-嘴平伊之助-

***ネタバレ知りたくない方はご注意ください*** 

嘴平伊之助の過去
炭治郎・善逸との出会い~鼓屋敷編
那田蜘蛛山での戦い~那谷蜘蛛山編
蝶屋敷での機能回復訓練~柱合会議・蝶屋敷編
魘夢との戦い、猗窩座の襲来~無限列車編
上弦の陸・妓夫太郎/堕姫との戦い~遊郭編
上弦の弐・童磨との戦い~無限城編
無惨との死闘~無限城編

嘴平伊之助(はしびらいのすけ)は、炭治郎らが赴いた鬼殺隊士の最終選別に同じくして立ち向かい、たった五人竈門炭治郎/我妻善逸/栗花落カナヲ/不死川玄弥そして嘴平伊之助だけ生き残った精鋭隊士の一人である。

上半身が裸で、猪の被り物を着用している。被り物をとった素顔は非常に整っており、善逸からは「気持ち悪いやつだな…。むきむきしてるのに女の子みたいな顔が乗っかってる…。」と気味悪がられていた。

刃の欠けた日輪刀を2本使って戦闘を行う。使う呼吸は『獣の呼吸』。伊之助は『育手』による訓練を受けていない為、『獣の呼吸』は自分自身で習得した。

伊之助が頭に装着している猪の被り物は本物の毛皮であり、伊之助の育ての親である猪のもの。また、腰に巻いている毛皮は鹿の、足に身につけている毛皮は熊のものである。

山で育った為に触覚が並外れて鋭く、自身に向けられる感情も感じ取ることができる。特に殺意に対しては敏感で、敵の攻撃を察知することができる。また、身体が異常に柔らかい上に、関節を自在に外すことができる。
 赤ん坊の時に母親から山に捨てられ、猪に育てられた。
その為、女の子を足蹴にする、埋葬の意味を知らない、手掴みでものを食べる、などの行動をとる。話はできるが、文字を読むことができない。

力比べが生き甲斐であり、人の事を「強い」「弱い」で判断する。同期の鬼殺隊の隊員である不死川玄弥が呼吸を使えないのを知った時には「お前呼吸使えねぇのか!雑魚が!」と面と向かって嘲笑い、喧嘩になった。強者には状況問わずに戦いを挑もうとする。
 
名前と誕生日は、捨てられた時に伊之助を包んでいた布に書いてあった。現在はその布をふんどしにして着用している。人の名前を覚えようとせず、その時々によって呼び名が変わる
付き合いが長くなっても関係がなく、炭治郎の事を『かまぼこ権八郎』『豚太郎』『紋次郎』『健太郎』『三太郎』『惣一郎』『炭八郎』、善逸の事を『紋逸』『寝ぼけ丸』『紋壱』と呼んでいた。まともに名前を呼ばれているのは蟲柱である胡蝶しのぶくらいである。

炭治郎たちと出会い、徐々に人間の暖かさを知っていく。



-嘴平伊之助の過去-
 
伊之助は幼少期に母の琴葉に崖から落とされた後、奇跡的に生還しました。
その後なんと伊之助は野生の猪に育てられます。『鬼滅の刃』では、なぜ野生の猪が伊之助を育てたのかはっきりとはしていませんが、解説では自分の子供を亡くしてすぐだったからだと解説されています。炭治郎が出会った頃の伊之助は琴葉のことを忘れており、母親として育ててくれたのは猪だけだと言っていました。
 伊之助は自身が縄張りにしていた山にあった人家に立ち寄るようになり、そこに住んでいた老人に餌を与えられたり、百人一首を読み聞かされた。それにより人の言葉を喋れるようになった。

その家に住む青年・たかはるは、奇妙な生物(猪の被り物をつけた伊之助)に優しくする祖父を批難し、伊之助を追い払った。しかし伊之助は「シッシシッシうるせぇんだよ!こんのタコ助が!」と言ってたかはるを蹴りつけ、その家に我が物顔で出入りするようになった。
その後、自身の縄張りの山に一人の鬼殺隊の隊員が訪れ、伊之助は力比べの末に日輪刀を奪い取った。そして『鬼殺隊』『鬼』の存在を知り、強者と戦う為に鬼殺隊の最終選別試験へと参加した。そして最終選別試験を無事に通過し鬼殺隊となった。伊之助は合格後すぐに下山しており、炭治郎とは顔を合わせていなかった。



