-継国縁壱-

***ネタバレ知りたくない方はご注意ください*** 

継国縁壱の過去と生い立ち
継国縁壱と「うた」との出会い
炭治郎の先祖・炭吉との出会い
縁壱の強さの秘訣は「赫刀-赤い刀」
刀鍛冶の里編~『縁壱零式』
鬼舞辻無惨との戦い

兄・継国厳勝から見た弟・縁壱

-継国縁壱の過去と生い立ち-

継国縁壱(つぎくによりいち)は侍の家系に四百年前の戦国時代に生まれます。双子の弟として生まれたものの、何故か赤ちゃんの頃から「痣」がありました。

当時は跡目争いの原因に繋がることから双子は忌み嫌われ、また不気味な痣のせいで「不吉な忌み子」として父親に殺されそうになります。ただ母親の朱乃(あけの)が必死に制止したため事なきを得たが、その後も兄・厳勝(みちかつ)との待遇差は歴然でした。

継国縁壱はわずか7歳にして「生き物の身体が透けて見える能力」を既に体得――そのため病に罹っていた母親の病巣も見抜き、幼いながらに母親の側でずっと支えていました。
母親・朱乃によると、縁壱という名前は「人と人との繋がりを何より大切にしてほしい」という願いを込めて命名したそう。また兄・厳勝は「強く、いつも勝ち続けられるよう」という願いを込めて、父親が命名したそう。

縁壱の母親は信心深い人でした。母親は話そうとしない縁壱が耳が聞こえないものと思っており、太陽の神様が縁壱の耳を温かく照らしてくれるように「耳飾りのお守り」を作ってあげました。
継国縁壱は「当初10歳になったら寺に出家させて僧侶にする」という条件で生かされていました。兄・厳勝もそう思い込んでいましたが、7歳の頃に事態は変わります。それまで一切寡黙だった継国縁壱は兄・厳勝から笛を貰ったことをキッカケに「侍になりたい」と言い出します。

その後、兄・厳勝の稽古中に現れては「剣技を教えて欲しい」と頼み込んでくるようになります。わずか7歳にして継国縁壱は大人の剣士を圧倒します。それでも心優しき継国縁壱にとって、初めて人を傷つけた感触は耐えられないほど不快そのものでした。
→【原作】20巻177話「弟」



-継国縁壱と「うた」との出会い-
 
継国縁壱は母親・朱乃の死後、兄から貰った笛を大事に抱えたまま家をすぐさま出ました。何故なら、兄・厳勝がそのまま跡目につけるように慮ったから――。

ただ継国縁壱が向かった先は寺ではなく、あてもない流浪の旅でした。どこまでも続く美しい空の下を思いきり走った。縁壱はどこまで走っても疲れることがなかった。
気づくと縁壱は山の中におり、そこで田んぼの中に佇む一人の同じ年頃の女の子を見つけた。女の子は桶を持ったまま長い間動かなかった。縁壱が何をしているのか尋ねると、女の子は「流行り病で家族みんな死んじまった。一人になって寂しいから田んぼにいるおたまじゃくしを連れて帰ろうと思って」と話した。

しかし、女の子は夕暮れになるとおたまじゃくしを田んぼに逃した。縁壱が「連れて帰らないの?」と聞くと、女の子は「うん…。親兄弟と引き離されるこの子たちが可哀想じゃ」と話した。

それを聞いた縁壱は「じゃあ俺が一緒に家へ帰ろう」と言った。女の子の名前は「うた」といい、黒曜石のような瞳を持ち、継国縁壱と同じ年頃の少女だった。それから縁壱とうたは一緒に暮らすようになった。

うたは朝から晩までよく喋る女の子だった。縁壱はうたから生き物の体が透けて見える者などいないと知らされた。その時、漠然とした疎外感の理由が分かったような気がした。ただ継国縁壱はうたを通して「生きる喜び」も知った。
この初めての出会いから10年後に二人は夫婦となり、うたのお腹の中には子供がいた。臨月を迎えたうたのために、継国縁壱は産婆を呼びに街に向かった。
縁壱は日が暮れる前に帰るつもりだったが、途中でうずくまる老人を見つけた。老人は戦の負傷で死にかけている息子に山三つを越えて会いに行こうとしていた。縁壱は老人を息子の元まで送り届け、産婆を呼ぶのは明日にして家路へと急いだ。


