-竈門 炭治郎-


***ネタバレ知りたくない方はご注意ください*** 



―上弦の参・猗窩座との死闘―

【原作】17巻146話「誇り」~147話「小さな歯車」

炭治郎は義勇と一緒に無限城に落ちた。無限城の中には無数の鬼がおり、炭治郎と義勇はそれを倒しながら無惨の元へ急いだ。その時、轟音を轟かせ、猗窩座が頭上から壁を破壊して現れる。
 
炭治郎は猗窩座の腕を斬り落とし、猗窩座と渡り合った。猗窩座は煉獄の「この少年は弱くない。侮辱するな。」という言葉を思い出した。そして「杏寿郎の言葉は正しかったと認めよう。お前は確かに弱くなかった。敬意を表する。」と言って微笑み、『破壊殺 羅針』という血鬼術を使用し、術式を展開した。猗窩座は術式を展開することで、相対するものの闘気を感じ取って攻撃を察知することができた。

【原作】17巻148話「ぶつかる」

猗窩座は義勇の剣技を褒め称えながらも、義勇を遥か彼方へ蹴り飛ばした。そして炭治郎に襲い掛かった。猗窩座は自身と対等に渡りあう炭治郎を見て「杏寿郎はあの夜死んで良かった。ともするとあれ以上強くならなかったかもしれない。人間のままでいたがるようなくだらぬ価値観を持っていたし。」と言った。

それを聞いた炭治郎は激昂し、「何だと?お前はもう黙れ。煉獄さんのことを喋るな。」と告げた。しかし、猗窩座は「なぜだ?褒めてるんだぞ。俺が嫌いなのは弱者のみ。俺が唾を吐きかけるのは弱者にだけ。そう、弱者には虫唾が走る。反吐が出る。淘汰されるのは自然の摂理に他ならない。」と口にした。

それを聞いた炭治郎は「お前の言っていることは全部間違っている。」と否定した。そして「お前が今そこに居ることがその証明だよ。生まれた時は誰もが弱い赤子だ。誰かに助けてもらわなきゃ生きられない。お前もそうだよ猗窩座。記憶にはないのかもしれないけど、赤ん坊の時のお前は誰かに守られ助けられ、今生きているんだ。強い者は弱い者を助ける。そして弱い者は強くなり、また自分より弱い者を助け守る。これが自然の摂理だ!猗窩座!俺はお前の考え方を許さない!これ以上、お前の好きにはさせない!」と続けた。

【原作】17巻149話「嫌悪感」~150話「気づき」

その言葉を聞いた猗窩座は、炭治郎という人間に嫌悪していた。その時、猗窩座は道着を身につけた男の幻影を見た。

猗窩座は炭治郎に対して怒涛の攻撃を繰り出すが、そこへ義勇が帰ってきて猗窩座の腕を斬りを落とした。義勇の頬には痣が発現していた。義勇の剣技はさらに強力になるが、猗窩座はすぐさまそれに対応した。

その時、炭治郎は伊之助との会話を思い出していた。伊之助は「殺気を出さずに近づけりゃあ気付かれねえ」「そしたら殺せない奴はいねえってな!!」と話していた。炭治郎はどうやってか猗窩座の羅針を破る方法はないかと考えた。

【原作】17巻151話「鈴鳴りの雪月花」~150話「気づき」

そして炭治郎は父親である炭十郎の教えを思い出した――

炭十郎は「体中の血管や筋肉の開く閉じるをまばたきするように速く簡単にこなせるようになる。その時、光明が差す道が開ける。頭の中が透明になると"透き通る世界"が見え始める。しかしこれは力の限り踠いて苦しんだからこそ届いた"領域"」と話していた。

ある夜、炭十郎は炭治郎を起こして外へ連れ出した。炭十郎が向かった先には巨大な熊がいた。炭十郎は「俺の家族に危害を加える者は何人であろうと容赦はしない。警告をきかない場合、命を奪うことにしている。」と告げ、斧で熊の頸を落とした。

炭十郎は熊の頸を落とす際、恐怖も、怯みも、殺気もなかった。炭十郎は炭治郎の方を振り返り、「ちゃんと見たか。」と聞いた。炭治郎は炭十郎が見取り稽古をしていたと気付いた。
 
