-栗花落カナヲ-

***ネタバレ知りたくない方はご注意ください*** 


栗花落カナヲ(つゆり かなを)
は、鬼殺隊の最終選別を炭治郎とともに突破した女性剣士。炭治郎より1歳年上ですが、同期なので炭治郎は呼び捨てにしています。実は「鬼滅の刃」には、胡蝶しのぶ(こちょう しのぶ)などの目上や、禰豆子など目下の女性はいるのですが、炭治郎と同格で女性の主要キャラクターはカナヲだけなのです。

蟲柱(むしばしら)であるしのぶの継子になっていたり、同期の誰よりも先に呼吸技の全集中・常中を会得していたりと、『立志編-那谷蜘蛛山編』時点での実力は炭治郎よりも上。ですが強者ゆえの驕りはまったくなく、それどころか「何もかもどうでもいいから自分では何も決められない」など虚無感に囚われて主体性が薄く、感情も全部抑え込む姿が印象的でした。



―炭治郎との出会い―

 
【原作】6巻44話「隊律違反」
カナヲは、下弦の伍である累と戦う炭治郎たちのいる那田蜘蛛山へと向かう。そこでカナヲは鬼によって負傷した隊員たちの治療を先導する。

カナヲは禰󠄀豆子を見つけて斬りかかるが、炭治郎による邪魔が入る。カナヲは炭治郎をカカト落としにより失神させ、禰󠄀豆子の頸を狙った。禰󠄀豆子は体を小さくして逃げ続け、カナヲは攻撃してこない禰󠄀豆子に疑問を抱いた。

その時、炭治郎と禰󠄀豆子を殺さないように伝令が入り、カナヲは攻撃をやめた。
 
【原作】6巻49/50話「機能回復訓練 前編/後編」
その後、累との戦いで負傷した炭治郎たちが『蝶屋敷』へと運ばれてくる。カナヲは炭治郎たちのリハビリである『機能回復訓練』に付き合うことになる。カナヲは炭治郎たちと薬のかけ合いと、追いかけっこをすることになるが、誰一人カナヲに敵わなかった。

炭治郎はカナヲが『全集中の呼吸・常中』ができることを知る。炭治郎たちは鍛錬を積むことにより『全集中の呼吸・常中』を習得し、カナヲに勝つことができた。
 
【原作】7巻53話「君は」
炭治郎たちは『機能回復訓練』を終え、次の任務に出ることになった。炭治郎は世話になったカナヲに挨拶に行く。

カナヲは礼を言う炭治郎に対し、ニコニコ微笑んでいるだけだった。しかし、炭治郎がいつまでたっても帰らないため、コインを投げ、表が出たために「師範の指示に従っただけなのでお礼を言われる筋合いは無いから。さようなら。」と話した。

だが炭治郎は帰るどころか腰を下ろし「今投げたのは何?」「表と裏って書いてあるね。なんで投げたの?」「あんなに回るんだね。」と話し出した。カナヲは最初は受け流していたが、折れることがない炭治郎に「指示されてないことはこれを投げて決める。今あなたと話すか話さないか決めた。」と話した。

すると炭治郎は「なんで自分で決めないの?カナヲはどうしたかった?」と問う。カナヲが「どうでもいいの。全部どうでもいいから自分で決められないの。」と言うと、炭治郎は「この世にどうでもいいことなんて無いと思うよ。きっとカナヲは心の声が小さいんだろうな。」と返した。

炭治郎は少し悩んだ後、カナヲのコインを持ち「よし!投げて決めよう!カナヲがこれから自分の心の声をよく聞くこと!表!表にしよう!表が出たらカナヲは心のままに生きる!」と言ってコインを投げた。

炭治郎が投げたコインは表だった。炭治郎はカナヲの手を握り、「カナヲ!頑張れ!人は心が原動力だから!心はどこまでも強くなれる!」と言ってその場を去ろうとした。カナヲは慌てて「なっ何で表を出せたの?」と聞いた。