日が暮れて家に着いた縁壱が見たのは、お腹の子供諸共に血に塗れたうたの姿だった。うたと子供は鬼に殺されていた。縁壱は鬼を追ってきた剣士に声をかけられるまで、ぼんやりとうたと子供の亡骸を抱いていた。

継国縁壱の夢は家族と静かに暮らすことだった。愛する人に手を伸ばせば届く距離で。しかしその夢は鬼によって潰えた――。
そこに助けに現れたのが「後の鬼殺隊」の一人(おそらく炎柱・煉獄)でした。そして、継国縁壱は誘われるがままに鬼殺隊に入ります。「愛する人と暮らす」という変哲もない美しい世界を壊す存在、鬼舞辻無惨を倒すために――。

→【原作】21巻第186話「古の記憶」



-炭治郎の先祖・炭吉との出会い-

――絶望の中、縁壱は「うた」と暮らした家に帰ります。そこで縁壱は、見知らぬ男女が鬼に襲われている場面に出くわします。襲われていたのは炭治郎の先祖にあたる、炭吉とすや子でした。

縁壱は2人を救います。そして直後、産気づいたすや子のために、産婆を呼びに行きました。「うた」にしてあげられなかった事を成し遂げた縁壱は、救われたような気持ちになりました。

2年後、縁壱は再び炭吉とすや子の元を訪れます――。
縁壱ははじめて、無惨を捕らえることができなかった心苦しさを炭吉に打ち明けました。「誰かに話を聞いて欲しかった。ずいぶん考えて思い浮かんだのがお前とすやこの顔だった。」と言います。

縁壱の背負う罪の意識はあまりに重く、炭吉は声をかけることができませんでした。涙を流す縁壱を、事情を知らないすや子が明るく励まします。
→【原作】12巻第99話「誰かの夢」
→【原作】21巻第187話「無垢なる人」
縁壱はすや子にせがまれるまま、日の呼吸の型を見せました。炭吉は、美しい舞のような型を目に焼き付けます。

縁壱が炭吉の家を去ろうとしたとき、炭吉は叫びました。「縁壱さん、後に繋ぎます!貴方に守られた命で、俺たちが」「あなたは価値のない人間なんかじゃない

親交を深めた炭吉に対して、縁壱は『日の呼吸の型』を教えました。そして最後の別れ際に縁壱は『日輪の耳飾り』を手渡し「ありがとう」と告げ去ります。
→【原作】22巻第192話「廻る縁」


日の呼吸の型は息を吸うのを忘れるほど美しく、竈門炭治郎は「継国縁壱はまるで精霊のように見えた」と回想しています。継国縁壱が編み出した日の呼吸は「ヒノカミ神楽」という演技の舞いとして、竈門家にのみ代々何百年にも渡って受け継がれていました。
日の呼吸には12の型が存在しその技と技が全て連動して繋がっています。12個の必殺技を全て繰り返すことで更に13個目が新たに完成します。
[鬼滅の刃~無限城編]
生前に鬼舞辻無惨を倒せなかった継国縁壱の「遺志」はその後、ヒノカミ神楽として主人公・炭治郎に継承されていきます。そのため鬼は「二人」を多く重ね合わせて畏怖することが多く、炭治郎が身に付けてる特徴的な『日輪の耳飾り』も、もとは継国縁壱が愛用していたものなのでした。



-縁壱の強さの秘訣は「赫刀-赤い刀」-

赫刀は柄を固く握って熱が与えられることで、日輪刀が赤く輝いた状態のことを言います。継国縁壱の赫刀で斬られた鬼は鬼舞辻無惨ですら再生速度が極めて遅れ、完全に再生不可能なダメージを与えるものでした。

