-下弦の伍・累-

***ネタバレ知りたくない方はご注意ください*** 



累(るい)
は鬼舞辻無惨配下の十二鬼月の一人で、アニメ版で始めて登場した十二鬼月である。「下弦の伍」の数字を与えられ、席位に従い左目に「下伍」の数字が刻まれている。

手から出す糸は生きているように自在に動き、敵を切り刻む鋭い刃にもなると同時に、鋼鉄並みの硬度を誇る武器となっている。全力を込めていない普通に繰り出している程度の糸であっても、炭治郎の日輪刀を簡単に切断する事ができる程であり、並の鬼殺隊士では到底相手にもならない強敵である。

累の頸は彼が操るどんな糸よりも硬いらしく、彼の糸を斬るだけの力量を持つ者でなければ、まず彼を倒す事はできない。
 また自身の血を分け与えて他の鬼を強化できるだけでなく、能力を一部与える事さえも可能。その際は赤い蜘蛛の形で他の鬼の体に宿す。彼と類似した外見の鬼達は糸や毒液など同じく蜘蛛のような能力を持っていたが、これらは全て累が分け与えたものである。
 
「同族嫌悪」や「共食い」の性質を持つとされる鬼でありながら、わざわざ別の鬼を強化したり自身の能力を分け与えたりするのは、彼が渇望する「家族の絆」への執念でもある。
だがその実態は「恐怖によって縛りつけて従わせ、支配するという」、到底「家族の絆」とは呼べないものであり、それを目の当たりにした炭治郎からは「お前の絆は偽物だ!!」と真っ向から否定された。
**実際に累の“家族”は、家族を演じる事と引き換えに彼に力を分け与えられている。累がそれを果たせていないと見なせば容赦なく折檻・制裁されており、日光であぶられたり知性を奪われたりしている**
 
彼等“家族”の容姿が似ているのも、元の顔を無理矢理引き剝がして、自分をベースとした外見に作り替えている為である。
容姿は油断すると鬼の再生能力で元の外見に戻ってしまうので、彼等は外見が戻らない様に常に気を配らねばならず、気を抜いて外見が戻ってしまうとやはり累に折檻される。

 

-那 谷 蜘 蛛 山 編-

次なる目的地は北北東――。
炭治郎と禰豆子は、善逸や伊之助とともに那田蜘蛛山へ向かう。怯える善逸を残し、山に入った炭治郎と伊之助は、蜘蛛の糸に絡み取られた鬼殺隊員に遭遇する。蜘蛛の糸に囚われた鬼殺隊員と戦う炭治郎と伊之助。糸を斬り、蜘蛛の巣を破り、ふたりは山の奥へと向かう。

ここには鬼舞辻無惨直属の配下・十二鬼月がいる――。」那田蜘蛛山の母鬼を倒した炭治郎は、妹の禰豆子を人間に戻す手掛かりになる鬼が、この森にいることを知る。傷だらけの伊之助とともに、ふたりはさらに森の奥へ。
 
一方、ひとり寂しく森を進む善逸の前に、人面蜘蛛が現れる。
 
那田蜘蛛山の父鬼と対峙する炭治郎と伊之助。応戦する炭治郎だったが、父鬼の怪力に吹き飛ばされてしまう。
川の近くに落下した炭治郎は、姉鬼を痛めつける鬼の少年・累と出会う。恐怖と憎悪で結ばれた関係を「家族の絆」と呼ぶ累に、炭治郎は激怒する。累と炭治郎の戦いが始まる。
 
鬼殺隊最強の剣士である柱が那田蜘蛛山に到着した。父鬼を一太刀で切り伏せる水柱・冨岡義勇。その太刀筋を見た伊之助は己との格の違いに興奮し、戦いを申し込む。
一方、全身に毒が回り、瀕死に陥っていた善逸の前にも、蟲柱・胡蝶しのぶの姿が――。
 
