-水柱・冨岡義勇-

***ネタバレ知りたくない方はご注意ください*** 

那谷蜘蛛山からの柱合会議
錆兎との絆
上弦の参・猗窩座と戦う~無限城編
無惨との死闘~無限城編
 冨岡義勇の過去
半々羽織の理由

鬼滅の刃公式ファンブック-『鬼殺隊見聞録・弍』
 
冨岡義勇(とみおかぎゆう)は鬼殺隊の隊士で“柱”と呼ばれる最上級剣士の一人。「水柱」の称号を持つ。竈門炭治郎が初めて出会った鬼殺隊士でもある。主人公である炭治郎が初めて出会った鬼殺隊士であり、左右で柄が違う羽織を着用している。
炭治郎が鬼舞辻無惨に家族を惨殺され、鬼となった禰󠄀豆子と山を降りようとした時に現れた。鬼となった禰󠄀豆子を問答無用で斬り捨てようとしたが、炭治郎の決死の行動と、鬼になっても自分を律して人を喰べようとしない禰󠄀豆子を見て刀を収める。

義勇はそんな禰豆子が他の鬼とは違うと思い、禰豆子を殺さないことにした。その時、禰豆子は義勇によって口に竹を咥えさせられる。
そして二人を鬼殺隊の隊員を育てる『育手』の鱗滝左近次のもとへ導く。義勇も鱗滝に師事している。鬼に家族を殺され、天涯孤独となっていたところを鱗滝に拾われて鬼殺隊に入った。

炭治郎と同じく鱗滝左近次に師事しており、炭治郎の兄弟弟子である。『水の呼吸』は本来十の型しかないが、義勇は独自に『拾壱ノ型 凪』を編み出している。

『鬼滅の刃』という物語は――彼のこの決断によって始まった。鱗滝の教示を受けていただけあって、咄嗟の状況での判断力に極めて優れている。

表情に起伏がない上に無口。そして単独行動を好む。その協調性の無さから、他の柱に嫌われているらしい。こういった行動は、義勇の過去の経験に原因がある。



―那谷蜘蛛山からの柱合会議―


【原作】5巻37話「折れた刀身」~6巻44話「隊律違反」
 那多蜘蛛山で戦う炭治郎たちの元へ救援として現れる
那多蜘蛛山には十二鬼月の下弦の伍である累がいた。累は『家族』というものに執着しており、那多蜘蛛山で他の鬼と擬似的な家族関係を気づいていた。

炭治郎と同期の鬼殺隊士である嘴平伊之助は累の『父』と戦う。巨大な体から凄まじい力の攻撃を繰り出す鬼だったが、伊之助は『父』を追い詰める。しかし、『父』は脱皮し、さらに強力な鬼となる。脱皮した『父』は伊之助の日輪刀が折れるほどに外皮が硬く、力も速さも上がっていた。

伊之助が死を覚悟した時に義勇が助けに現れる。義勇は伊之助の刀を折った『父』を易々と斬り捨てる。伊之助はそんな義勇を見て勝負を挑もうとするが、「修行しなおせ戯け者!」と一喝し、一瞬にして伊之助を木に縛り上げた。

その後、下弦の伍である累と戦う炭治郎の元へ現れる。累は糸の血鬼術を使う鬼で、その糸は炭治郎の日輪刀を折るほどの硬度を誇っていた。しかし、義勇はその糸を難なく切断する。そして自身の範囲に入るもの全てを斬る『水の呼吸 拾壱ノ型 凪』を繰り出して累の首を切断する。

その後、義勇と一緒に応援に来ていた胡蝶しのぶが禰豆子を見つけ殺害しようとし、義勇がそれを止める。鬼滅の妨害をしたために義勇は隊律違反に問われてしまう。

 
【原作】6巻45話「鬼殺隊柱合裁判」~47話「プイ」
鬼である禰豆子を連れていた炭治郎は、柱たちが集結する会議・『柱合会議』にて裁かれる。多くの柱は炭治郎を罰しようとした。しかし、そこに鬼殺隊の長である産屋敷耀哉が現れる。