炭治郎も鬼舞辻無惨戦では「日の呼吸」を体得し、最終的に日輪刀もついには真っ赤な赫刀に染め上がります。炭治郎の妹・禰豆子の血鬼術が燃え盛る能力だった理由も、日の呼吸の使い手・継国縁壱の影響を受け継いでるのかも知れません。
序盤から登場していた「謎の剣士」はすべて継国縁壱のことでした。鬼舞辻無惨は「細胞レベル」で継国縁壱を恐怖と感じており、何度もトラウマが呼び覚まされるシーンが描かれています。



-刀 鍛 冶 の 里-
 
刀鍛冶の里では「縁壱零式(よりいちぜろしき)」という戦闘用絡繰人形で竈門炭治郎や時透無一郎が修行していましたが、この人形は継国縁壱がベースになっています。[鬼滅の刃-刀鍛冶の里]

継国縁壱の強さを再現できず、腕を6本生やさなければいけないほどのものでした。この『縁壱零式』の中には、縁壱が使っていた日輪刀と同じ『滅』の字が彫られた刀が隠されていましたが、これが縁壱の日輪刀と同一のものかは分かりません。
→【原作】12巻102話「時透くんコンニチハ」



-鬼舞辻無惨との戦い-
 
「うた」が鬼に殺され、継国縁壱は誘われるがままに鬼殺隊に入り、それから間も無く、縁壱は鬼舞辻無惨を見つけた。縁壱は出会った瞬間に自身がこの男を倒すために生まれて来たのだと理解した。

無惨は女の鬼と行動を共にしていた。
無惨は「呼吸を使う剣士にはもう興味がない」と言って即座に攻撃してきた。無惨は恐るべき速さと攻撃範囲を持っていた。縁壱はかすり傷でも死に至ると感じ取り、生まれて初めて背筋が凍った。子供の頃から『透き通る世界』を見ることができる継国縁壱は、無惨に七つの心臓、五つの脳があることを知った。

この瞬間、縁壱は『日の呼吸』の型を完成させた。そして次の瞬間、縁壱はすれ違いざまに無惨の身体をバラバラに斬り裂いた。縁壱の赫刀で斬られた無惨は身体が再生できずに困惑していた。
縁壱は「命をなんだと思っている?」と無惨に問うが、無惨は返答をしなかった。無惨の顔は怒りで赤黒く染まっており、縁壱は自身の言葉が無惨の心に届かないことを悟った。
縁壱が女の鬼の方を見ると、その鬼は無惨を助けようとせず、頸を斬られた無惨を凝視していた。その眼はキラキラとした希望の光で輝いていた。縁壱は女の鬼よりも先に無惨にとどめを刺そうとした。縁壱が無惨に一歩近づくと、無惨の食い締められた奥歯が砕ける音がした。

その瞬間、無惨の肉体が千八百もの肉片になって勢いよく弾けた。縁壱は千五百と少しの肉片を斬ったが、残りの肉片を逃してしまった。逃した肉片は合わせればおそらく人間の頭ほどあった。

縁壱が立ち尽くしていると、女の鬼が鳴き声のような声と共に倒れ込んだ。女の鬼は「もう少しだったのに、もう少しだったのに…頸の弱点を克服していたなんて…」と言って頭を掻きむしった。女の鬼は涙を流しながら「死ねば良かったのに!生き汚い男!鬼舞辻無惨…!」と口にした。
女の鬼は無惨が弱った為に一時的に無惨の支配から解放されていた。縁壱が女の鬼を宥めると、女の鬼は無惨について話しだした。女の鬼は無惨は縁壱が死ぬまで姿を現さないだろうと言った。縁壱は女の鬼に無惨を倒す手助けを頼んだ。女の鬼は戸惑いつつもその頼みを了承した。その女の鬼は『珠世』という名前だった。
縁壱はその後、駆けつけた仲間から兄が鬼になった事を聞かされた。
【原作】21巻186話「古の記憶」~187話「無垢なる人」
鬼舞辻無惨は継国縁壱からは生き延びたものの、その後数百年にも渡って「負傷したダメージ」は癒えることありませんでした。太陽光を浴びるのと同等の威力を持つ「赫刀」の影響と考えられますが、年月が経った今でも無惨の細胞を未だに灼き続けています。

