-蟲柱・胡蝶しのぶ-

***ネタバレ知りたくない方はご注意ください*** 

那多蜘蛛山へ援軍として駆けつける
姉の仇である童磨との遭遇
童磨を倒すために喰われることを決めていた
胡蝶しのぶの過去

胡蝶しのぶ(こちょうしのぶ)は鬼殺隊の隊士の中でも、柱と呼ばれる剣士の一人である「蟲柱」。
竈門炭治郎が水柱・冨岡義勇の次に出会った、二人目の柱である。
不死に近い人喰い鬼の数少ない弱点である、藤の花から精製した特殊な毒によって鬼を滅殺する。
 常に微笑みを絶やさず、誰に対しても丁寧な口調で話し、「人も鬼も仲良くすればいいのに」と口にして、鬼を前にしても『和解』の言葉を紡ぐ平和主義者のように振舞う。

――しかし、彼女の提案する『和解』とは目玉をほじくりだしたり、内臓を引き摺り出したりという凄絶な拷問に耐え、罪を償った上でならばという『和解』。如何に不死の鬼といえども到底受け入れ難い条件を伴ったものであり実質的には挑発に過ぎない。

この『和解』の条件もまた、その苛烈な内容に反して鬼に対してにこやかに告げていたために、当初しのぶはおよそマトモじゃない人格の持ち主のように思われていた。
しかし、実際はそのような人物ではなく、しのぶがこのような言動をするようになったのには、実姉である胡蝶カナエが鬼を哀れみ、鬼との友好を信じていたことが深く関係している。



―那多蜘蛛山へ援軍として駆けつける―
~那谷蜘蛛山編~
 
【原作】5巻第41話「胡蝶しのぶ」~6巻第44話「隊律違反」

水柱の冨岡義勇と共に那多蜘蛛山の戦いに援軍として現れる。
鬼殺隊の面々を操って殺し合わせたり、繭にして殺害していた鬼の元に訪れる。しのぶの強さを肌で感じた鬼は、下弦の伍である累に無理やり従わされていることを告げる。しのぶは笑顔で「それは痛ましい。助けてあげます。仲良くしましょう。」と言うが、しのぶは鬼に人間を何人殺したのかを問い質す。

その鬼は80人以上の人間を殺していた。しのぶは「人の命を奪っておいてなんの罰もないなら、殺された人が報われません。人を殺した分だけ私がお嬢さんを拷問します。目玉をほじくり出したり、お腹を切って内臓を引き摺り出したり、その痛み、苦しみを耐え抜いた時、あなたの罪は許される。」と告げた。

それを聞いた鬼はしのぶを攻撃する。しのぶは『蟲の呼吸 蝶の舞 戯れ』を使って鬼を毒殺した。

その後、しのぶは禰豆子を見つけ、即座に殺害しようとする。しかし、それを義勇に阻止される。
 
【原作】6巻第45話「鬼殺隊柱合会議」
~51話「機能回復訓練・後編」

柱たちが一堂に会する『柱合会議』で禰豆子のが人を襲わないことが証明され、しのぶは負傷した炭治郎を自身の屋敷で引き受ける。

数日後、屋敷で訓練する炭治郎の元へ現れる。しのぶは「君には私の夢を託そうと思って」と話した。その時、炭治郎はしのぶから怒りの匂いがすることに気付く。それを指摘されたしのぶは、姉が鬼に殺害された事、姉が炭治郎のように優しく鬼に憐れみの心を持っていたことを話した。

しのぶは姉の想いを継ごうとしたが、鬼への憎しみは募るばかりだった。しのぶは立ち去る間際に「自分の代わりに君が頑張ってくれていると思うと私は安心する。気持ちが楽になる。」と話して姿を消した。



―姉の仇である童磨との遭遇―
~無限城編~
 
【原作】16巻第140話「決戦の火蓋を切る」
~第142話「蟲柱 胡蝶しのぶ」


信者と思われる人間達を喰らっている最中、無限城に乗り込んできた蟲柱・胡蝶しのぶと対峙する。

そこで、彼がかつて彼女の最愛の姉の命を奪った仇である事が明らかになる。激しい憎悪を向けられるも、上弦の弐・童磨はそんな復讐にも意に介さず血鬼術で着実にダメージに加えていく。

しのぶは童磨に「今まで会った柱の中で最も早い」と称された。そのスピードを持って童磨に毒を注入することができたが、童磨は毒を分解してしまった。しのぶは毒の配分を変え、何度も毒を打ち込む。しかし、しのぶは童磨から斬りつけられ重傷を負う。