-炭治郎・善逸との出会い
~立志編/鼓屋敷~
 
伊之助は元下弦の鬼である響凱のいる屋敷に乗り込む。
――そこで炭治郎と善逸と遭遇する。


伊之助は響凱と戦う中で、屋敷に入り込んでいた女の子を踏みつけにする。それを見た炭治郎は伊之助を投げて「こんな小さい子を踏むなんてどういうつもりだ!」と叱りつけた。

すると伊之助は「アハハハハ!いいねいいね!いい投げ技だ!人間に投げ飛ばされたのは初めてだぜ!」と言い、炭治郎に斬りかかった。伊之助は、響凱と炭治郎を相手取るが、血鬼術により別の部屋に飛ばされる。

伊之助は響凱を求めて屋敷を走り回り、その途中で出会った鬼を一瞬で仕留めた。その後、響凱は炭治郎が倒した。
屋敷から出た伊之助は禰󠄀豆子が入った箱を見つけ、中から鬼の気配がする事に気づく。伊之助は禰󠄀豆子を殺害しようとするが、善逸がそれを阻止する為に立ちふさがった。伊之助は箱を守ろうとする善逸を容赦なく殴りつけた。

そしてその光景を見て激怒した炭治郎に肋を折られる。しかし、それでも伊之助は止まらず、炭治郎と戦闘を続ける。伊之助は人並み外れた柔軟性を生かして戦い炭治郎を圧倒するが、炭治郎の頭突きにより失神する。
その後、しばらくして気が付いた伊之助はすぐさま「勝負勝負ゥ!」と騒ぎ出す。その時、炭治郎たちは亡くなった人達を埋葬しており、伊之助はそれを手伝うように言われる。しかし伊之助は「生き物の死骸なんて埋めて何の意味がある!そんなことより俺と戦え!」と言って拒否した。
その後、炭治郎の「傷が痛むからできないんだな?」という言葉に反感を抱き「俺が誰よりも埋めてやるわ!」と言って埋葬を手伝った。

その後、負傷した伊之助は炭治郎たちと共に療養する。その時にお婆さんに優しくされた事でホワホワとした温かい気持ちになる。その後、伊之助は炭治郎、善逸と行動をともにするようになる。



-那田蜘蛛山での戦い-

~立志編/那谷蜘蛛山~
 
伊之助は炭治郎たちと共に下弦の伍である累が住処にしている那田蜘蛛山へと向かう。

炭治郎と伊之助が山に入ると、『母』の鬼により鬼殺隊の隊員が糸で操られていた。伊之助は並み外れた触覚を活かし、空気の揺らぎから人間を操っている『母』の鬼の居場所を突き止めた。

『母』の鬼の元へ向かう途中、巨大な鬼の死骸が差し向けられる。伊之助は糸で動きを封じられて死を覚悟するが、炭治郎によって助けられる。
そして炭治郎と協力して巨大な鬼を倒した。伊之助は自身を助けた炭治郎と張り合い、炭治郎を『母』の鬼のもとへ放り投げた。それにより『母』の鬼は倒された。
その後、山を進む炭治郎と伊之助は『父』の鬼と遭遇する。
『父』の鬼は強靭な皮膚と腕力を持っており、炭治郎と伊之助は苦戦する。そして炭治郎が『父』の鬼に吹き飛ばされ、伊之助は一人で戦うことになる。

伊之助の攻撃では皮膚で刀が止まり、『父』の鬼にダメージを与えることができなかった。伊之助は炭治郎が戻るまで時間稼ぎをしようかと一瞬考えるが、「なんじゃあその考え方ァ!ふざけんじゃねーぞォ!」と思い直し、『父』の鬼に立ち向かっていった。そして伊之助は2本の日輪刀を打ち付けることで、『父』の鬼の腕を両断した。