無惨の血を与えられた上弦の鬼にも「その記憶」は伝播し、堕姫が竈門炭治郎と相対した時には「継国縁壱の姿」をダブらせるほど。
[鬼滅の刃-遊郭編]



-継国縁壱の兄は上弦の壱・黒死牟-

更に10年後、鬼狩りに入隊した継国縁壱と兄・厳勝は再会する。更に強くなっていた縁壱にプライドがくすぐられた兄・厳勝は家族を捨てて、自らも鬼狩りに入隊する。ただ痣が発現するまで成長するものの、兄・厳勝も日の呼吸は体得できなかった。

しかも痣が発現したことで、余命いくばくもない状態に追い込まれる。そこで「鬼にならないか?」と声をかけてきたのが鬼舞辻無惨だった。
呼吸が使える侍の鬼が欲しかった無残、弟・縁壱に勝つために永遠の命が欲しかった厳勝の思惑が合致。継国縁壱の兄は上弦の壱「黒死牟(こくしぼう)」に成り下がる。

継国縁壱は「実の兄が鬼になった責任」「鬼舞辻無惨にとどめを刺せなかった責任」「珠世を逃した事」を鬼殺隊の隊員から責められ、鬼殺隊から追放される事になった。一部の者は縁壱に「自刃(自殺)せよ」と迫ったが、産屋敷家の当主がそれを止めた。
兄・厳勝は幼少期から一貫して、弟の縁壱に一方的に嫉妬していた。継国縁壱が七歳になった頃、剣の稽古をしている巌勝に、縁壱は「兄上の夢はこの国で一番強い侍になることですか?」と尋ねた。

巌勝はその時初めて縁壱の声を聞いた。それまで縁壱は耳が聞こえない物だと思われていた。縁壱はその時、自身も侍になると言って笑った。初めて見せた縁壱の笑顔は、巌勝に気味悪がられていた。
 

縁壱は自身の強さの秘密を聞きに来た巌勝に「打ち込んで来る前に肺が大きく動く。骨の向きや筋肉の収縮、血の流れをよく見ればいい」と教えた。しかし、『透明な世界』を見ることができない巌勝には何を言っているのかが理解できなかった。
巌勝が分かったのは、自分より下だと思っていた縁壱が自身より遥かに優れているという事実だった。その件がきっかけで巌勝は縁壱に嫉妬の炎を燃やし始める。 
→【原作】20巻178話「手を伸ばしても手を伸ばしても」
**黒死牟との戦いの最中に命を落とす**
それから数十年後、継国縁壱は八十歳を超えても生きていた。そして赤い月の夜に鬼となった兄と再会する。

継国縁壱は黒死牟の姿を見て「お労しや。兄上」と涙を流し、刀を握った。継国縁壱の強さは八十を超えても尚、まったく衰えておらず、黒死牟は手も足も出なかった。

その時、黒死牟は「何故いつもお前が、お前だけがいつもいつも特別なのか。痣者であるというのに生き永らえ、その老骨で振るう技は、全盛期と変わらぬ速さ、そして威力。彼の方をも追い詰めた剣技。それは神の御技に他ならない」という憤りを抱えていた。
縁壱は以前に巌勝から貰った笛を取り出し「いただいたこの笛を兄上だと思い、どれだけ離れていても挫けず日々精進いたします」と笑顔で言い、荷物をろくに持たずに去って行った。
縁壱に構った為に父に殴られた次の日に、笛を持ってきて「助けて欲しいと思ったら吹け。すぐに兄さんが助けにくる」と言って笑う兄のことを慕っていた。
しかし、縁壱は黒死牟との戦いの最中に寿命が尽き、立ったまま死亡してしまう。縁壱の着物の中には、かつて巌勝から貰った笛があった。 
→【原作】20巻174話「赤い月夜に見た悪夢」

→「兄・継国厳勝から見た弟・縁壱