ミステリと言う勿れ




爆弾魔が爆弾と予告文の暗号を準備している。
──三好達治の詩を呟きながら。

久能整(菅田将暉)がコロッケカレーを食べようとしていると、風呂光聖子(伊藤沙莉)から着信。イヤな予感を否めない整に風呂光は爆弾事件の暗号解明を助けてと言ってきた。

闇サイトにアップされた爆破予告にはアルファベットの暗号文が付記されていた。最初は32階建てと場所が早々に絞られたため事なきを得たが、次の場所はわからない。池本優人(尾上松也)が整に協力を求めようと風呂光を向かわせる。

整はまたしてもカレーを食べ損なって大隣署の取調室へ。民間人への捜査協力は青砥成昭(筒井道隆)ら管理職には内緒だが、整は昨日の暗号文の謎をあっさりと解いてみせる。暗号は推理小説のタイトルで、その作者の名前がついた場所に爆弾が仕掛けられていた。

KUROTOKAGE(黒蜥蜴/江戸川乱歩)
Y NO HIGEKI(エラリー・クイーン)

それを池本に告げる前に2つ目の爆弾が発見され事なきを得たが、整は何かが引っかかる。闇サイトへの投稿アドレスから容疑者が割り出されるが被疑者は犯行を否定する。
 
青砥(筒井道隆)の予想通り、3度目の予告がアップされる。風呂光は整に頼らず暗号を解けと命じられる。
墨田区の3階建の建物を
12月19日午後3時30分に爆破する
J I E I U S J B C S K NA T A N
人生最悪の思い出の場所

その頃、ある親子を見ていた爆弾魔は、車にはねられてしまう。

雨を見て「雨は蕭々と降っている」と口ずさんだ整は、ポテトサラダを食べに出かける。「ポテポテしちゃうぞ〜♫」とポテトサラダへの思いを歌いながら歩いていると、ずぶ濡れで路上に佇む男(柄本佑)が「山賊の歌」を歌っている。
思わず「懐かしい」と言った整に話しかける男。それは「山賊の歌」だったが、「海賊の歌」と勘違いしていた。「雨は蕭々(しょうしょう)と降っている」の話をすると、男も三好達治が大好きだと言う。しかし男は大好きというわりに、詩の中に出てくる馬を牛と勘違いしていた。

その頃、暗号を解読していた風呂光は、「ABC殺人事件」というキーワードにたどり着く。この作品の作者はアガサ・クリスティ。池本らとともに「クリスティ」という喫茶店を調べるが、爆弾はない。今回は違う法則なのか…!?
 
整は男と東屋に移動して話すと、男が記憶喪失であることがわかる。男は救急車も警察もやめてくれと言う。雨はますますひどくなり、一向に止む気配がない。整はドラマ『カルテット』の天気の話を出す。どうして曇ってると天気が悪いと言うのか。男は天気の話には反応せず、「音楽はワルツが好きだ」と言う。

整が「雨は新しい水が降ってくると思ってたら、蒸発した水が循環しているだけ」と話せば、「水素と酸素で水を作ればそれは新しい水になる、でも水素を取り出すには化石燃料と水蒸気が、水素と酸素で水を作るには火が必要でうっかりすると大爆発」と言う。
急に時計を見る男。スマホはなくしたようだ。携帯の話からなぜか「リチウム電池は粗悪品だと発火する、原爆にリチウムがからむと水素爆弾ができる」と言う話に発展する。

どこかに時限爆弾を仕掛けた──ような気がする
いきなりとんでもないことを言い出す男に驚いた整は、風呂光に「爆弾犯と一緒にいる」と電話する。自分たちが行くまで繋いでおけ、と池本。
 
整は男と話をしながら、爆破場所のヒントを探る。

悪い記憶は脳に負担もかけるが、逆に脳を活性化させることもある。だから敢えて聞きにくいこと「母親がいなくなった理由」を聞く整。

母親は父親と別れて出て行った。男は母に捨てられたのだ。部屋は荒れ放題。最悪だった、全部あの女のせいだ。一番最悪なのは男が小学校6年生のとき、母親が死んだこと。知らないうちに、知らないところで…。
男は指輪を見て何か思い出す