すると『父』の鬼は逃走し、木の上で脱皮した。『父』の鬼の皮膚はさらに強靭になっており、伊之助の日輪刀は折れてしまう。伊之助は『父』の鬼に首を締め上げられ絶体絶命となる。
その時、伊之助は走馬灯を見る。その走馬灯では、血塗れの女性が涙を流しながら「ごめんね。ごめんね伊之助。」と謝り、赤ん坊の伊之助を崖から落としていた。伊之助にはそれが誰なのかわからなかった。
そこへ水柱の冨岡義勇が現れ、あっさりと『父』の鬼を倒した。伊之助は、自身が倒すことができなかった鬼を難なく倒した義勇の強さに驚嘆する。そして伊之助は義勇に戦いを挑むが、義勇は「修行し直せ戯け者!」と言って一瞬のうちに伊之助を縄で縛り上げた。その後、累は炭治郎と義勇が倒し、伊之助は応援部隊に回収された。



-蝶屋敷での機能回復訓練-

~立志編/柱合会議・蝶屋敷編~
 
伊之助は那田蜘蛛山の戦いで『蝶屋敷-蟲柱・胡蝶しのぶが所有する医療施設-』へと運ばれる。

伊之助は先の戦闘での不甲斐なさからすっかり自信をなくしていた。しかし炭治郎と善逸に「がんばれ伊之助がんばれ!」「お前は頑張ったって!」と毎日励まされることで立ち直った。

それからリハビリである『機能回復訓練』を行うが、同期の鬼殺隊の剣士である栗花落カナヲに全く敵わず、ふて腐れて徐々に訓練を休むようになる。その中で炭治郎だけが諦めず、『全集中の呼吸・常中』を体得して機能回復訓練をパスする。

伊之助はそれに焦り、しのぶに「まぁできて当然ですけれども。仕方ないです。できないなら。しょうがないしょうがない。」と煽られたことが決定打となり、訓練を再開する。

そして伊之助も『全集中の呼吸・常中』を体得し、機能回復訓練を終えた――。



-下弦の壱・魘夢との戦い、     
     上弦の参・猗窩座の襲来-

~無 限 列 車 編~
 
その後、伊之助は炭治郎たちと共に下弦の壱・魘夢が潜む『無限列車』へと乗り込む。無限列車には炎柱・煉獄杏寿郎がいた。

魘夢は対象を眠らせ、自在に夢を見せる力を持っていた。伊之助たちは魘夢の血鬼術により眠らされ夢を見せられていた。魘夢は人間に幸せな夢を見させることを条件に、伊之助たちの精神世界に潜り込ませ、そこに存在する『精神の核』を破壊させて廃人にしようとしていた。

魘夢は無限列車そのものと同化し、乗客全てを喰おうとしていた。禰󠄀豆子の血鬼術により眠りから覚めた伊之助と炭治郎は、煉獄、善逸、禰󠄀豆子に乗客を任せ、一緒に魘夢を倒しに向かった。

伊之助と炭治郎は、気配と臭いから先頭車両に魘夢がいると思い、前方へ向かった。魘夢は列車と融合していた為、魘夢の眼がそこら中にあった。魘夢は自身の眼を見た者を眠らせる血鬼術を持っていた。

炭治郎はその力によって眠らせられるが、伊之助は猪の被り物を付けている為に眠らなかった。伊之助は炭治郎と力を合わせ、魘夢の頸の骨を絶った。

魘夢を倒し、一同が一息ついている時に上弦の参である猗窩座が襲来する。煉獄が猗窩座と戦い始めるが、無限の体力で、傷を即座に癒す猗窩座に徐々に押され始める。

伊之助は二人の戦いを見て「隙がねぇ。入れねぇ。動きの速さについていけねぇ。あの二人の周囲は異次元だ。間合いに入れば"死"しか無いのを肌で感じる。助太刀に入ったところで足手まといでしかないとわかるから動けねぇ。」と感じていた。

そして煉獄は猗窩座に胸を突き刺される。しかし煉獄はその状態で猗窩座の頸に日輪刀を振るった。猗窩座は咄嗟に逃げようとするが、煉獄は筋肉を引き締め、猗窩座を逃さなかった。それに応じて炭治郎と伊之助が動く。しかし、猗窩座は自ら腕を切り離して逃亡した。


自身の死を悟った煉獄は「――竈門少年、猪頭少年、黄色い少年、もっともっと成長しろ。そして今度は君たちが鬼殺隊を支える柱となるのだ。俺は信じる。君たちを信じる。」と炭治郎と伊之助に話した。そして笑顔で命を落とした。

