-恋柱・甘露寺蜜璃-

***ネタバレ知りたくない方はご注意ください*** 


甘露寺蜜璃(かんろじみつり)は鬼殺隊の頂点に立つ剣士“柱”の一人である「恋柱」。那田蜘蛛山の戦いの後に竈門炭治郎が運び込まれた産屋敷邸庭先での柱合裁判の場において初登場する。

鬼である竈門禰豆子及び彼女を連れていた兄の炭治郎の処遇について、他の柱の多くが即殺処分を訴える中で、当主・産屋敷耀哉が二人の事を把握していない筈はないと結論を急がないよう諭す。

産屋敷が二人を鬼殺隊の下に置く事を柱達に説いた際も彼の判断ならと進んで同意するなど、当初から他の柱達とは違って穏和で思慮深い姿勢を見せていた。



―鬼・憎珀天を一人で抑える―
~刀鍛冶の里編~

【原作】12巻101話「内緒話」
炭治郎が刀鍛冶の里へ行った時、ちょうど里に滞在していた。炭治郎の姿を見つけるなり「聞いてよ聞いてよ〜!私今そこで無視されたの〜!挨拶したのに無視されたの〜!」と泣きついた。そこから炭治郎と行動を共にし、交流を深めた。その時、禰豆子と楽しそうに遊んでおり、禰豆子も甘露寺に懐いている。そして先に里を離れることになり、「甘露寺蜜璃は竈門兄妹を応援してるよ〜」と二人を励ました。 

【原作】14巻122話「それは一時的な興奮状態」
~123話「甘露寺蜜璃の走馬灯」

甘露寺が刀鍛冶の里を離れた後、上弦の肆・半天狗と、上弦の伍・玉壺が里を急襲する。甘露寺は急遽、里へ呼び戻される。
里へ戻った甘露寺は、玉壺が放った化物が刀鍛冶を殺害して回っているところに現れ、化物を倒して回る。そして半天狗と戦っていた炭治郎の窮地を救う。甘露寺は半天狗が生み出した鬼・憎珀天と戦うことになる。
【原作】12巻106話「敵襲」
憎珀天は半天狗が生み出した分身体であり、頸を斬られても死ぬことはなく、さらに雷や怪音波、木の龍を操る血鬼術を使用する強力な鬼だった。息をつく間もないほどの攻撃を仕掛けてくる憎珀天に炭治郎たちでは太刀打ちできなかった。

しかし、甘露寺は雷や怪音波などの攻撃自体を斬り裂き、憎珀天と対等に戦う。そして攻撃を掻い潜って憎珀天の頸に迫るが、憎珀天が分身体で頸を落としても意味がないことを知らされ、動揺した隙に怪音波をモロに喰らってしまう。普通の人間ならば、肉体がバラバラになってもおかしくない攻撃だったが、常人の8倍の筋肉密度を持つ甘露寺の肉体は原型をとどめていた。

それに驚愕する憎珀天だったが、甘露寺は意識が飛んでおり、絶対的な危機には変わりなかった。甘露寺の危機に際し、炭治郎・禰豆子・玄弥は体を張って甘露寺を守る。意識を取り戻した甘露寺は「甘露寺さんを守るんだ!一番可能性のあるこの人が希望の光だ!」という炭治郎の声を聞く。

甘露寺は「仲間は絶対死なせないから!鬼殺隊は私の大切な居場所なんだから!上弦だろうがなんだろうが関係ないわよ!私、悪い奴には絶対負けない!覚悟しなさいよ!本気出すから!」と言って泣いた。

【原作】14巻123話「甘露寺蜜璃の走馬灯」
~15巻127話「勝利の鳴動」

甘露寺はその得意な髪や体質から、お見合いが破断した過去を持つ。それ以降、甘露寺は自分を偽るようになっており、鬼殺隊に入ってからも「人間じゃない」と思われるのが嫌で力を抑えていた。しかし、炭治郎の言葉を受けた甘露寺は、その思いを振り切り本気を出す。その時、甘露寺に痣が発現した。

さらに速く強力な技を繰り出す甘露寺は、憎珀天を一人で抑え、炭治郎たちを本体の半天狗の元へ向かわせる。
そこから夜が明け、炭治郎が本体の頸を斬るまでの間、憎珀天を一人で抑え続けた。



―無限城にて上弦の肆・鳴女と遭遇―
~ 無 限 城 編 ~

【原作】16巻137話「不滅」~139話「落ちる」
鬼殺隊の長である産屋敷耀哉の元へ、悪の元凶である鬼舞辻無惨が現れる。耀哉は無惨の到来を予期しており、自爆をする事で無惨に大きなダメージを与えた。