・電車に乗ってどこかに行こうとしていた。
・小学校4年生のときの担任の先生が
 世話を焼いてくれた。
・時計を30分進めているのは遅刻ばかりの男に
 先生がそうしなさいと言ったから。
・先生とは三社祭に行った。
・先生は東京タワーに連れていってくれた。
・ひいきが問題になり、先生は飛ばされた。
・母が出て行ってから、いじめられていた。
 
なぜ爆弾を仕掛けたのか? 整の問いに男はこう答える。
「生まれたときからの使命だから」
「報いを受けるべきだから」
「オレは特別だから」
「そうしたかったから」
なぜそうしたかったのかと聞く整に、どうでもいいだろ、と。全部思い出したんですね、という整の言葉にしらばっくれる。別に大勢死んでも君のせいじゃない…。

しかし整は、男との会話から爆破場所を解読していた。
それは母校の小学校。

銀座線は→東京の地下鉄の3号線
山賊雨は→三束雨が由来
カルテットには興味がなく→ワルツが好き
水素2つと酸素1つで→水ができる
リチウム→原子記号は3
時計を→30分進めている
ゴジラは全長→300メートル
東京タワーの高さは→333メートル
ほかにも、三好達治、三社祭の話をしていた

浅草には「行った」と言い、東京タワーには「連れていってもらった」。
浅草は近いけど、東京タワーは遠い。浅草の川向こうの向島には、雨乞いで有名な三国神社があり、そこには三角石鳥居があり、三井家の守護神の三越のライオンの像がある。
その近くにある牛嶋神社には狛犬ではなく牛の像がある。その近くに母校の小学校があるはず。

風呂光と池本は、花輪小学校にたどり着いたが、学校のどこに爆弾が仕掛けられているかがわからない。整は3つ目の暗号を送ってもらうと、爆弾は音楽室だと言い切った。

暗号解読のヒントは男が指で描いていた三角形。3つの暗号を並べて三角柱にすると、迷路ができる、その迷路をたどって出た答えは「ONGAKU」。

爆弾は音楽室にある!
爆弾を見つけた風呂光たち。まだ30分あると、処理班が解除を始める。整は「やるじゃん」と不敵な笑みを浮かべる爆弾魔の様子にあることに気づく。

男はいつも30分時計を進めていた。つまり爆発は3時! 爆弾魔は、「2度目までは予告通りの時間、3度目の正直だ」と言う。風呂光から犠牲者はいないと報告があり、ほっとする整。

そこに警官(村松利史)が来る。車で人を引いたような気がするけど、逃げたという人が自首してきた。事故はなかったかと尋ねる。川向こうでは、駆けつけた警察官が「もじゃもじゃじゃないほうを捕まえろ」と叫んでいる。
 
整に名前を聞く爆弾魔。
名前は三船三千夫(みふね・みちお)。
3は最も神聖な数字と先生が教えてくれた。

その先生にまた会ってみたらどうかと言う整に男の答えは「死んだ」。大好きだった小学校の先生は実の母親だった。後になって聞かされた。

三船が小学校を爆破しようとした理由は、「最悪の思い出がある場所を消し去りたかった」。そして「爆破したい」と同時に「爆破したくなかった」。母との辛い思い出がある場所を壊してしまいたいと思うと同時にずっと大切に守ってたい。

本当はお母さんが大好きなんだと僕は思います。
三船は「三好達治の乳母車のラストがいい」と言って連行されていく。
──母よ、私は知っている。この道は遠く遠く、果てしない道。
整は三船ともっと話したかったと思っていた。

そして幼い頃の母との記憶がよみがえる。
「ごめんね、ごめんね。お母さん、もう何も感じないの。あなたをかわいがってあげたいけど、ごめんね…」
背を向けた母が何度も謝っている。
 
土手のほうから携帯電話のアラームが鳴り、三船のモノか?と取ろうとする整は、駆けつけてきた風呂光の声に気を取られて、土手を勢いよく転がり落ちてしまう。