炭治郎は先ほど一瞬だけ『透き通る世界』に入り、猗窩座の肉体を透かして見ていた。炭治郎はこの力を使って猗窩座を倒すと決意した。

【原作】18巻152話「透き通る世界」

猗窩座は痣を出した義勇を徐々に凌駕し始め、義勇の日輪刀を折った。そして義勇の胸に拳を突き立てようとする。その時、炭治郎が猗窩座の腕を斬り落とした。猗窩座は炭治郎の事を全く察知できていなかった。

猗窩座は今すぐに炭治郎を殺害しなければならないと直感した。そして猗窩座は広範囲に攻撃が及ぶ『終式 青銀乱残光』を繰り出した。義勇は致命傷を避けることがやっとだった。

その攻撃で猗窩座は炭治郎を倒したものだと思っていた。しかし、炭治郎は猗窩座の背後に立っていた。炭治郎は背後から攻撃する事ができたが、猗窩座に「猗窩座!今からお前の頸を切る!」と告げた。

炭治郎が生きていることに気づいた猗窩座は即座に攻撃を仕掛けるが、炭治郎はその攻撃を躱して頸を斬り落とした。

【原作】18巻153話「引かれる」~156話「ありがとう」

しかし、猗窩座はそれでも死なずに炭治郎に攻撃を加えた。炭治郎は猗窩座が無惨と同じく頸が弱点ではなくなろうとしていた。炭治郎は猗窩座の蹴りを受けて失神した。猗窩座はさらに炭治郎に攻撃を加えようとしたが、義勇が猗窩座の前に立ちふさがった。

その時、一人の女性が涙ながらに「狛治さんもうやめて。」と言って猗窩座の手を引いた。
→「猗窩座の過去
猗窩座を引き止めたのは恋雪だった。猗窩座は再生する自身の身体に攻撃を加えた。その時、炭治郎が見た猗窩座の顔は笑っていた。炭治郎は猗窩座から感謝の匂いがする事に気づいた。そして猗窩座は塵となって消えた。



―無惨との邂逅―

【原作】21巻181話「大災」

無惨は珠世の人間になる薬を分解していた。無惨は珠世や周囲に集まってきた鬼殺隊の隊士を殺害した。炭治郎と義勇は無限城を操る鬼・鳴女によって無惨の前に移動させられた。

無惨の姿を見た炭治郎と義勇は怒りの形相を浮かべた。それを見た無惨はしつこい。」と吐き捨てた。そして「お前たちは本当にしつこい。飽き飽きする。心底うんざりした。口を開けば親の仇、子の仇、兄弟の仇と、馬鹿の一つ覚え。お前たちは生き残ったのだからそれで十分だろう。」と続けた。無惨の言い分が全く理解できなかった炭治郎は「お前何を言っているんだ?」と問う。

そして「身内が殺されたから何だと言うのか。自分は幸運だったと思い、元の生活を続ければ済むこと。私に殺されることは大災に遭ったのと同じだと思え。何も難しく考える必要はない。雨が、風が、山が、噴火が、大地の揺れが、どれだけ人を殺そうとも天変地異に復讐しようという者はいない。死んだ人間が生き返ることはないのだ。いつまでもそんな事にこだわっていないで、日銭を稼いで静かに暮らせば良いだろう。殆どの人間がそうしている。何故お前たちはそうしない?理由はひとつ、鬼狩りは異常者の集まりだからだ。異常者の相手は疲れた。いい加減、終わりにしたいのは私の方だ。」と続けた。

それを聞いた炭治郎は「無惨、お前は存在してはいけない生き物だ。」と告げた。

【原作】21巻182話「激怒」~183話「鬩ぎ合い」

無惨は手を刃状に変化させ、それを鞭のように高速で振り回した。その速度は凄まじく、炭治郎は眼で追えずに感覚でしか捉えられなかった。炭治郎は無惨の攻撃を掻い潜って斬りつけようとするが、その瞬間に倒れてしまう。

炭治郎は無惨の攻撃を避けきれておらず、右眼を潰されていた。無惨は倒れている炭治郎に攻撃を加えるが、義勇が炭治郎を助けた。義勇は「間合いを詰めるな!切り込まなくていい!無惨の力は上弦の比ではない!」と言った。それを聞いた無惨は「時間稼ぎ…夜明けまでか?光届かぬこの城の中、柱三人でそれは可能なのか?」と口にした。