炭治郎は「悔しいなぁ。何か一つできるようになっても、またすぐ目の前に分厚い壁があるんだ。すごい人はもっとずっと先のところで戦っているのに、俺はまだそこにいけない。こんなところでつまずいてるような俺は…俺は…煉獄さんみたいになれるのかなぁ…。」と悔いた。

それを聞いた伊之助は「弱気なこと言ってんじゃねぇ!なれるかなれねぇかなんてくだらねぇこと言うんじゃねぇ!信じると言われたなら、それに応えること以外考えんじゃねぇ!死んだ生き物は土に還るだけなんだよ!べそべそしたって戻ってきやしねぇんだよ!悔しくても泣くんじゃねえ!どんなに惨めでも、恥ずかしくても、生きてかなきゃならねえんだぞ!」と叫んだ。

伊之助の被り物からは涙が溢れ出ていた。



-上弦の陸・妓夫太郎/堕姫との戦い-

~遊 郭 編~
 
伊之助、炭治郎、善逸は音柱・宇髄天元と鬼が潜んでいると思われる吉原に向かう。伊之助たちは鬼を見つけ出すために、女装して遊郭に潜入させられた。

吉原には上弦の陸・堕姫が潜んでいた。堕姫は帯を操る鬼で、吉原に作った抜け穴から帯を移動させ、女たちを捕えていた。伊之助は気配からその帯の存在に気付いた。抜け穴は頭しか入らないほどに狭かったが、伊之助は全身の関節を外して穴の中に侵入した。

そこには前もって潜入してた宇髄の妻や、堕姫と接触して捕らえられた善逸が帯の中に閉じ込められていた。伊之助は帯からの攻撃を避け、捕らわれていた者たちを救い出した。善逸や宇髄の妻たちも戦いに参戦し、さらにそこに宇髄も現れて帯を切り刻んだ。一同は堕姫と戦っている炭治郎の元へ向かう。
宇髄は伊之助たちよりも早く炭治郎の元へたどり着いた。宇髄はあっけなく堕姫の頸を落としていた。

しかし、堕姫の身体の中から妓夫太郎という鬼が現れる。上弦の陸は堕姫と妓夫太郎の2匹からなる鬼だった。堕姫と妓夫太郎は同時に頸を落とさなければ死ぬことはなかった。妓夫太郎は炭治郎と宇髄が相手することになり、伊之助と善逸は堕姫と戦う。

堕姫と戦い始めた伊之助たちだったが、堕姫の帯の攻撃に加え、妓夫太郎から無数の血の斬撃が飛んでくることにより苦戦していた。妓夫太郎の血の斬撃には猛毒が含まれており、伊之助はその危うさを肌で感じていた。
伊之助たちが四苦八苦しているところに、炭治郎が吹き飛ばされてくる。そこでまずは三人で堕姫を狙う事にした。堕姫の頸は帯のように柔軟なために簡単には斬れなかったが、伊之助の二刀流で複数の方向から挟むようにして斬り落とされた。

伊之助は妓夫太郎の頸が落とされるまで堕姫の頸を抱えて逃走しようとするが、背後に妓夫太郎が迫っており胸を串刺しにされる。
宇髄は妓夫太郎に敗れ倒れていた。その後、炭治郎や善逸は建物の倒壊に巻き込まれ、絶体絶命となってしまう。
しかし、炭治郎は諦めることなく、鬼に有効な藤の花の毒が付いたクナイを妓夫太郎に刺し、妓夫太郎の首を落とそうとする。それに合わせ宇髄が炭治郎をサポートした。堕姫がそれを止めようとするが、善逸が堕姫の頸に迫ろうとする。

伊之助も同時に復活し、堕姫の頸に斬りかかった。伊之助は柔軟な身体を活かし、内臓をずらして妓夫太郎の攻撃から致命傷を避けていた。そうして堕姫と妓夫太郎は同時に頸を落とされた。