産屋敷は一枚の手紙を取り出す。手紙には「もしも禰豆子が人に襲いかかった場合は竈門炭治郎及び、鱗滝左近次、冨岡義勇が腹を切ってお詫びいたします。」と書かれていた。この手紙と、禰豆子が傷つけられてもなお人間を襲わなかった事で禰豆子の存在は認められた。
 


― 錆 兎 と の 絆 ―



【原作】15巻128話「御教示願う」~130話「居場所」
上弦の肆である半天狗と上弦の伍である玉壺を倒した後、柱合会議が行われる。その結果、始まりの剣士が持っていたとされる痣を出すことが課題となった。義勇はどうやって痣を発現させるのか、を話し合う前に席を立つ。

風柱の不死川実弥や蛇柱の伊黒小芭内にとがめられるが、義勇は「俺には関係ない」「俺はお前たちとは違う」と発言する。その後、柱たちによる稽古『柱稽古』が始まるが、義勇は参加していなかった。

炭治郎は鬼殺隊の長である産屋敷耀哉から手紙をもらっていた。その手紙には「どうしても独りで後ろを向いてしまう義勇が前を向けるよう、根気強く話をしてやってくれないか」と書かれていた。

話をしにきた炭治郎に、義勇は柱稽古に参加しない理由を「俺は水柱じゃない」とだけ話して立ち去った。しかし、産屋敷の言葉を額面通りに受け取った炭治郎は、四六時中に渡って義勇に付きまとい話しかけた。
一向に諦めない炭治郎に義勇は折れ、過去の話をしだした

【原作】15巻131話「来訪者」
義勇が鱗滝に師事していた時、同期に錆兎という剣士がいた。鬼に家族を殺害された義勇は、錆兎と兄弟同然の中になった。そして義勇は錆兎と共に最終選別へ挑む。

しかし、義勇は最初に会った鬼に傷を負わされる。それを救ったのは錆兎だった。錆兎は他の人間を救うために奔走した。そして錆兎だけが死に、他のメンバーは全員合格した。義勇は気がついたら合格していた。

義勇は「一体の鬼も倒さず、助けられただけの人間が果たして選別に通ったと言えるのだろうか。俺は水柱になっていい人間じゃない。そもそも柱たちと対等に肩を並べていい人間ですらない。俺は彼らとは違う。本来なら鬼殺隊に俺の居場所は無い。」と語った。
炭治郎は「きっと義勇さんは自分が死ねばよかったと思っているんだなあ。痛いほどわかる。自分よりも生きていて欲しかった大事な人が、自分よりも早く死んでしまったり、それこそ自分を守って死んだりしたらえぐられるようにつらい。」と義勇の心情を察し涙した。炎柱の煉獄杏寿郎は、炭治郎たちを守って死んだのだった。炭治郎も同じ思いを抱いていたのだ。
 
炭治郎が義勇に言えることはなかった。ただ、一つだけ「義勇さんは錆兎から託されたものを繋いでいかないんですか?」と問う。それを聞いた義勇は過去の記憶がフラッシュバックした。

義勇は錆兎から頬を叩かれていた。「自分が死ねばよかったなんて二度と言うなよ。翌日に祝言を挙げるはずだったお前の姉も、そんなことは承知の上で鬼からお前を隠して守っているんだ。他の誰でもないお前が…お前の姉を冒涜するな。お前は絶対死ぬんじゃない。姉が命をかけて繋いでくれた命を、託された未来を、お前も繋ぐんだ、義勇。」と錆兎は言っていた。

義勇は「何故忘れていた?錆兎とのあのやりとり。大事なことだろう。思い出したくなかった。涙が止まらなくなるから。思い出すと悲しすぎて何もできなくなったから。」と悔やんだ。義勇は胸の中で、自身の姉と錆兎に詫びた。

