ミステリと言う勿れ




爆弾魔事件で土手を転げ落ち、頭を打った久能整(菅田将暉)は、念のため大隣総合病院で検査入院をすることに。整の入院は警察に協力したためなので入院費ぐらい警察でもってもいいのでは?という池本優人(尾上松也)の提案を青砥成昭(筒井道隆)は許可。風呂光聖子(伊藤沙莉)が手続のため病院に向かう。

そのころ整は、犬堂我路(永山瑛太)から届いた見舞い品を開けていた。中身は射手座のマークが入った指輪。しかし整もガロくんも射手座ではない。転げ落ちた指輪の行方を見届けようとベッドの下を覗き込んでいたところに風呂光がやってくる。ガロくんの手紙の「会いたいな」の文字を見て邪推する風呂光は書類に署名をもらうとそそくさと帰っていく。
 
その夜、整が眠ろうとすると、誰もいないはずの隣りのベッドに人がいた。男(小日向文世)は牛田悟郎と名乗る。マルクス・アウレリウスの『自省録』を読んでいた。その本は入院している女の子からもらったという。整もその本は熟読していた。死についてよく書かれているのが面白い、と牛田。

牛田は元刑事。昔あった面白い事件について話す。「結構です」と断る整だが牛田はお構いなし。

ある春――3人が連続して殺される事件があった。場所も手口もバラバラ、目撃者も物証もなく別々の事件だと思われていた。しかし4番目の事件があったとき、犯人の頭髪という物証が出てきた。前科のある男Aは3人と接点もあり、本ボシだと思われたが容疑者は否定。

しかし牛田の後輩刑事・霜鳥(相島一之)だけが首をひねる。4人目とだけ接点がない。

整は、最初の3人は本ボシAが犯人。最後の1人は別の人物Bが犯人と推察。

実はその通りで、4つめの事件の本ボシBはAが通う店の美容師。偽装に使えそうな髪の毛を集めていた。

 
―22年前の未解決事件の真相―
風呂光は署で仕事をしながら、整のことを考えていた。見舞いに花でも持っていけという池本に、整には花と指輪を贈る彼女がいると言うと、池本は「ないないないないない」と否定する。

路上で女が刺され、その女の血を踏んだ靴跡があった。凶器をはじめ、物証が出ない。そのころ近くで何件か空き巣があったが、わずかな金を盗まれただけだった。

整は常々考えているのはそれだと言う。犯人は凶器などの物証の処分のために、知らない人の家にこっそり侵入して隠せばいい。空き巣はそのために行われた。

真相は、その通り。ゴミ屋敷に住んでいたり、自分の持ち物を把握していない人もいる。だが、たまたま引越しする人がいて証拠が発見された。

平成の切り裂きジャックと呼ばれた羽喰玄斗(はぐいげんと)というシリアルキラーがいた。証拠を残しまくる。目撃者がいても気にしない。それなのになかなか捕らえられなかった。

ある日、羽喰に狙われているという売春婦から保護依頼があり、現場に向かった。牛田は10分遅れた。悲鳴を聞いて外に出ると、女はすでに死んでいて霜鳥刑事は刺されて重症だった。翌日現場近くで羽喰の車が発見されたが、羽喰は姿を消した。

霜鳥刑事は左腕が動かなくなり、刑事を辞めた。妻の実家の警備会社で働くことになった。

牛田が遅れたのは霜鳥に「臭い」と言われて着替えに戻ったからだった。帰宅するといえが空き巣に入られていた。

整は、考えられる1つのケースがあるが検証したのかと尋ねる。
それは霜鳥が犯人だった場合だ。

1つ目は、他人に罪をなすりつける話。
2つ目は、空き巣を犯罪に利用する話


牛田が話した最初の2つは3つ目のヒントだった。
羽喰の車を最初に発見したのは牛田で、霜鳥のボールペンを見つけ、霜鳥を疑っていた。実際、霜鳥と最後の被害者には関係があった。霜鳥の実家の警備会社は警察官の天下り先。絶対に奥さんにバレてはいけない。霜鳥はどうやったか羽喰を探して殺し、命を懸けて大博打を打ったのだろう。