危機に陥った兄を守ろうと身を挺した禰豆子の姿に「本当の絆」と感動を覚え、彼女を妹にしようとする累に炭治郎は激昂。

累より放たれた血鬼術により死を覚悟した炭治郎は、走馬燈の中で亡き父が舞っていた神楽を思い出し、水の呼吸とは異なる新たな技を放つ。『ヒノカミ神楽・円舞』――、
命がけの猛攻撃で累を追い詰め、兄妹の絆が具現化したヒノカミ神楽と禰豆子の血鬼術『爆血』により、累の頚ははねられた。

――ように見えたが、実際は攻撃が届く直前に、累は寸でのところで自分自身の手で先に頚を斬るという荒業でこれを回避していた。そして自分の命を危機にさらした二人に対して激しい憎悪と殺意を向け、『殺目篭(あやめかご)』で二人を始末しようとする。

既に体力の限界を迎えていた二人は当然ながら成す術もなく、最大の危機に陥ってしまう。しかし、間一髪のタイミングで鬼殺隊の水柱・冨岡義勇の『水の呼吸・拾壱ノ型 凪』によって、自身の最硬度の糸の『刻糸輪転(こくしりんてん)』をあっさりと切られた。動揺しつつも次の攻撃を繰り出そうとした瞬間には頸をはねられ絶命した。

 死にゆく中で累は――
思い出した、はっきりと。僕は謝りたかった。ごめんなさい。全部全部僕が悪かったんだ。どうか許して欲しい。でも…山ほど人を殺した僕は…地獄に行くよね…父さんと母さんと…同じところへは…行けないよね…。」とこれまでの行いを悔いた。

その時、「一緒に行くよ。地獄でも。」と誰かが累に声をかけた。それは累の両親だった。「父さんと母さんは累と同じところに行くよ。」と累の父親は言った。累は「全部僕が悪かったよう!ごめんなさい!」と涙を流して詫び、両親に抱かれて消えていった。

 

―綾木累が鬼になるまで―
 
綾木累(あやき るい)は生まれつき身体が弱い子どもだった。それは外を歩くだけでも、数歩進めばその場に倒れてしまうほどの虚弱体質。そのためか同年代の子どもと遊ぶなどの交流は、累本人が望もうとしても出来ず、殆ど寝たきりで家族と暮らす生活だっだ。

父と母の三人家族で不遇な少年時代を過ごす人間の累
彼はどこからか知った『家族の話』が印象深く心へ留まっていた。

――それは川に落ちた我が子を命懸けで助けた親の話。その親は子を助けるために命を落としてしまった。悲しい結末であるが、人間の累は『家族の絆』が強い糸で結ばれたように頑な繋がりがあったから出来た行動に心から感動し強く憧れていた。
親が子を助ける〝役目〟を果たした事。それは親の愛情であり尊い行いで、それはかけがえのない存在(絆)なのだと感じた。『家族の話』を今の自分と重ね、この窮地から救ってくれる相手(家族)を想って考え深くなっていたのかもしれない。
ある夜、鬼の始祖・鬼舞辻無惨と遭遇した人間の累
彼から「鬼」にならないかという提案、それが救いであるという誘惑の言葉を囁かれる。
まだ幼い人間の累は、それでどういう結末になるか考えが及ばなかった。それよりも〝今〟の不遇な身体・生活から救われる願望が強かった。
**人間の累は「鬼」になった**
累本人は、満足に動ける強靭な身体や病に脅かされずにいられる事へ歓喜した。しかし喜んだのは累本人だけで、累の両親は一人息子の変貌を快く思わなかった。
それでも家族として、暫くは人間として暮らす累だった。

**だが「人間」の生活は唐突に終わる**
今の累は人間ではなく「鬼」で、人を食べなければ生きていけない生物。ある日、一人息子が人を喰い殺している現場を目撃してしまった両親。母は泣き崩れ、父は慟哭しながら就寝中の息子を殺そうとし、目覚めた息子(累)は激昂、両親を手にかけたいた――。
そして、もうこの場にはいられないと悟り、『人間だった累』は『鬼の累』として悪鬼羅刹の道を歩む。
それでも〝家族の絆〟に執着していた鬼の累は、鬼の主・鬼舞辻無惨から気に入られていた事や、その潜在能力が高い事もあってか、同族嫌悪や「共食い」の性質を持たされる鬼でありながら、他の鬼と『家族』になる特異な存在へとなっていった。