すると炭治郎は「偶然だよ。それに裏が出ても、表が出るまで何度でも投げ続けようと思ってたから。」と笑顔で答えた。

炭治郎が去った後、カナヲはコインを大事そうに握った。その後、カナヲは徐々に自分の考えを口にするようになった。

なお、持ち歩く必要がなくなったコインはその後どうなったのかというと――カナエが生前作ってくれた思い出箱に入れていると『公式ファンブック第1巻』で明かされています。カナエとの思い出と一緒に、炭治郎との思い出も大事にしまっているのでしょう。
 
 
【原作】7巻53話「君は」
その後、炭治郎や同期の鬼殺隊の隊員である不死川玄弥は、上弦の肆である半天狗との戦いで重傷を負っていた。炭治郎は二ヶ月間昏睡した後に目を覚ました。

炭治郎の看病をしていたカナヲは、炭治郎が目を覚ましたことに驚き、手に持っていた花瓶を落とした。そして「…大丈夫?戦いの後、二ヶ月間意識が戻らなかったのよ。目が覚めて良かった…」と言って涙を流した。
 


-遊 郭 編-
【原作】8巻第70話「人攫い」
 
そんなカナヲが初めて自分の心に従った行動を見せたのが『遊郭編』第1話「音柱・宇髄天元」宇髄天元が、蝶屋敷にいたアオイとなほを連れ去ろうとした時に、カナヲは一瞬コインを投げようかと迷ったものの、すぐに炭治郎の「心のままに」という言葉を思い出し、体を張って宇髄を止めているのです。

これは柱である上官に逆らう行動でしたが、カナヲは命令違反で罰を受けることよりも、戦えないアオイを守ることを優先しました。炭治郎が駆け付けた後も、転びかけたすみを助けたり「アオイさんたちを放せ、この人さらいめ!!」と文句を言う炭治郎の後ろでかわいらしく拳を振り上げたりしていました。控えめではありましたが、しっかりと自分の意志で動けたところから、カナヲの成長ぶりと健気さがうかがえます。

 

-上弦の弐・童磨との遭遇-
【原作】18巻157話「舞い戻る魂」  
   ~19巻第163話「心あふれる」

 
しのぶの死に衝撃を受けるカナヲを、童磨はしのぶの遺体を自身の体に吸収する様を見せ付けて挑発する。これを目の当たりにしたカナヲはかつて無い程に激昂し凄まじい怒りと憎悪を胸に、自分を拾い育ててくれた姉同然である胡蝶姉妹の仇を討つべく童磨と対峙する。

しのぶは死に際に指文字で「息を吸うな」という意味のサインを出しており、カナヲもそれを正確に読み解いた事で「粉凍り」による初見殺しを回避。さらに鍛え上げた剣術で善戦するも、やはり上弦相手に1対1では分が悪い。
その強みが「視力」である事を見切られて、目潰しや「凍て曇」などの血鬼術を矢継ぎ早に繰り出される。それらを何とか凌ぐカナヲだが、童磨は異常な速度で彼女の手にしていた日輪刀をかすめ取った

無手となったカナヲを童磨は回避困難な血鬼術「散り蓮華」で弄り殺しにしようとしたが、寸前で嘴平伊之助が天井をぶち破って乱入し、彼女を救う。
 伊之助の奇襲によりカナヲの刀は取り返されてしまうが、上半身裸で獣の被り物という今までに出会ったことのないタイプの剣士である伊之助に興味を抱いた童磨はカナヲの刀と同様に伊之助の被り物を奪う。そして、彼の素顔に見覚えがあると言って語りはじめた

