-上弦の弐・童磨-

***ネタバレ知りたくない方はご注意ください*** 



童磨(どうま)は鬼舞辻無惨配下の精鋭十二鬼月の中でも最強の上弦の鬼に属する一人であり、比較的新参ながらも最古参の黒死牟(上弦の壱)に次ぐ“上弦の弐”の座に君臨する鬼。

その席位に従い、左目に「上弦」、右目に「弐」の文字が刻まれているが、かつて妓夫太郎・堕姫(梅)兄妹と出会って鬼にした頃(少なくとも113年以上前)は"上弦の陸"に位列されていたので、当時右目に刻まれていたのは「陸」であった。
 初登場は妓夫太郎の走馬燈の中――
まだ人間だった妓夫太郎と堕姫(梅)兄妹の前に現れ、瀕死の彼らを鬼へと変えている。この時は、遊郭街にふさわしく遊び人のような風体で、人懐っこい笑みを浮かべていた。
しかし上述の台詞を口にして微笑む彼は、肩に担いだ女の死体の脚を齧り、生首を小脇に抱えながら堂々と往来を闊歩するという猟奇的な姿。その狂気のアンバランスさによって、異常で危険な人物であると強烈に印象付けた。

そして兄妹の敗死を受けて、無惨が残る上弦達を拠点の無限城へ召喚した事で再登場――
召集の遠因となったという経緯もあり、無惨へのお詫びとして自分の目玉をほじくり出して差し出す事を提言したり、玉壺から貰った壺に女の生首を生けてあると嬉々として語るなど、ここでも猟奇的な言動を見せつけた。



-無 限 城 編-

【原作】16巻第140話「決戦の火蓋を切る」~141話「仇」
信者と思われる人間達を喰らっている最中、無限城に乗り込んできた鬼殺隊のうち、蟲柱・胡蝶しのぶと対峙する。

彼がかつて彼女の最愛の姉の命を奪った仇である事が明らかになり、激しい憎悪を向ける。童磨はそんな復讐にも意に介さず血鬼術でダメージを加えていく。体格に恵まれないしのぶでは童磨の頸を落とす事は叶わず、藤の毒を急所の頚に撃ち込まれても上弦の再生能力で分解してみせた。

姉の仇を討とうと努力しながらも力及ばなかったしのぶを、「俺は感動したよ、こんなか弱い女の子がここまでやれるなんて」「姉さんより才も無いのによく鬼狩りをやってこれたよ」「今まで死ななかったことが奇跡だ」「無駄だというのにやり抜く愚かさ これが人間の素晴らしさ」と、次々に賛辞の皮を被った侮辱で泣きながら徹底的に愚弄し、その場に駆け付けた栗花落カナヲの目の前で両腕で止めとばかりに抱きしめて全身の骨を折り砕き殺害した。

【原作】16巻第141話「仇」~17巻413話「怒り」
しのぶの死に衝撃を受けるカナヲを、童磨はしのぶの遺体を自身の体に吸収する様を見せ付けて挑発する。これを目の当たりにしたカナヲはかつて無い程に激昂し、凄まじい怒りと憎悪を胸に、自分を拾い育ててくれた姉同然である胡蝶姉妹の仇を討つべく童磨と対峙する。

途中、竈門炭治郎と冨岡義勇の2人に猗窩座が敗れた事を感知した童磨はわざとらしく涙し悲しんで見せるが、すかさずカナヲに
「貴方何も感じないんでしょ?」

「貴方 何のために生まれてきたの?」
と、自身と同じく感情を失っていた彼女に自分自身の隠された本心を見抜かれることになった。カナヲのこの容赦の無い指摘には流石の童磨もいつもの軽薄な笑みが消え失せ氷のように凍てついた表情となり、虚無的で無機質な本性を露わにする。

