も無いメラニーとその赤ん坊やウェードを抱えて脱出の機会を失い途方に暮れた彼女は、大嫌いなレットに助けを求める。タラへの帰還を望む彼女を、レットは炎上するアトランタから痩せ馬の馬車で脱出させる。危険地帯を通り抜けた後、レットは自分は軍隊に入るのでこの先は一人で帰るようにとスカーレットに告げる。冗談だと思い笑うスカーレットに情熱的な口づけをして、レットは南軍の守る前線へと赴く。

置き去りにされて怒り心頭に発したスカーレットだが、ようやく故郷・タラへと到着した。しかしタラは北軍の駐屯で荒廃し、頼りにしていた母・エレンも腸チフスで病死していた。一夜にしてオハラ家の主となった彼女の意識は、飢えを凌ぐ事と故郷を守る事だけに集中する。税金の工面に窮したスカーレットは、妹スエレンの恋人であり商店を営んでいたフランク・ケネディを奪い再婚したが、やがてフランクの商才の無さから自ら商売を始める。当時女性が男性を差し置いて主体的に経営を行う事はタブーに近かった事や、北軍の移住者と友人になったりした事から周囲からの評判は下降し、メラニーを始めとするウィルクス家の人々とレットを除き彼女の周囲から古い友人は続々と離れていく。また彼女の不用心な行動が難民から襲われる事件を引き起こし、加害者に制裁を加えようとしたフランクは銃弾に倒れてしまう。


スカーレットは、レットと三度目の結婚をする。レットはそれまでの夫と違い妻が商売をすることに反対せず、スカーレットの自由にさせる。やがて二人の間には娘のボニーが生まれ、レットは初めての娘を溺愛する。しかし、スカーレットの想いが依然としてアシュレーにあり、また彼女が自分を愛する者に対して無慈悲である事を知るレットは、以前からスカーレットを愛していた事をひた隠しにする。またスカーレット自身も次第にレットを愛するようになっていたにも係わらず、自分は相変わらずアシュレーを想い続けていると信じ込み、それを自覚する事が出来ずにいた。ある日、スカーレットはアシュレーとの会話で、彼がレットと自分の夫婦関係を嫉妬していることを知る。スカーレットはレットにこれ以上子供を作りたくないという理由で寝室を別にしたいと告げる。するとレットは、スカーレットが夫としての自分の権利を拒絶するなら今後は他にいくらでもいる別の女と関係を持つだけだと告げ、スカーレットにせいぜい純潔を守ることだとも言う。

何事もなかったかのようにレットが去ったあと、スカーレットは、以前から自分を悩ましていた、冷たい霧の中を恐怖にかられ必死に何かを求めて彷徨う悪夢から夜中に目覚めても、今までのようにレットの逞しい胸に抱き寄せられて慰められることはもうないのだと後悔し、自分をひどく不幸に感じて泣く。ある時、酔ったレットがスカーレットを強引にベッドに連れて行き、スカーレットは初めて肉体的な喜びを知る。しかし、レットは自らその行為を恥じる。一方レットの情熱的な訪れを待つスカーレットは、訪れる事の無いレットに対して自分が単に嬲り者にされたと思い、二人の気持ちはその日から更に擦れ違い、夫婦仲は日増しに険悪になって行く。

再び妊娠したスカーレットにレットが暴言を吐いた事が切っ掛けで、スカーレットが階段から転落、流産して生死を彷徨う。レットはメラニーに、スカーレットがもし死んでしまったなら耐えられないと、スカーレットへの激しい愛を吐露する。しかしこの流産は二人の間に深い溝を作る事になり、レットはボニーに全ての愛情を注ぐが、ボニーは彼がプレゼントしたポニーの「バトラーさん」から落馬し、スカーレットの目の前で死んでしまった。これを機にスカーレットとレットの最後の絆が断たれてしまい、レットは家に寄り付かなくなる。

娘を失ったショックから抜けきらない内に、スカーレットに最後まで友愛を示し続けたメラニーまでが命を落とす。スカーレットは、この時初めてアシュレーを奪った恋敵として憎んでいた筈のメラニーを、実は心から愛し頼りにしていた事に気付く。また、死の床のメラニーからレットの自分に対する愛情を知らされ、初めて、自分も愛しているのはアシュレーではなくレットであり、これまで彼女を理解し助けていてくれたのも彼だという事を自覚する。

スカーレットはレットに心から謝罪し愛を打ち明ければ、二人の関係も回復するだろうと思っていた。しかしレットは既にスカーレットを追う事に疲れ切っていた。これまで隠して来た心の内の変遷と、ボニーを溺愛したのはスカーレットを素直に愛すことができない代償であったこと、結論として、もうスカーレットを愛してはいない事を説明し、一人で故郷のチャールストンに帰るつもりだと言う。スカーレットは必死に泣きすがるが、もはやレットの決意をひるがえすことは不可能なことを悟る。自分を支え続けてくれたレットとメラニーを同時に失い遂に孤独となったスカーレットだが、彼女はやがて明日に希望を託し、絶望の中から一歩踏み出す。