童磨は「毒じゃなく頚を斬れたら良かったのにね。あーー無理かあ君小さいから」と話した。しのぶは「あとほんの少しでも体が大きかったら鬼の頚を斬ってたおせたかなあ」「姉さんは華奢だったけど私より上背があった」「悲鳴嶼さんいいなあ。あの人が助けに来てくれたら皆安心するよね」と泣き言を吐いた。

その時、しのぶの前に姉のカナエが現れ「しっかりしなさい。泣くことは許しません。立ちなさい。蟲柱 胡蝶しのぶ。」「しのぶならちゃんとやれる。頑張って。」と言う。しのぶは立ち上がり、渾身の突きを童磨の頚に叩き込んだ。
 
【原作】16巻第143話「怒り」

しかし、童磨は全ての毒を分解した。そして童磨はしのぶを抱きしめ「えらい!よく頑張ったね!こんな弱い女の子がここまでやれるなんて!姉さんより才も無いのによく鬼狩りをやってこれたよ!今まで死ななかったことが奇跡だ!」と涙を流した。童磨から最後の言葉を聞かれたしのぶは「地獄に堕ちろ」と言う。

次々に賛辞の皮を被った侮辱で泣きながら徹底的に愚弄し、その場に駆け付けた栗花落カナヲの目の前で両腕で止めとばかりに抱きしめて全身の骨を折り砕き殺害した。

しのぶの死に衝撃を受けるカナヲを、童磨はしのぶの遺体を自身の体に吸収する様を見せ付けて挑発する。これを目の当たりにしたカナヲはかつて無い程に激昂し凄まじい怒りと憎悪を胸に、自分を拾い育ててくれた姉同然である胡蝶姉妹の仇を討つべく童磨と対峙する。



―童磨を倒すために喰われることを決めていた―
~無限城編~
 
【原作】19巻第162話「三人の白星」

しのぶは鬼殺隊の長である産屋敷耀哉から、上弦の鬼には藤の花の毒が効かないことを予見されていた。そこで無惨に反旗を翻している鬼・珠世と共に毒を改良していた。そして、藤の花の毒を日々摂取していた。それにより、しのぶの身体自体が毒の塊となっていた。

しのぶはカナヲに童磨を倒す方法を伝えていた。それはしのぶが喰われて、童磨を弱体化させる方法だった。

伊之助がカナヲに合流し二人で童磨と戦うが、それでも童磨は優勢に戦いを進めていた。そこでしのぶを喰ったことで致死量の700倍の毒が回り、童磨の身体が溶け出す。

カナヲは動体視力を極限にまで引き上げる技『花の呼吸 終ノ型 彼岸朱眼』を使い、童磨の頚に迫る。童磨の血鬼術で凍らされるが、伊之助が日輪刀を投げ、カナヲの刀を押し込んだことで、童磨は頚を落とされた。
 
【原作】19巻第163話「心あふれる」

童磨は死後の世界でしのぶに再会する。しのぶは童磨に「あ、やっと死にました?良かった。これで私も安心して成仏できます。」と言う。出来ることなら自分の作った毒で童磨を葬りたかったが、結果万歳ですと喜ぶしのぶ。

童磨は生まれてこのかた、何も感じたことが無かった。しかし、そんなしのぶを見て、童磨は初めて恋心を抱いた。童磨は「今はもう無い心臓が脈打つような気さえする。これが恋というやつかなぁ。可愛いねしのぶちゃん。俺と一緒に地獄に行かない?」と言うが、しのぶは「とっととくたばれ糞野郎」と返した。

その後、しのぶは姉のカナエと共に両親と再会した。



-胡蝶しのぶの過去-
【原作】17巻第143話「怒り」


**両親の仇討ちのため鬼殺隊へ**
カナエとしのぶは幼い頃に鬼に襲われて家族を殺されており、彼女達だけは間一髪のところを、悲鳴嶼行冥に命を救われている。

小説版第2巻「片羽の蝶」によると、隠によって親戚の下へと送られ、悲鳴嶼のおかげで損傷は少なく済んだ両親の亡骸を納棺した後に、姉妹は隠から命の恩人の名前と住まいを聞き出し、鬼殺隊に入隊する為に押し掛け弟子となり、家事手伝いを行う。