――伊之助の母・琴葉は頭が残念な女で、夫や姑による家庭内暴力に晒され続けた末に、救いを求めて息子を連れて万世極楽教の門を叩いたのだという。
童磨自身は寿命が尽きるまで手元に置くだけで母子を殺すつもりはなかったのだが、琴葉に人喰いの現場を見られた事で不本意ながら始末せざるを得なくなり、崖際に追い詰められた琴葉は最後の希望を託して伊之助を崖下に投げ落とした後に、童磨に殺害されたのだった。
童磨も「生きてはいないだろう」と思い伊之助を探そうとはしなかったが、伊之助は辛くも生き延びていた。そしてそれ以降、伊之助と会う今までは琴葉の事は完全に忘れていた。
実母と母の温もりを思い出させてくれたしのぶの仇として怒りを燃やす伊之助だが、童磨は時間が無くなってきたとして「結晶ノ御子」に2人の相手を任せ、その場を去ろうとする。
しかしその場を後にしようと扉に手をかけた刹那、片目が落ちて視界が割れ、童磨の体が突如崩れ始めた。
童磨に取り込まれることこそがしのぶの真の狙いであった。

元より勝てる相手ではないと踏んでいたしのぶは、1年かけて藤の花の毒を服用し続ける事で自らの体を毒の塊となり、自ら身を捧げる事で大量の毒を盛る壮絶な罠を張っていたのだ。
それだけでなく、しのぶが珠世との共同研究で作り出した特別製の毒までもが含まれていた。その毒の量はしのぶの全体重分、致死量の実に700倍――。

カナヲもその作戦を予め知らされており、彼女が1対1は勝ち目が無いような相手とまともにぶつかったり、あえて挑発するような言動で気を引くなどしていたのは、毒が効くまでの時間稼ぎの為であった。
童磨は毒により体が溶けたことに驚くが、それでも冷静に解毒の時間を稼ぐ為の大技「霧氷・睡蓮菩薩」を放つ。しかし、毒のせいで技の精度が落ちており、カナヲの奥の手、極限の動体視力を獲得する花の呼吸・終ノ型「彼岸朱眼」により彼女の接近を許してしまった。溶けた頚に刀を食い込ませられる童磨。

睡蓮菩薩により体が凍りついたカナヲはそこまで動けなくなってしまうが、機転を利かせた伊之助が自身の刀を投げつける事でカナヲの刃を無理矢理押し込み、ついに童磨の頚を落とした――

 

-無惨との死闘-
 
その後、カナヲと伊之助は善逸と合流する。そして愈史郎の札を身につけて姿を消し、無惨と柱たちの戦いに参戦する。無惨はカナヲたちの姿は見えていなかったが、瞬時に姿を隠している剣士がいる事に気付き、カナヲたちが身につけている札を斬り落とした。

カナヲたちが来た事により柱たちへの攻撃が分散し、柱たちは僅かな余裕ができた。その隙に柱たちは赫刀を顕現させた。

その後、カナヲたちは札をつけて姿を消して戦いを繰り広げるが、無惨が轟音と大きな振動を起こして攻撃を繰り出す。それにより、柱や善逸たちは一瞬で戦闘不能にさせられた。カナヲは唯一人だけ意識を保っていたが、無惨はカナヲへ歩み寄ってトドメを刺そうとする。

カナヲは「みんなが安全に生きられるように、また悲しい思いをしなくていいように。コイツのせいでみんなの家族も殺された。死んでも倒す。私だって姉さんみたいに最後までちゃんとやる。」という想いを抱き、戦いを続けようとするが、日輪刀を折られた上に深い傷を負っており、立ち上がる事ができなかった。

その時、炭治郎が現れ、無惨の腕を斬り飛ばした。カナヲは炭治郎の名を呼んで涙を流した。その後、カナヲは近くにいた隊員に保護され、戦線離脱した。
 
その後、炭治郎や柱たちは死力を尽くして戦い、無惨を朝日で消滅させた。しかし、無惨は消滅する間際に全ての血と力を炭治郎に注ぎ込んで鬼にしていた。

無惨の消滅に鬼殺隊の面々が沸き立っている時、炭治郎は動き出し、鬼殺隊の隊員たちに襲いかかる。

炭治郎が鬼になったことに気づいた義勇は「動ける者ーっ!武器を取って集まれーっ!炭治郎が鬼にされた!太陽の下に固定して焼き殺す!人を殺す前に炭治郎を殺せ!」と叫んで炭治郎と戦った。