その後、義勇も柱稽古に出ることとなった。



―上弦の参・猗窩座と戦う―
~無限城編~
 
鬼殺隊の長である産屋敷耀哉の元へ鬼舞辻無惨が現れる。耀哉は無惨の到来を予期しており、自爆をする事で無惨に大きなダメージを与えた。無惨と敵対する鬼、珠世と愈史郎は耀哉に協力を持ちかけられており、鬼殺隊の本部へと来ていた。【原作】15巻131話「来訪者」

珠世は負傷した無惨に『鬼を人間に戻す薬』を投与する。そして無惨を倒すべく柱や炭治郎が集結するが、無惨は異空間・無限城を呼び出し、一同は無限城へと落とされてしまう。

【原作】17巻147話「小さな歯車」~18巻156話「ありがとう」
炭治郎と一緒に無限城の中を走り回っていた義勇は、上弦の参である猗窩座と遭遇し戦闘となる。

猗窩座と手を合わせた義勇は、猗窩座から「流麗!練り上げられた剣技だ!」と讃えられ、鬼に勧誘される。しかし、猗窩座は強く、柱に匹敵するほどの炭治郎と共闘しても苦戦する。そして猗窩座により遠く吹き飛ばされてしまう。

その後、しばらく炭治郎が一人で猗窩座を相手していたが、再び戦線復帰する。その時、義勇は「痣」を発現させた。しかし、猗窩座はその状態の義勇に即座に対応する。義勇はそんな猗窩座を「この男は修羅だ、戦うこと以外全て捨てた男だ」と評する。

そして義勇は猗窩座によって日輪刀を折られてしまう。絶体絶命の危機だったが、炭治郎が父親から教わった『透き通る世界』へと到達し、ついに猗窩座を打ち負かした。



―無惨との死闘―
~無限城編~

【原作】21巻181話「大災」~183話「鬩ぎ合い」
猗窩座を倒した後、無惨の元へ向かっていた義勇と炭治郎は上弦の肆である鳴女により、突如、瞬間移動させられる。そこには無惨の姿があった。無惨を見た炭治郎は怒りの形相を浮かべ、それを義勇は諌(いさ)めた。しかし、そんな義勇の顔も怒りで歪んでいた。

義勇と炭治郎は無惨と戦いを始めるが、無惨は身体を刃に変え、鞭のように伸縮して攻撃を始める。その攻撃速度と範囲は凄まじく、炭治郎は感覚でかろうじて避けている状態だった。無惨に踏み込んで右眼を潰されてしまった炭治郎に対し、義勇は無惨のことは倒そうとせずに時間を稼ぐように言う。

それを聞いた無惨は「時間稼ぎ…夜明けまでか?光届かぬこの城の中、柱三人でそれは可能なのか?」「縞の羽織りの柱と女の柱はすでに私の部下が殺したようだぞ?」と告げた。どうやら甘露寺と伊黒は鳴女に敗北したらしかった。

義勇に守られていた炭治郎は、足手まといにならないように義勇のそばを離れた。しかし、無惨の圧倒的な攻撃の速さについていけず、危機を迎える。そこに甘露寺と伊黒が現れ、炭治郎を救った。

鳴女は愈史郎に操られており、無惨が受けたのは虚偽の報告だった。その後、愈史郎が鳴女を操作し、無惨を地上に出すことに成功する。
 
【原作】21巻184話「戦線離脱」
無惨が地上に出たことにより、日の出まで耐えることができれば鬼殺隊の勝利となった。しかし、外に出されて激昂した無惨はさらに強烈な攻撃を仕掛ける。義勇たちは無惨に攻撃を仕掛けるが、無惨は日輪刀で斬られた瞬間に蘇生を始め、身体を切断することができなかった。

無惨の反撃に際し、柱たちは偶然攻撃を避けれているような状態だった。鬼殺隊の隊士たちは自身の身体を投げうって柱たちを守った。それを見た無惨は「即死できた者は幸運だ。即死ができなくとも私に傷をつけられた者は終わる。あれを見るがいい。」と口にした。