【原作】17巻413話「怒り」
18巻157「舞い戻る魂」~159話「顔」

しのぶは死に際に指文字で「息を吸うな」という意味のサインを出しており、カナヲもそれを正確に読み解いた事で「粉凍り」による初見殺しを回避。

さらに鍛え上げた剣術で善戦するも、やはり上弦相手に1対1では分が悪い。その強みが「視力」である事を見切られて、目潰しや「凍て曇」などの血鬼術を矢継ぎ早に繰り出される。それらを何とか凌ぐカナヲだが、童磨は異常な速度で彼女の手にしていた日輪刀をかすめ取った。

無手となったカナヲを童磨は回避困難な血鬼術「散り蓮華」で弄り殺しにしようとしたが、寸前で嘴平伊之助が天井をぶち破って乱入し彼女を救う。

伊之助の奇襲によりカナヲの刀は取り返されてしまうが、上半身裸で獣の被り物という今までに出会ったことのないタイプの剣士である伊之助に興味を抱いた童磨はカナヲの刀と同様に伊之助の被り物を奪う。そして、露になった彼の素顔に見覚えがあると言って語りはじめた。

【原作】18巻160話「重なる面影・蘇る記憶」~19巻159話「顔」
童磨曰く、伊之助の母・琴葉は頭が残念な女で、夫や姑による家庭内暴力に晒され続けた末に、救いを求めて息子を連れて万世極楽教の門を叩いたのだという。

童磨自身は寿命が尽きるまで手元に置くだけで母子を殺すつもりはなかったのだが、琴葉に人喰いの現場を見られた事で不本意ながら始末せざるを得なくなり、崖際に追い詰められた琴葉は最後の希望を託して伊之助を崖下に投げ落とした後に、童磨に殺害されたのだった。

実母と母の温もりを思い出させてくれたしのぶの仇として怒りを燃やす伊之助だが、童磨は時間が無くなってきたとして「結晶ノ御子」に2人の相手を任せ、その場を去ろうとする。

【原作】19巻161話「蝶の羽ばたき」~162話「三人の白星」
しかしその場を後にしようと扉に手をかけた瞬間、片目が落ちて視界が割れ、童磨の体が突如崩れ始めた。
実は、童磨に取り込まれることこそがしのぶの真の狙いであった。

元より勝てる相手ではないと踏んでいたしのぶは、1年かけて藤の花の毒を服用し続ける事で自らの体を毒の塊となり、自ら身を捧げる事で大量の毒を盛る壮絶な罠を張っていたのだ。その毒の量はしのぶの全体重分、致死量の実に700倍。

彼女は最初から童磨に喰い殺されるつもりでこの戦いに臨んでいたのである。無論、カナヲもその作戦を予め知らされており、彼女が1対1は勝ち目が無いような相手とまともにぶつかったり、あえて挑発するような言動で気を引くなどしていたのは、毒が効くまでの時間稼ぎの為であった。

【原作】19巻163話「心あふれる」
童磨は毒により体が溶けたことに驚くが、それでも冷静に解毒の時間を稼ぐ為の大技「霧氷・睡蓮菩薩」を放つ。しかし、毒のせいで技の精度が落ちており、カナヲの奥の手、極限の動体視力を獲得する花の呼吸・終ノ型「彼岸朱眼」により彼女の接近を許してしまった。溶けた頚に刀を食い込ませられる童磨。

睡蓮菩薩により体が凍りついたカナヲはそこまで動けなくなってしまうが、機転を利かせた伊之助が自身の刀を投げつける事でカナヲの刃を無理矢理押し込み、ついに童磨の頚を落とした。

頚を斬られた直後は自身より弱いはずの伊之助やカナヲやしのぶに敗れた事が信じられず、「こんな雑魚に負けるなんて俺が可哀想すぎる」と嘆き頚の切断を克服しようと試みるが肉体の崩壊は止まらない。

死の間際、意識の中に現れたのは、自身が殺したはずのしのぶでした。