伊之助は妓夫太郎の攻撃により猛毒に侵され、死の淵に立っていたが、禰󠄀豆子の血鬼術により毒は燃やし飛ばされた。



-上弦の弐・童磨との戦い-

~無 限 城 編~
 
刀鍛冶の里へと向かった炭治郎は、そこで上弦の肆である半天狗と、上弦の伍である玉壺を倒した。その戦いにより禰󠄀豆子が太陽を克服する。

鬼の首魁である鬼舞辻無惨は、太陽の克服を目的としているために禰󠄀豆子の奪取に全力を尽くすことが予測された。それに備え、鬼殺隊では柱による訓練『柱稽古』が実施された。

その最中、鬼殺隊の長である産屋敷耀哉の元へ無惨が現れる。耀哉は家族を犠牲にして自爆し、無惨にダメージを与えた。そこに炭治郎や柱が駆け付けるが、一同は『無限城』という異空間に落とされてしまう。
伊之助と同期の鬼殺隊士である栗花落カナヲは、上弦の弐である童磨と戦っていた。カナヲは童磨に日輪刀を奪われ、絶体絶命となっていた。そこに天井を破壊して伊之助が現れ、カナヲの危機を救った。

カナヲは童磨との戦いでボロボロになっていた。それを見た伊之助は「おまっ…ボロボロじゃねーか!何してんだ!怪我したらお前アレだぞ!しのぶが怒るぞ!すげー怒るからなアイツ!」と言った。するとカナヲは今にも泣きそうな顔をした。しのぶはカナヲの前に童磨と戦い、童磨に喰われていた。

死んだのか?しのぶ。」と伊之助がカナヲに聞くと、童磨が「まさか!死んでないよ。彼女は俺の中で永遠に生き続ける。俺が喰った人は皆そうだよ。救われてる。もう苦しくない、つらくもない。俺の体の一部になって幸せだよ。」とのたまった。伊之助はしのぶに手当てして貰っていたことを思い出していた。そして伊之助は「咬み殺してやる塵が。」と告げた。
伊之助は童磨と戦いを始める。
童磨は伊之助の戦いを見て「アッハハ!滅茶苦茶な技だな!刃毀れした刀に変な太刀筋。それで成立してるんだから。ほんと面白い!」と評した。

伊之助はその一瞬の斬り合いの中で、カナヲの日輪刀を取り返していた。童磨はそんな伊之助の事を褒めていたが、伊之助に気付かれずに猪の被り物を奪った。そして伊之助の素顔を見た童磨は「あれー?何か見覚えあるぞぉ。君の顔。」と笑顔で告げた。

ある日、『万世極楽教』に赤ん坊を連れた琴葉という女性がやって来た。琴葉は夫や姑から暴力を振るわれ、そこから逃げ出した末に『万世極楽教』へと辿り着いた。その赤ん坊こそが伊之助だった。

童磨は琴葉を殺さないつもりだったが、勘の鋭い琴葉は童磨の正体に気づいてしまった。それにより童磨に追われ、琴葉は生きてくれる事を願って伊之助を崖から投げた

尚、琴葉が家を飛び出した理由は夫が泣いている伊之助のことをうるさいと言い、乱暴に揺らしたからである。琴葉は雪の降る中、裸足で極楽教の寺院に駆け込んだ。その後を追って夫と姑が寺院に乗り込んできたが、童磨によって殺され山に捨てられている。
童磨は「骨まで残さず喰べてあげたよ!家に戻っても旦那に殴られるし、一人じゃ何もできないから母子で野垂れ死だし。不幸だよねぇ琴葉。幸せな時ってあったのかな?何の意味もない人生だった。」と笑顔で言い放った。

それを聞いた伊之助は母親の事を思い出した。伊之助はずっと前にしのぶに会ったことがあるような気がしていた。しかし、それはしのぶではなかった。伊之助はしのぶに母親の面影を見ていたのだった。

伊之助は「本当に奇跡だぜ。この巡り合わせは。俺の母親と仲間を殺した鬼が目の前にいるなんてなァア!謝意を述べるぜ!思い出させてくれたこと!ただ頸を斬るだけじゃ足りねぇ!テメェには地獄を見せてやる!」と叫んだ。
伊之助はカナヲと一緒に童磨を攻撃するが、童磨は血鬼術『結晶ノ御子』を使用する。『結晶ノ御子』は小さな童磨の形をした氷の人形を作り出す血鬼術で、御子は童磨と遜色ない血鬼術を自在に使うことができた。