無惨の視線の先には顔が変形して血反吐を吐いて苦しむ炭治郎の姿があった。無惨は「私は攻撃に私自身の血を混ぜる。鬼にはしない。大量の血だ。猛毒と同じ、細胞を破壊して死に至らしめる。竈門炭治郎は死んだ。」と告げた。
 
【原作】21巻185話「匂いのない世界」
~22巻189話「心強い仲間」

その後も義勇たちは戦いを続けるが、無惨の攻撃をかわせずに傷を負ってしまう。甘露寺は痛みにより一瞬足が止まり、そこを無惨に狙われる。その時、悲鳴嶼と実弥が現れ、無惨に攻撃を加える。義勇は近くにいた村田に炭治郎の治療を頼んだ。
 炭治郎の回想→【原作】186話「古の記録」

柱が集結するが、無惨の攻撃の前に義勇たちは防戦一方だった。そして甘露寺が無惨の攻撃を受けて戦線離脱してしまう。また、他の柱も無惨の攻撃を受けた事で細胞の変化が始まっており、もう五分とせずに死につつあった。

まだ日の出までは一時間十四分もあった。その時、一匹の猫が現れ、背中から注射のようなものを柱たちに射出した。それは珠世が作った無惨の血の血清だった。その血清により、柱たちは細胞の変化が一時的に治った。
 
【原作】22巻190話「ぞくぞくと」
~23巻199話「千年の夜明け」

苦戦を強いられていたが、戦いの中で伊黒が赫刀を顕現させる。そして善逸・伊之助・カナヲが応援に駆けつける。伊黒の赫刀で斬られた無惨は明らかに再生速度が落ちていた。

義勇は「冨岡ァァァ!受けろォォ!」と叫びながら斬りかかってくる実弥の刀を日輪刀で受けた。すると2人の日輪刀が撃ちあった時の衝撃で赫刀へと変わった。

柱や善逸たちは無惨に善戦するが、無惨は轟音と大きな振動を発生させて目にも留まらぬ攻撃を繰り出す。義勇は右腕を切断され、一瞬の内に戦闘不能にさせられた。

その後、炭治郎、伊黒、善逸、伊之助が無惨と戦い続けた。珠世が無惨に投与した薬には、実は鬼を人間に戻すだけでなく『老化』『分裂阻害』『細胞破壊』の効力があり、無惨は体力の限界を迎えつつあった。薬の効力に気づいた無惨は一目散に逃げ出そうとするが、炭治郎たちが休む事なく攻撃を加え続ける。

炭治郎は日輪刀を無惨に突き刺して壁に押し当て、さらに伊黒、甘露寺、実弥が無惨の動きを封じた。その時、遂に夜が明けた。

その瞬間、無惨は凄まじい衝撃波を放ち、実弥や伊黒は吹き飛ばされる。だが、炭治郎は左腕を失いながらも踏ん張って片手で日輪刀を握り、必死で刀を赫刀に変えようとしていた。
 
【原作】23巻199話「千年の夜明け」~200話「勝利の代償」
そんな中、意識を取り戻していた義勇が共に炭治郎の日輪刀を握り赫刀を顕現させた。無惨は吐血しつつも、日光から自身の肉体を守るために肉の鎧によって瞬時に膨れ上がり、巨大な赤ん坊の姿になった。義勇は炭治郎に突き飛ばされた事で助かったが、炭治郎は赤ん坊の肉の中に呑み込まれてしまった。

赤ん坊は日に灼かれながら逃亡しようとする。生き残っていた鬼殺隊の隊士や柱たちは必死にそれを止めようとするが、赤ん坊は地中に潜りだそうとする。鬼殺隊の隊士たちには力が残っておらず、絶望した。

