ミステリと言う勿れ




大隣署では、捜査会議で青砥(筒井道隆)が、天使の正体は井原香音人かねと(早乙女太一)だと考えて捜査する方針を立てていたが、香音人の居場所はなかなかわからない。

風呂光(伊藤沙莉)は、仕事帰りに整へのクリスマスプレゼントを買う。整の頭のようにもじゃもじゃなスヌードだ。

「炎の天使」のサイト管理人が高校生の鷲見(今井悠貴)と判明。鷲見もまたかつて火事で生き残った子供の1人だった。池本たちは鷲見のところに向かう。

倉庫で下戸陸太おりとろくた(岡山天音)に襲われた久能整(菅田将暉)は、拘束されている虐待夫婦の姿を見る。ここで一緒に燃えてくれよなと陸太。しかし陸太は、ライカが整にプレゼントした赤いオーナメントを見て苦しみだす。

その頃、風呂光は車に忘れていた携帯に整から着信があったことを知る。

整は、シャチの話と放火犯のヤギの拷問の話の反応が同じように自分のことを言われたようなものだったことから、陸太が天使なのかと追及する。陸太は、俺が天使のわけがない。天使はものすごくキレイなんだと答える。整は、倉庫にあったトマト缶で陸太を脅し、天使のもとに案内させる。途中、風呂光からの着信に気づいた整は電話を繋げたままにする。
 
香音人(早乙女太一)の部屋に行くと、香音人が自分の過去を話しだす。香音人という名前はお香が趣味だった母がつけた。しかしその母は離婚してから尋常じゃなく香音人を溺愛すると同時に、お香の炭を体に押し付けるなど酷い虐待を続けた。

しかしある日、倒れた香炉の炭の火が畳に燃え移り、火事で母は死んだ。父に引き取られたが、そこには別の家庭があり、あてがわれたマンションを引き払って陸太名義で現在の場所を買った。それから自分のような子供たちを助けてあげることにした。

陸太もまた母親に虐待されていた。かわいくてできのいい兄を溺愛していた母は、その兄が風邪であっけなく死ぬと、「お前が死ねばよかった」と陸太を虐待した。そんなとき、香音人が声をかけてきた。香音人には感謝している。

でも、赤いものが見られないのもしんどそう。親殺しを決断した罪をずっと抱えていくのか、子供たちにもそうさせるのか。それもまた虐待です。

半年前、出所した香音人は助けた子供の1人に会いに行っていた。その鷲見(今井悠貴)のアパートには青砥たちが事情聴取に行っている。整の電話に気づく風呂光。

整を待っていたライカは、帰り道、倉庫の前で整が落としたオーナメントを拾う。倉庫には虐待夫婦が拘束されていた。ライカは整の居場所を聞くと助けもせずに去っていく。

鷲見はコインランドリーで洗濯しながら青砥たちに天使のことを話し出す。しかし香音人の写真を見せても「そんなに恥知らずじゃない」と肯定しない。半年前、カエルみたいな男=陸太と香音人に会った鷲見は、その後の不幸を語る。親がいないというのは大きなハンデで、いろいろ苦しんできた。ほかの子供たちの中には自殺した人もいる。でも今のほうがマシだと思うしかない。だって自分が決めたんだから。

虐待家庭に育ったから気持ちはわかるという香音人に鷲見は、香音人の親は火事で亡くなった。香音人が許可したわけじゃない。だから同じじゃない。2度と来るなと追い返す。それを聞いてから、香音人は「もうこれ以上できない」「天使をやめる」と言い出した。

聴取を終えた青砥と池本は、風呂光が聞いている整の電話が何かおかしいと伝える。
 
香音人が「天使をやめる」と言ったから香音人を殺したんですか? 整は陸太に問う。

今まで一度も香音人さんを見ていない。火事現場でも陸太が1人で話していた。陸太にはきれいに見えていた部屋もゴミ屋敷と化していた。床には血痕もそのままになっていた。

しかし陸太が香音人を殺したのは、天使をやめることが理由じゃなかった。ある日、陸太が帰ると香音人がアップルパイを作っていた。決して赤いものを持ち込まなかった香音人が真っ赤なリンゴを剥いていたことから、「役に立たないから捨てられる」と激した陸太は、香音人を思わず刺してしまう。

香音人はおいしいアップルパイのレシピを見つけたから作って食べさせてあげたいと思っていた。たまたま陸太が予定より早く帰ってしまったのだ。香音人は陸太を救えなかったことを詫びながら死んでいった。

陸太は、香音人の遺体が凍る冷凍庫をカリカリするシシに「やめろ」と叫ぶ。

陸さん、猫もいません…。

世話ができなくてかわいそうだから、と陸太はシシも香音人と一緒に眠らせていたのだった。

猫が見えていたとしたら、それは遺体を見つけて欲しかったから…というと整は電話を切り、刑事と繋がっていたと告白する。

陸太の告白
何者だ?と問う陸太に、小学校の教師になりたいと思っている大学生だと整。

同級生のいじめに加担した当時の担任教師を思い出して、あざ笑う陸太。母に石段から突き落とされて両足を骨折したとき、同級生たちが何度も滑り台に持ち上げては滑り落とした。それを見ていた担任教師は笑顔で手を振り、翌日には「カエルくんと遊んであげた」と拍手した。

教師なんてそんなもんだ。同級生より教師への憎しみが強く残っている。

整は、その先生は陸太を「カエル」と呼んだ時点でダメだと一蹴。僕のクラスに陸太がいたら、家で何かが起きていること、香音人がいたら異変に気づく。いつも気づきたいと思っていると話す。

死刑になるのかな、それまで何をすればいいんだろう、ひとりで…。

整は家に帰りたくなくてひとりでいたところ、声をかけてくれた喜和(水川あさみ)が、いろんなことを考えて誰かに話すことの大切さを教えてくれたと打ち明ける。だから陸太も、考えて考えて誰から話すといい、と。

ライカが突然入ってくる。赤いオーナメントをあげたのは、陸太の弱点を知っていたからだった。ライカは香音人の遺体に手を合わせる。最近の仕事が雑だったから、こんなことだろうと思っていたと言い、暗号で何かを唱える。

青砥たちがやってくる。ライカの姿はいつの間にか消えていた。整が持っていたオーナメントはライカがあげたものだと気づく風呂光。陸太は連行される。

警察で。親を殺された子供は、お母さんに会いたいと言っていると風呂光。子供はみんな親が好きだろ、という池本に、それはいい話じゃないと否定する整。親は子供のそんな気持ちにつけこむし、母親もまた追い詰められている…。

署を出て、整を見送る風呂光は「メリー・クリスマス」と声をかける。整も驚きながら「メリー・クリスマス」と返す。風呂光は渡せなかったプレゼントのスヌードを自分にかける。

整は桜の木の下でライカと再会。ライカが遺体の前で唱えていた暗号を解読し、ライカもまた天使に助けられた子供だと知った。ライカは「千夜子は知らない、私の一存だ」と言い、また『自省録』の一節が自分の背中を押したことを語る。香音人にはもう一度会いたかった。会わせてくれた整に礼を言う。

ありがとう、整くん。