ミステリと言う勿れ




バスジャック事件に巻き込まれ、犬堂家に連れて行かれた久能整(菅田将暉)。バスが休憩に寄った公衆トイレの近くで整のメモの破片を拾った風呂光巡査(伊藤沙莉)が連続殺人事件との関係を突き止め、青砥(筒井道隆)や池本刑事(尾上松也)とSATを連れて犬堂家に突入する。

あのー、僕は常々思ってるんですが──整は話し出す。
サスペンスドラマでよく、刑事が犯人に背を向けて話し出したりするが、そんなことしたら危ない。バスの中でオトヤがガロ(久保田悠来)に背中を向けたから不用心だと思ったら仲間だった。

ガロが描いたという絵は左利きの人が描いた絵。左利きの人の絵は左上がりになる。ちゃんと絵を勉強した人はそれを克服するから、下手の横好きレベルだ。ガロは右利きだ。本当の犬堂ガロは、ガロが背を向けた唯一の人物。整は熊田翔(永山瑛太)に向かって言う。
 
犬堂ガロ(永山瑛太)は、乗客に混じってその言動を観察していた。犬堂愛珠はガロの妹、犬堂オトヤとハヤは従兄弟で、バスに乗ってから行方不明になって殺された愛珠の死の真相を突き止めるために、最後に一緒にバスに乗っていた乗客を集めたのだった。

犯人は君かな?
ガロは愛珠の写真を見て顔色を変えた淡路一平(森永悠希)を追及。しかし淡路は、眠っている愛珠のバッグから見えていた財布を盗んだだけ。淡路がいつもバイトをクビになるのは、その盗癖のせいだ。

──柏めぐみ(佐津川愛美)が「ごめんなさい」と謝る。バスを降りるとき、具合の悪そうな愛珠に手をつかまれたが、自分のことで精一杯で気づかないふりをしてしまった。
──露木リラ(ヒコロヒー)も、愛珠のことが気になっていたが声をかけなかった。
──奈良崎(金田明夫)は探偵に写真を見せられたが、全然覚えていなかったと言う。

まだ誰かが嘘をついている──、と言うオトヤに整は「嘘なんてついてませんよ」と言い、運転手の煙草森(森下能幸)に語りかける。整は煙草森の奇妙な行動を観察していた。こぼした食べ物を拾ってゴミ箱に捨てるかと思ったら、カーペットの下に何度も押し込んだ。チキンの骨も皿の下に隠していた。

はい。片付けました。見えないように。
視界から消えればその存在がなくなったと思う。
嫌なものを隠すのは子供にはよくある行動だ。
「あなたは人を殺したんじゃなくて、ただ片付けただけなんですよね。」
「はい。そうです。わかってもらえますか?」

煙草森の自白は衝撃的なものだった
「 いつもは終点で乗客が全員降りたか、忘れ物はないかを確認するのに、車庫に戻る途中、たまたま急ブレーキを踏んだら、衝立の裏に隠れていた愛珠が倒れた。自分のせいで気を失ったり怪我をしていたら、会社に怒られる。怒られるのは嫌です。一旦草むらに隠しておいて夜、山の中に埋めに行った。埋めたらなくなります。見えなくなればOKです。」

──しかし愛珠は生き返った。煙草森は押さえつけて隠した。しばらくしてから、押さえつけたときの身体の震えの感触を思い出して、最後の乗客がひとりのとき、薬で眠らせて同様の犯行を繰り返したと言う。

呆然とする一同。整はガロに、煙草森が犯人だとわかっていたんでしょ、と確認する。淡路一平を犯人呼ばわりしたのは、何か隠していることを白状させるため。

事件の真相を知ったリラは「バスジャックじゃない、バスハイクだ」とガロたちの犯行を否定する。池本はすべて署に行ってから聞くと言う。

庭に出た整とガロ。整は、ガロが犯人を観察するためだけでなく、犯人から乗客を守るために乗客に紛れ込んでいたことを指摘する。

愛珠は幼い頃から病弱で親の愛情を独り占めしてわがままな女王様だった。でも愛してた、とガロ。子供の頃に「死んじゃえ」と言って後悔したのは愛珠のことだった。

ガロくんは整に「誰かのクセを真似するクセ」があると指摘。それは子供がよく親の関心を引くためにやること。小さい整くんは誰の関心を引きたかったのか──。でもクセを真似するのは相手を怒らせることがあるから注意するようにと忠告する。