無惨と敵対する鬼、珠世と愈史郎は耀哉に協力を持ちかけられており、鬼殺隊の本部へと来ていた。珠世は負傷した無惨に『鬼を人間に戻す薬』を投与する。

そして無惨を倒すべく柱や炭治郎が集結するが、無惨は異空間・無限城を呼び出し、一同は無限城へと落とされてしまう。

【原作】19巻164話「ちょっと力み過ぎただけ」
21巻181話「大災」~184話「鬩ぎ合い」

蛇柱である伊黒小芭内と共に行動していた甘露寺は、半天狗の代わりに上弦の肆となった鳴女と遭遇する。無限城内部では、上弦の鬼を倒した者もいれば、死んでしまった柱もいた。それに感化された甘露寺は、敵の能力も把握しないまま特攻を仕掛ける。

鳴女は無限城を自在に操ることができ、甘露寺の攻撃はあっけなく躱されてしまう。伊黒は感情的に動く甘露寺を優しく諭す。思うがままに動いた挙句、あっけなく攻撃を躱された甘露寺は恥ずかしくて伊黒に顔向けできなかった。

その後も甘露寺と伊黒は鳴女に攻撃を加えられずにいた。その時、鬼殺隊に協力する鬼・愈史郎が現れる。愈史郎は「いいか、よく聞け。俺は鬼だが味方だ。馬鹿じゃないなら今すぐ理解して協力しろ。」と話した。

甘露寺は「私、馬鹿じゃないわ。」と確認し、愈史郎の言う通りに囮となって鳴女の気を引いた。その隙に愈史郎は鳴女の頭に指を刺し、鳴女を操った。そして甘露寺と伊黒は無惨の元へと向かった。



―鬼舞辻無惨との戦い―
~ 無 限 城 編 ~

【原作】21巻182話「激怒」~184話「鬩ぎ合い」
無惨は珠世の『鬼を人間に戻す薬』を分解し、炭治郎と義勇と戦いを繰り広げていた。無惨は身体を刃に変え、それを凄まじい速さで振り回して炭治郎と義勇を追い詰めていた。

そこへ甘露寺と伊黒が助けに入った。無惨は甘露寺たちが現れた事で鳴女が愈史郎に操られている事に気付いた。愈史郎は鳴女の身体を操って無限城を操作し、無惨を地上に出そうとしていた。無惨は鳴女の身体を通して愈史郎を侵食して殺そうとするが、義勇たちがそれを妨害し、無惨は地上へと出された。

【原作】21巻184話「戦線離脱」~22巻188話「悲痛な恋情」
その後も甘露寺たちは無惨と戦い続けた。無惨は頸を斬っても死なないため、太陽の下に晒すしか倒す方法がなかった。戦いの最中、突如炭治郎の身体に異常が生じる。炭治郎は無惨の攻撃を受けた時に身体の中に血を入れられていた。その血は人間には猛毒であり、炭治郎は細胞が変化して苦しんでいた。

炭治郎が戦線離脱してからも甘露寺たちは戦いを続けた。そこへ岩柱の悲鳴嶼行冥と風柱の不死川実弥も加わる。しかしそれでも無惨の攻撃は勢いを増した。甘露寺は無惨の攻撃が速すぎて目で捉えられておらず、感覚で攻撃を避けていた。甘露寺はギリギリで攻撃をかわしていたが、なぜか攻撃の方へ吸い寄せられ、重傷を負ってしまう。

伊黒はそんな甘露寺を近くにいた鬼殺隊の隊員へ預けた。甘露寺は「待って。私まだ戦える。今度は足を引っ張らないようにするから。」と食い下がるが、伊黒は「もういい。十分やった。」と言って戦いに戻った。甘露寺は「待って!私も行く!伊黒さん!伊黒さん嫌だ!死なないで!もう誰にも死んでほしくないよォ!」と叫んで涙を流した。

【原作】22巻190話「ぞくぞくと」~199話「千年の夜明け」
その後、善逸、伊之助、カナヲも戦いに加わって死闘が繰り広げられるが、無惨は圧倒的な力で柱や善逸たちを気絶させた。そこへ意識を取り戻した炭治郎が現れる。炭治郎と無惨が戦う中で、伊黒、善逸、伊之助も復活して炭治郎に加勢する。

その時、無惨は珠世の薬によって疲弊していた。珠世が無惨に投与した薬には鬼を人間に戻すだけではなく、『老化』『分裂阻害』『細胞破壊』の効力があり、無惨は体力の限界に達していたのだった。

炭治郎は『日の呼吸 陽華突』を繰り出して無惨を壁に押し当て、一秒でも長くそこに無惨を縫い止めようとした。無惨は炭治郎に攻撃を仕掛けて逃げようとするが、そこに甘露寺が現れる。

露寺は泣きながら「もういい加減にしてよぉ!馬鹿ァ!」と叫びながら無惨の左腕を引きちぎった。しかし、甘露寺は無惨の反撃を受けてしまう。そこに伊黒と実弥も加勢し、無惨の動きを封じる。その時、遂に夜が明けた。