その時、赤ん坊に呑まれていた炭治郎は日輪刀を握りしめた。すると赤ん坊から血が流れ、大きな泣き声が響く。そして赤ん坊の肉体は太陽に灼かれて消滅した。
 
【原作】23巻200話「勝利の代償」
鬼殺隊の面々は長い戦いが終わった事で歓喜の声をあげた。そしてすぐに負傷者の治療が行われた。

義勇は動かないように言われながらも、「炭治郎はどこだ…。炭治郎は無事か。」と言いながら炭治郎のもとへ向かう。すると鬼殺隊の隊員が「…とっ、とりあえず手当てを!」と義勇を遮るように立ちはだかった。

義勇はその奥で血だらけで座り込む炭治郎の姿を目撃する。炭治郎の周囲にいた鬼殺隊の隊員は「息してない。脈がない。炭治郎…。」と泣いていた。

義勇は炭治郎の笑顔を思い浮かべて涙を流す。そして炭治郎の手を握り「また守れなかった。俺は人に守られてばかりだ…。許してくれ。すまない禰豆子。すまない…。」と呟いた。
 
【原作】23巻201話「鬼の王」~202話「還ろう」
その時、炭治郎は突如目を見開き、近くにいた隠(サポートを行う鬼殺隊の隊員)に攻撃を仕掛けるが、義勇は咄嗟に隠を救った。無惨は消え去る間際、全ての血と力を注ぎ込んで炭治郎を鬼にしていた。無惨は炭治郎を使って鬼殺隊を滅ぼそうとしていたのだった。

炭治郎が太陽に灼かれて悶えている中、義勇は「動ける者ーっ!武器を取って集まれーっ!炭治郎が鬼にされた!太陽の下に固定して焼き殺す!人を殺す前に炭治郎を殺せ!」と叫んだ。

義勇は炭治郎が日陰に逃げ込もうとするのを防ぎ、「一瞬遅れたら間違いなく隠を殺していた。頼む。このまま、炭治郎のまま死んでくれ…!」と願ったが、炭治郎は太陽を克服し、陽光灼けを止めた。そして炭治郎は義勇に襲いかかる。

その時、伊之助が割って入り義勇を守った。伊之助・善逸が声をかけても炭治郎は止まらず、伊之助に攻撃を仕掛けようとした時、人間に戻った禰豆子が炭治郎に抱きついて止めに入った。
 
禰豆子・善逸・伊之助が必死に語りかけても炭治郎は止まらなかった。炭治郎が背中から長く伸びた骨と黒い荊棘のような物を出現させて善逸たちに攻撃を仕掛けようとすると、義勇がそれを防ぐ。

義勇は「禰豆子を噛んだ!血の味を覚えてしまった。もうお終いだ…!早く!早く炭治郎を殺さなければ。人を殺す前に。だが…日光も赫い日輪刀も炭治郎には効かない。殺す方法がない…!」との思いを抱いた。そして炭治郎が口から光の球を作り出して攻撃しようとしたところ、禰豆子がそれを止めようと必死に炭治郎の口の前に左手をかざす。

炭治郎の攻撃が逸れたのを見た義勇は、「何故禰豆子を殺さない?血の滴る食い物が目の前にあるというのに。先刻の攻撃は何故逸れた?抗ってるのか炭治郎お前も。炭治郎の自我を取り戻すことができれば…!しかしそんな奇跡が容易く起こせるのか俺に…!」と考えた。

その時、義勇はカナヲが日輪刀も持たずに炭治郎に向けて走り出すのを目撃する。カナヲは炭治郎の攻撃を受けながらも、鬼を人間に戻す薬を炭治郎に注入した。
炭治郎はカナヲの投与した薬により人間へと戻った。無事に意識を取り戻した炭治郎を見て、義勇は胸をなでおろしていた。
炭治郎が初めて出会った柱は義勇であり、長く繰り広げられた戦いにおいて最後に関わった柱も義勇だけであったというのも運命的な因果を感じさせる。

無惨によって鬼にされた炭治郎が人間へと戻り、ようやく全てが終わった後には長かった髪をバッサリ切っている。また柱の中では、不死川実弥と並んで最終決戦を生き延びた柱になった。