炭治郎たちが「柱三人」という言葉の意味を理解できずにいると、無惨は「縞の羽織りの柱と女の柱はすでに私の部下が殺したようだぞ?」と告げた。無惨は上弦の肆である鳴女の視界を見ており、蛇柱の伊黒小芭内と恋柱の甘露寺蜜璃が死亡したのを確認していた。

義勇に抱えられていた炭治郎は、義勇の足手まといにならないように義勇の元から離れた。炭治郎は片眼を潰されたことから匂いを嗅いで状況を把握しようとするが、無惨の攻撃が速すぎて呼吸に詰まってしまう。それにより周囲を把握できずに背後の壁に頭をぶつけてしまう。

そこへ無惨が攻撃を仕掛けるが、その時、小芭内が現れ炭治郎を助けた。さらに蜜璃も現れる。鳴女は愈史郎によって操られており、無惨は愈史郎により偽の光景を見せられていた。愈史郎は鳴女を操って無限城を操作し、無惨を地上へと出した。

【原作】21巻184話「戦線離脱」

地上へと出た炭治郎は、鎹鴉により日の出までまだ1時間半ある事を知らされる。

地上に出された無惨は、背中から刃の触手を出し、さらに苛烈な攻撃を繰り出した。炭治郎や義勇たちは危機に陥るが、それを鬼殺隊の一般隊士が肉壁となって守った。一般隊士たちは「今までどれだけ柱に救われた!柱がいなけりゃとっくの昔に死んでたんだ!臆するな!戦えーっ!」と叫び、無惨に立ち向かった。

炭治郎もそれに続こうとするが、その時、血を吐いて倒れる。鬼殺隊の隊士を次々に返り討ちにしながら無惨は「即死できた者は幸運だ。即死ができなくとも私に傷をつけられた者は終わる。あれを見るがいい。」と言った。無惨の視線の先には、右眼周辺の細胞が変貌して倒れている炭治郎の姿があった。

無惨は「私は攻撃に私自身の血を混ぜる。鬼にはしない。大量の血だ。猛毒と同じ、細胞を破壊して死に至らしめる。竈門炭治郎は死んだ。」と告げた。



―継国縁壱との邂逅―

【原作】21巻186話「古の記憶」~187話「無垢なる人」

炭治郎は気付くとある家の前で薪割りをしていた。炭治郎が状況を掴めずに困惑していると、子供が「とーたん。」と言って炭治郎の足を掴んだ。その子供は何かを指差しており、炭治郎がそちらに目線を向けると、そこには『始まりの剣士』である継国縁壱がいた。炭治郎は自身が見ているのが、先祖である炭吉の記憶である事を理解した。

縁壱は以前に炭吉の一家を助けた事があった。縁壱は誰かに話を聞いてもらいたくて、その時、頭に浮かんだのが炭吉とその妻のすやこの顔だったと話した。そして縁壱は自身の事を語り始めた
 
縁壱は双子の弟として生を受けた。しかし、双子は後継の争いの種になる事で忌み嫌われていた。父親は生まれついて痣があった縁壱の事を気味悪がって殺そうとした。母親が烈火の如く怒って反対した為に縁壱は生かされたが、十歳になると共に出家させられる事になった。縁壱は子供ながらに大人を凌駕する剣技を持っていることが判明したため、当主にされそうになったが、母親が死んですぐに家を出た。
→「継国縁壱の過去と生い立ち

縁壱は寺に行かずに放浪した。その先で『うた』という少女と出会った。うたは流行り病により家族を失い、天涯孤独になっていた。縁壱は孤独なうたと一緒に暮らす事に決めた。それから数年が経ち、縁壱とうたは夫婦となり、子供を授かった。うたの出産日が近づき、縁壱は産婆を呼びに出た。しかし、うずくまる老人を助けた事で時間を取られ、産婆を呼ぶ事なく家に帰った。そこで縁壱が見たのは鬼によりお腹の中の赤子ごと殺されたうたの姿だった。
→「継国縁壱と「うた」との出会い