無惨は肉を膨らませて巨大な赤ん坊の姿になって逃亡しようとする。炭治郎はその際に赤ん坊の肉に呑まれてしまった。生き残っていた鬼殺隊の隊員や柱たちは必死に赤ん坊の逃走を食い止めようとして戦うが、赤ん坊はそれでも止められず地中に潜って逃げようとする。その時、赤ん坊に呑まれていた炭治郎が内から攻撃した。赤ん坊は血を流して絶叫し、太陽に灼かれて消滅した。

【原作】23巻200話「勝利の代償」
鬼殺隊の面々は歓喜の声をあげた。そして浮かれる間もなく負傷者の治療が始まった。

甘露寺は伊黒の腕の中に抱かれていた。甘露寺が「体が全然痛くないや…。もうすぐ私死ぬみたい…。」と話すと、伊黒が「俺もすぐ死ぬだろう。君は独りじゃない。」と答えた。

甘露寺が自分の事を役立たずだと恥じていると、伊黒は「そんなことはない。頼むからそんな風に言わないでくれ。」と言って甘露寺と初めて会った時の話をした。

当時、甘露寺は産屋敷の家で迷っていたところを伊黒に助けられていた。「あの日会った君があまりにも普通の女の子だったから俺は救われたんだ。ささいなことではしゃいで、鈴を転がすように笑い、柱になるまで苦しい試練もあっただろうにそれを少しも感じさせない。君と話しているととても楽しい。まるで自分も普通の青年になれたようで幸せだった。他の皆もきっと同じだったよ。底抜けに明るく優しい君はたくさんの人の心をも救済してる。胸を張れ。俺が誰にも文句は言わせない。」と伊黒は言った。

それを聞いた甘露寺は涙を流し「わああん、嬉しいよぉ。わたしっ…私、伊黒さんが好き。伊黒さんと食べるご飯が一番美味しいの。だって伊黒さんすごく優しい目で私のこと見ててくれるんだもん。伊黒さん、伊黒さん、お願い。生まれ変われたら、また人間に生まれ変われたら、私のことお嫁さんにしてくれる?」と聞いた。

伊黒は「勿論だ。君が俺でいいと言ってくれるなら。絶対に君を幸せにする。今度こそ死なせない。必ず守る…。」と言って甘露寺を抱きしめた。そして、2人は共に戦死する。



-甘露寺蜜璃の過去-
 
元々は鬼とは無縁の生活を送っており、17歳でお見合いをする事になる。

しかし、生来の体質故の大食らいや奇抜な髪色のせいで、「君と結婚できるのなんて熊か猪か牛くらいでしょう」「そのおかしな頭の色も 子供に遺伝したらと思うとゾッとします」と、お見合い相手からまるで怪物であるかのように散々に言われて、破談となる。

それ以後、結婚する為に力の弱い振りをしたり、髪の色を染め粉で黒くしたり、意識が朦朧とするほど食事を我慢するなどして、逆に家族から心配されていた。そうして『嘘』を吐くことで結婚を申し込まれたりもしたが、「一生自分を偽ったままでいいのか?」という疑問や、「ありのままの自分ができる、人の役に立つことがしたい」という願いから、鬼殺隊に入隊した経緯を持つ。

鬼殺隊の長である産屋敷耀哉は「素晴らしい。君は神様から特別に愛された人なんだよ蜜璃。自分の強さを誇りなさい。君を悪く言う人は、皆、君の才能を恐れ羨ましがっているだけなんだよ。」と甘露寺に話した。それを聞いた甘露寺は泣いて感謝した。そして鬼殺隊が甘露寺の居場所となった。

入隊後は、様々な背景から実利最優先とする鬼殺隊内において産屋敷や隠の面々などが自身の力を称賛してくれた事や、鬼から助けた人達が涙を流しながら感謝してくれた事も相まって、コンプレックスだった特殊体質についても前向きに捉えられるようになった。

超人であるが故に世俗で生きる場所を見い出せなかった彼女だが、皮肉にも超人であるが故に人間性を犠牲にすることなく、健やかな精神で鬼と戦えるのである。

ただ、年頃の娘として見合い相手の暴言はトラウマとして残り、特に親切に接してくれる伊黒へ想いを告白することが出来ずにいた。



―煉獄杏寿郎外伝―
 
この頃は最終選別を突破したばかりで、師である煉獄にそれを報告している。下弦の弐討伐の任を帯びて帝都へと赴いた煉獄に、他の隊員ともども同行し、サポートに奔走。初の実戦に緊張するあまり力が出せず追い詰められるも、目の前で襲われる親子を守りたい一心で奮起し、見事に敵を退ける。

下弦の弐・佩狼を倒した煉獄が倒れかけた時には咄嗟にこれを支え、早く治療させろと慌てる他の隊員たちを尻目に、満身創痍の彼を力いっぱい抱き締めながら「これで煉獄さんは柱になる」と感極まって号泣した。