-冨岡義勇の過去-
【原作】15巻130話「居場所」・130話「来訪者」

子供の頃は姉の蔦子と共に病死した両親の遺産で生活していたが、姉の祝言前日に鬼に襲われる。義勇自身は姉に庇われた事で一命を取り留めたが、姉はそのまま鬼に殺されてしまった。

その時、幼い義勇はありのまま「鬼が姉を殺した」と言ってしまった事で周囲からは心を病んだと思われてしまい、遠方の親戚の医者の下へ連れて行かれる事となった。しかし、途中で逃げ出し遭難した。

その後は、鱗滝の知り合いの猟師に拾われた事で鬼殺隊を目指す事となった。鱗滝の元で修行に明け暮れていた炭治郎が出会った少年剣士・錆兎は、義勇と同じ時期に鱗滝に入門した同期でした。共に鬼によって家族を殺され、天涯孤独となっていたところを鱗滝に引き取られる。同い年であった二人はやがて無二の親友となり、最終選別を通過する為に稽古へ励んだ。

→「 錆 兎 と の 絆 」へ
 
──この事から彼は、現実として「多くの人を助けた親友が死に、何もしていない自分が最終選別に合格して鬼殺隊に入隊できた事」に対して深い後ろめたさを抱えており、自分は本来なら他の柱達と肩を並べていい立場ではない、それどころか本当なら鬼殺隊に自分の居場所は無いとさえも考えていた。

──彼が多くの場面で単独行動を取り、他の柱達とも距離を置きたがるのはこうした経緯と、これによる強い「罪悪感」「後悔」といった心の問題が強い要因である。

──故に炭治郎が自分より相応しい"真の水柱"となる事を望み、彼が自身の適性から水の呼吸以外の道を追及するのを心良く思っていなかった。彼が鱗滝に炭治郎を紹介した際の手紙に綴った「突破して、受け継ぐ事ができるかもしれません」という文章も、改めると「(自分と違って最終選別を)突破して、(本当の水柱を)受け継ぐ事ができるかもしれません」という意味である。


──冨岡義勇 半々羽織の理由──
義勇が常に着ている羽織の半分が姉の形見であるのは「家族の死」、もう半分が錆兎の形見であるのは「友の死」、これらの過去からくる悔やんでも悔やみきれない不甲斐なさ、無力だった自分を忘れない為に纏う自戒の証なのだと思われる。
 


-鬼滅の刃公式ファンブック-
『鬼 殺 隊 見 聞 録・弍』 

鬼殺隊解散後の義勇は炭治郎との手紙のやりとりをしていて、その文面からは穏やかに笑うようになった義勇の心境の変化や、楽しく過ごしている様子などが読み取れる事から、炭治郎はそれがとても嬉しいと語っている。
**炭治郎は以前から義勇に近況報告の手紙を送り続けていたが、心を閉ざしていた当時の義勇からの返事は無かった**

また意外な事に宇髄の一家とも随分親しい関係になっているようで、炭治郎への手紙には最近一緒に温泉に行って楽しかったと綴られていた。その後は宇髄家に生まれた赤ん坊を抱かせてもらうなど、その交流は長く続いていたようだ。
 
他にも、無惨との最終決戦後に血と斬り傷でボロボロになってしまった義勇の羽織は、禰󠄀豆子が綺麗に繕って、元通りにしてくれていた事がわかった。
その為に、義勇が予備に残しておいた姉蔦子と錆兎の形見の羽織の生地は殆ど無くなってしまったのだが、義勇は羽織を繕ってくれた事に深く感動して、禰󠄀豆子に山ほどの贈り物(着物、洋服、宝石、髪飾り等)を渡して感謝の意を伝えている。

無惨、そして鬼になった炭治郎との戦いの後で、不死川同様に義勇も昏睡状態になり一時危険な状態に陥っていたのだが、禰󠄀豆子が繕い直した羽織を義勇に掛けて、どうか意識が戻ってきてほしいと毎日願い続けてくれていたのだという。