その後、縁壱は鬼狩りの剣士となった。縁壱は鬼狩りの剣士達に『呼吸』を教えた。鬼狩りの剣士達が使っていた水、炎、風、雷、岩の剣術の型と呼吸を併用することで、剣士達は見違えるように強くなった。それから双子の兄も鬼狩りの剣士となり、縁壱は鬼を倒し続けた。

ある日、縁壱は無惨と出会った。縁壱は無惨と対面した瞬間に、自分が無惨を倒すために生まれてきたことを理解した。縁壱は無惨の身体を透かして見ることで、無惨に七つの心臓、五つの脳がある事を知った。その時、縁壱は『日の呼吸』の型を完成させ、無惨の身体を斬り裂いた。

しかし、無惨は自身の体を無数の肉片に変え、逃亡した。無惨が連れていた鬼・珠世は、縁壱の前に二度と無惨が姿を現さない事を告げた。縁壱は珠世に無惨を討つ手伝いをするように頼み、それを了承した珠世を逃した。
→「鬼舞辻無惨との戦い

その後、縁壱は兄が鬼となった事を聞いた。そして「無惨を倒せなかった事」「珠世を逃した事」「兄が鬼になった事」を咎められ、鬼殺隊を除隊となった。中には縁壱の死を望む剣士さえもいたが、当時の産屋敷家の長によりそれは止められた。
 
縁壱は「私は恐らく鬼舞辻無惨を倒すために特別強く造られて生まれて来たのだと思う。しかし私はしくじった。結局しくじってしまったのだ。私がしくじったせいでこれからもまた多くの人の命が奪われる。心苦しい。」と炭吉に話した。

炭吉はそんな縁壱にかける言葉が見つからなかった。その時、炭吉の子供が縁壱に抱っこをねだった。縁壱は炭吉に言われるままに、子供を高く抱き上げた。すると子供は無邪気に笑った。それを見た縁壱の目からは涙が溢れていた。縁壱はそのまま子供を大事そうに抱きかかえて泣いた。

炭治郎は今も仲間が無惨と戦っている事を分かっていたが、何百年も前に死んだ縁壱の心がほんの少しでも救われる事を願わずにはいられなかった。




―意識を取り戻した炭治郎―

【原作】22巻191話「どちらが鬼か」

柱や善逸たちが戦っている中、炭治郎は愈史郎による治療を受けていた。炭治郎は無惨の血を入れられてから時間が経っていた為に危険な状態で、何本もの薬を投与された。そんな中、鬼殺隊の隊員である村田は炭治郎が握っている日輪刀を取ろうとしていた。しかし、炭治郎は意識がないながらも日輪刀を握り締めて離さなかった。それを見た愈史郎は「戦いに向かう意思がコイツにはまだあるんだろ。」と言った。

その時、炭治郎の脈拍が僅かに戻った。村田たちは必死に炭治郎に呼び掛けた。村田が「無惨が逃げちまうぞ!早く行かなきゃ!」と言うと「ギシ!」という鈍い音が辺りに響いた。それは炭治郎が日輪刀を強く握りしめる音だった。そして炭治郎は意識を取り戻した。

柱や善逸たちは無惨に善戦していた。近くで戦いを見ていた隊員は無惨に勝てるかもしれないという希望を抱いた。その時、轟音が轟き、大きな揺れが起きた。次の瞬間、無惨と戦っていた柱や善逸たちは重傷を負わされて吹き飛ばされ、戦闘不能になっていた。どうやら先ほどの轟音と振動は無惨の攻撃らしかった。

唯一カナヲだけが意識を保っていたが、重傷を負わされた上に日輪刀を折られており、戦うことができなかった。無惨はそんなカナヲに歩み寄って攻撃を仕掛ける。その時、炭治郎が現れ『ヒノカミ神楽 輝輝恩光』を放って無惨の腕を斬り落とした。

炭治郎はカナヲを近くにいた隊員に託し、無惨の方を振り返った。
無惨は、顔の右半分の細胞が変貌した炭治郎を見て「何という醜い姿だ。これではどちらが鬼かわからないな。竈門炭治郎。」と言った。炭治郎は「終わりにしよう。無惨。」と告げた。

「日の呼吸の真髄と十三個めの型」→