牛田はもうすぐ死ぬ。
誰にも言わずにこのまま逝っていいのか。

怖いのは、相棒の罪が暴かれることなのか、
霜鳥をかばった自分の罪がバレることなのかと整。

結局、自分を守ってるだけ。弱い自分が情けない。
刑事として負け、病気にも負ける――。

整は、「闘病」について持論を語る。「病には勝てず」「病気に負けて」など、どうして死んだ人を鞭打つような言葉を使うのか。「闘う」という言葉を使うから勝ち負けがつく。負けるとしたら患者じゃない、医療だ。闘いじゃない、治療なんだから。

まだ若い整にはわからないかもしれないが、病と闘うという気持ちが必要なときがあると牛田。

それでも人は病に負けるんじゃない。僕はそう思うと整。


―牛田悟郎の決断―

牛田は、実は証拠をどうするかを決めていた。
ところがある日霜鳥が見舞いに来た。
霜鳥は治療費を肩代わりさせてくれと申し出る。

「情けはいらねえよ。余計な心配はすんな」と笑った牛田。

「昔と変わらず優しいやつなんだ。」
それで気が変わったんだと整に打ち明ける。

「どう決めてて、どう変わったんですか?」
整の問いには答えず、牛田は『自省録』の本を渡す。
「版が違うと使えないかもしれないからな」と謎の言葉を残して――。

翌朝、看護師が来て、牛田は昨日の朝に亡くなったという。驚く整。霜鳥がやってくる。牛田の寝ていたベッドを見つめる霜鳥に声をかける整。
「牛田さんが亡くなって悲しいですか? それともほっとしましたか?」
整がそう問いかけたとき、刑事がやってくる。
22年前の事件の件で霜鳥を逮捕しに来たのだった。
牛田は死ぬ前に捜査メモとボールペンを警察に送っていた。警察は羽喰の遺体をすでに確認していた。→「12話」

今まで黙っていてくれたのにどうして――。」
嘆く霜鳥に整は言う。あなたが見舞いに来る前までは黙っているつもりだったはず。「面倒を見る」とか言った自分がプライドを傷つけたのか…。整は、それは違うと否定。牛田がそういうことが嫌いな人間だということを霜鳥が知らないか忘れていたことが悲しかったんだろうと。

牛田がくれた『自省録』には次のページに栞が挟まれていた。
「正気に返って自己を取り戻せ!君を悩ましていたのは夢であったことに気づき、まるで夢の中のものを見ていたかのように、今こそ現実のものを見よ!」

マルクス・アウレリウス『自省録』より
整は、牛田が最期に「自分を取り戻した」のだと思った。
 
整が病棟を歩いていると、掲示板に誤字がある貼り紙を見つける。

手続きに来た風呂光と遭遇。風呂光は「クリスマスは誰と過ごすのか」と尋ねる。花を贈ってきた人について尋ねられると「知らない人」「いたずらだ」とごまかす。

貼り紙の誤字を並べると「温室三時招待」になる。誰かのメッセージと言われ、ガロくんを思い浮かべる整。とりあえず温室に行こうと風呂光。温室に行くと誰もいなかったが、床に数字が書かれている。写真を撮り、暗号を解読しようと試みる整に風呂光は、整に片思いしてる人からのいたずらでは?と言う。それはないと整。

『自省録』を開き、暗号に気づく整。数字は本のページとその行と何番目の文字かでできているらしい。
」「三時」「もどって」「」「るがよいと解読された。「行かない」と風呂光に言う整だが、迷っていた。風呂光も気になって眠れない。

結局、整は温室へ。風呂光も駆けつける。温室で物音を聞いた整はガロくんかと思ったが、そこには知らない女性がいた。女性はまた数字の暗号を言う。「君はその目的を達した」となった。

牛田の言っていた女性なのかと言う整の問いに答えず、女性はライカと名乗り、また暗号を発する。

「明日」「」「三時」「この」「場所」「で」。