善逸と伊之助も駆けつけて炭治郎に声をかけるが、炭治郎は善逸たちに攻撃する。その時、人間に戻っていた禰豆子が姿を現す。禰豆子は炭治郎に人間に戻るように必死に呼びかけた。
 
カナヲはそんな炭治郎と禰豆子の姿を目にし、胸から木の筒を取り出す。その中身は鬼を人間に戻す薬であり、禰豆子に使う薬が足りなかった時の事を考えてしのぶから渡された物だった。

カナヲは「私の目を片方残してくれたのは、このためだったんだね。姉さん。」と涙を流しながら呟いた。そしてカナヲは『花の呼吸 終ノ型 彼岸朱眼』を使用し、炭治郎の元へ駆け出した。

カナヲは炭治郎の攻撃を受けながらも薬を炭治郎へ投与し、「炭治郎だめだよ。早く戻ってきて。禰豆子ちゃん泣かせたらだめだよ…。」と言って倒れた。

その後、炭治郎はカナヲが投薬した薬により人間へと戻った。カナヲは治療を受けながら、意識を取り戻した炭治郎を見て涙を流した。
 
無惨との戦いから三ヶ月後、カナヲは蝶屋敷にいた。
カナヲが庭の桜を眺めていると、そこに炭治郎がやって来て「近くで見ると凄いね!この桜の木。」と話しかける。カナヲは「初代花の呼吸の剣士が植えた桜なんだって。『必勝』っていう名前がつけてあるの。叶ったよって教えてあげたい。」と語った。

炭治郎が目と傷の具合を申し訳無さそうに尋ねると、カナヲは「全然見えないわけじゃないんだよ。傷も全然痛くないよ。」と笑顔で答えた。そして実弥から伊黒の友達の鏑丸を譲り受けた事を明かし、2人で鏑丸を可愛がった。
 


―胡蝶カナエ、しのぶとの出会い~カナヲの過去―

【原作】7巻「番外編」
 
カナヲは両親から虐待されて育った。
両親はカナヲが泣くとさらに暴力を振るい、水の中へ沈めた。その行き過ぎた暴力から逃れるために、カナヲは視覚が異常に発達して致命傷を避けていた。動きをよく見ないと、打ちどころが悪く翌日には冷たくなっている兄弟が何人もいたからだ。カナヲはある時期まで痛みや辛さを感じていたが、ある時から糸が切れたように何も感じなくなった。
 
その後、カナヲは人買いに売られてしまう。人買いに連れられて歩いているカナヲを胡蝶カナエと、その妹である胡蝶しのぶが見つける。カナエとしのぶはカナヲを人買いから救って連れ帰った。
 
カナヲは虐待されていたせいで自分で考えて動くことができず、ご飯を出されても食べようとしなかった。そこでカナエはカナヲにコインを渡し、迷った時はコインを投げて決めるようにアドバイスした。その能天気な考えにしのぶは怒ったが、カナエは「きっかけさえあれば人の心は花開くから大丈夫。いつか好きな男の子でもできたらカナヲだって変わるわよ。」と微笑んだ。それからカナヲはカナエとしのぶの妹となり、一緒に暮らすようになった。
 
その後、カナヲは最終選別試験を潜り抜け鬼殺隊に入隊した。カナヲは蝶屋敷でアオイたちのように家事や治療がうまくできなかったため、鬼殺隊に入ることを決めた。カナエとしのぶはそれを認めていなかったが、見様見真似で花の呼吸を習得したカナヲは無断で選抜に参加した。