両親の仇を討ち、自分達のような境遇の人間を少しでも減らしたいと熱望する二人に、親戚の下で普通の娘らしい暮らしを送る事こそが幸せだと悲鳴嶼は諭すが、姉妹は頑として聞き入れず、根負けした悲鳴嶼は二人に試練を課している。

その後、悲鳴嶼の試練を乗り越えた姉妹は彼に認められて、彼が紹介した育手の下で別々に修練を積む。そして最終選別で再会した後に、共に最終選別を潜り抜けて、鬼殺隊に入隊する。

【原作】16巻第141話「仇」
**最愛の姉の死**
彼女の「人と鬼が仲良くできればいいのに」というのは、元々は姉の言葉である。

四年前、しのぶが14歳の時、その強さと優しさを兼ね備えたまま柱にまで上り詰めたカナエさえもまた、上弦の鬼の手にかかり、しのぶの目の前で事切れるという最期を迎えた。
愛してやまなかった姉が無慈悲に鬼に殺され亡くなる姿を見て、しのぶの心は怒りと悲しみに引き裂かれたのである。

カナエが17歳で亡くなる直前にしのぶへ遺した言葉は、鬼殺隊を辞めて普通の女の子として長生きして欲しいという、かつて悲鳴嶼が姉妹に諭した事と同じものだった。
しかし、しのぶは決して鬼殺隊を辞めず、やがて藤の花の毒を開発しかつての姉と同じ柱になる。
**しのぶの『笑顔』**
カナエの葬儀以降、しのぶは常に笑顔を浮かべるようになる。しのぶの笑顔は、姉が自身の笑顔を好きだと言ってくれたこと、そして常に優し気な笑みを浮かべていた姉に起因するのだが、それは心からの表情ではない。

両親を殺され、姉を殺され、カナヲ以外の継子の少女達も殺され、家族を殺された蝶屋敷の少女達の悲しみも見てきたしのぶの中には、どうしようもない程に鬼に対する深い嫌悪感と憎悪があった。
一方で、それでも亡き姉の「鬼は哀れな存在」「鬼とも仲良くする」という夢を追いかけなければならないという強い使命感にも囚われていた。

鬼を憎む気持ちを隠して姉の理想を追いかける、という相反する複雑な心持ちのまま微笑みの仮面をかぶり続けることで、しのぶの精神は疲弊してしまっている。
口では「鬼と仲良く」と言っておきながら、命乞いをする鬼に対してあえて惨いとしか言い様のない和解方法を和やかな表情で話し、それを拒絶されてから殺すという事を行っていたのはこのような理由からである。


 
それ故、鬼に対し哀れみの心を忘れない炭治郎と、人を喰わない鬼の禰豆子という姉の理想を体現したような存在である竈門兄妹には、「自分の代わりに君が頑張ってくれていると思うと私は安心する、気持ちが楽になる」とおそらく初めて他人に自身の胸中を吐露し、「頑張ってくださいね、どうか禰豆子さんを守り抜いてね」と生前の姉の願いと自らの夢を託した。
**本来のしのぶ**
原作本7巻「番外編」にて、カナエ存命中の時系列での胡蝶姉妹と後に継子となるカナヲとの出会いが、同じく番外小説「片羽の蝶」では鬼殺隊に入る前の彼女が描かれた。

この頃のしのぶは、現在とは対照的に常に眉間にしわを寄せたしかめっ面で、とても勝気で行動に移るのも早い。名前も付けられず縄で連れられたカナヲを見かねた姉の意を汲み、金銭を路上にばら撒く事で人売りの気を逸らした隙にカナヲを連れ去るという、大胆かつ直情的な行動をとっており、これが“本来の性格”と思われる。





**全集中 蟲の呼吸**
体格に恵まれない女性であるしのぶは、鬼の頚を落とすには筋力や斬撃の重さが足りないが、幻惑的な脚運びの突き技特化の型により、毒に濡れた刃を振るう。その戦い方たるや、まさに「蝶のように舞い、蜂のように刺す」。

なお、呼吸法は姉が用いていた「花の呼吸」から更に自身に適したスタイルへと派生させた独自の流派である。その為か、技名が伊之助同様「~ノ型」ではない。
 

 
**藤の花の毒**
しのぶが、本来ならば日光と日輪刀による斬首でしか滅殺できない鬼を殺せるように、藤の花から抽出・調合した特別製の猛毒である。
しのぶはこの毒を何種類も調合・用意しており、日輪刀に仕込んで鬼の強さや性能によって的確に使い分けている。