整はガロくんに「今度家に遊びに来て」と誘う。
「不起訴になったらね」とガロ。
整は「ガロってどんな字?」と聞く。
「我が路」とガロ。
 
キーマカレーを作っていた整のところに冷凍便が届く。差出人は犬堂我路──ガロくんがカニかホタテでも送ってくれたのかな?とウキウキしながら荷物を開ける整だが、中身はなんと手首から切断された人間の手。ガロくんの腕時計とエンジェライトのブレスレットが付いている。

「我路くんの手?」
もう子供じゃないんだから、ダンゴムシになっちゃダメ…。
ショックを受けた整はダンゴムシのように丸まってしまう。

後日、青砥に呼ばれた整は、切断された手はガロくんではなく煙草森のものだった。警察に証拠を集めさせ、裁判を待つだけとなっていたが、精神鑑定に持ち込まれそうになったから、一線を越えた。
犬堂我路、オトヤ、ハヤは行方不明だという。

警察を出た整はガロくんに思いを馳せる。自分のことをうざがらない珍しい人──。許しを願うエンジェライトの石はもうガロくんには必要なくなったのかもしれない。許しを願わなければならないのは煙草森だ。

ガロくん、こっそりうちに来ていいよ、春になったらね。

整は、意を決してヘアーアイロンを買った。サラツヤ〜と言いながらアイロンで天然パーマの髪を伸ばしてみるが、あることに気づく。サラツヤになってもイケメンになるわけじゃない──
 
その頃、犬堂我路、オトヤ、ハヤはクルーザーで海に逃げていた。叔母から電話があり、愛珠の家を片付けに行ったら、奇妙な手紙が届いていたと言う。それは香川県にある「漂流郵便局」で犬堂愛珠が書いたハガキを見つけた。一度見に行ってみてはどうかという遺族宛てのものだった。

我路は、いつもタクシーにしか乗らない愛珠がなぜあの日はバスに乗ったのか、不可解な行動の理由を知りたかった。
3人はクルーザーで「漂流郵便局」へ向かう。
 
漂流郵便局」は亡くなった人へなど受け取る人がいない手紙や、過去や未来の自分宛ての手紙などを受け取ってくれる郵便局。誰でも閲覧できるし、自分や家族のものなら持ち帰りもOK。ハヤが愛珠の書いたハガキを見つける。汚い下手くそな字はたしかに愛珠のものだった。


もうすぐ亡くなるわたしへ
ずっと不自由だった
思うように生きられなかった
腫れ物にさわるように扱われた
わがままを言っても可愛がられた
そんなのは全部ウソだ。
今いきなり自立しようとしてもかなわない
わたしはただの女でいたかったけど許されない
生きる資格がない、何もない
言われる通りだ
わたしはダメな人間だ
だからゆっくり死んでいく
もしできなかったらジュートに頼もう

まるで遺書のような手紙

愛珠が行方不明だとわかったのは、3か月前──
主治医から連絡があったからだった。
自宅を訪れると持病の薬も飲んでいなかったようだ。

あの女王様が自殺!?
いや実際には煙草森に殺された。
やっぱりあのバスに乗ったのには意味がある。
なぜなのかを知りたい。
必ずジュートを捜し出す。
 
すべて終わった──そう思ったのは大きな間違いだった。
このハガキをきっかけにガロは重大な事実を知ることになる。

その頃、整は大阪で開催される「印象派展」のチケットを買っていた。→「11話」

そして、彼と再び会うことになる。
でもそれは、彼の長い長いおしゃべりの後。
ガロが整と再び出会うのはまだ先の話──