伊之助とカナヲは御子を相手にするのがやっとで、童磨を狙う暇もなかった。さらに童磨は5体の御子を追加し、無限城に入ってきた鬼殺隊の隊員を殺そうとした。
その時、童磨の身体が突然溶け始めた。しのぶは自身が使う毒が上弦の鬼に通じない事を知っていた。そこでしのぶは毒を摂取し続け、自身を毒の塊へと変えていた。しのぶは自らを喰わせて童磨を倒そうとしていた。

しのぶの毒が効き始めた事を悟ったカナヲは伊之助と一緒に童磨を攻め立てる。しかし童磨は『霧氷・睡蓮菩薩』という血鬼術で巨大な氷の菩薩像を作り出した。伊之助はその菩薩像に掴まれて身動きが取れなくなってしまう。

その時、カナヲは『花の呼吸 終ノ型 彼岸朱眼』を使用する。『花の呼吸 終ノ型 彼岸朱眼』は周囲がスローモーションに見えるほど動体視力を引き上げることができるが、その後、失明してしまうという技であった。

カナヲは菩薩像を駆け上がり、童磨の頸に日輪刀を振り下ろした。しかし、背後から菩薩像に冷気を吹き付けられ、頸の途中で日輪刀が止まる。しかし、そこへ伊之助が日輪刀を投げ、カナヲの刀を押し込んだ。それにより童磨の頸は落とされた

伊之助は塵となって消え去る童磨を踏みにじり「仇は討ったぜ!ワーハハハハ!」と勝ち誇っていたが、疲労困憊で倒れてしまう。
その時、伊之助は炭治郎たちとの会話を思い出した。伊之助は炭治郎に「誰にでもいるよお母さんは。」と言われていた。それに対し伊之助は「だったら俺は捨て子だ。母親は俺がいらなかったんだ。」と返した。そんな伊之助に炭治郎は「そんなふうに言わないであげてくれよ伊之助。伊之助のお母さんはきっと、伊之助のことが大好きだったと思うよ。」と話した。
伊之助は母親のことを思い出して涙を流し、「母ちゃん…。」と呟いた。

 

-無 惨 と の 死 闘-

~無 限 城 編~
その後、伊之助たちは善逸と合流した。そして愈史郎の札を身につけて姿を消し、柱と無惨の戦いに参戦する。無惨は即座に姿が見えない人間がいる事に気付き、攻撃を放って伊之助たちが付けている札を斬り裂いた。柱たちは伊之助たちが参戦した事で多少余裕が生まれる。

柱たちはその隙に赫刀を顕現させて無惨を攻撃した。伊之助はそれを見て自身も赫刀を出したいと発言するが、カナヲに「そんなに簡単にできるものじゃないから!」と咎められた。その時、無惨が轟音と大きな振動を引き起こして攻撃する。それにより、伊之助だけではなく、柱たちも戦闘不能となってしまった。

その後、炭治郎と伊黒が無惨と死闘を繰り広げる。無惨は珠世の薬により体力の限界を迎えており、血鬼術により炭治郎と伊黒の動きを封じて逃走しようとしていた。意識を取り戻した伊之助は、そんな無惨に斬りかかる。

無惨と向き合った伊之助は「よくもやってくれたなぁ。許さねぇ。俺たちを庇って数珠のオッサンの足と、半々羽織りの腕が千切れた。あっちこっちに転がっている死体は一緒に飯を食った仲間だ。返せよ、足も手も命も全部返せ。それができないなら百万回死んで償え!」と涙ながらに話し、再び無惨に斬りかかった。

無惨は腕を地中から伸ばして伊之助を捕らえるが、善逸がそれを助ける。伊之助と善逸は互いにフォローし合いながら戦いを続けた。そこに炭治郎も加わり、無惨を逃さないように休む事なく攻撃を加えた。

炭治郎は『日の呼吸 陽華突』を繰り出し、無惨に日輪刀を突き立てて壁に押し当てる。無惨は逃れようとして炭治郎に攻撃を加えるが、伊黒、甘露寺、実弥が現れ、無惨の動きを封じた。その時、遂に夜が明けた。
【原作】23巻第197話「執念」
太陽に顔を灼かれた無惨は自身の肉体を守るために肉の鎧によって瞬時に膨れ上がり、巨大な赤ん坊の姿になった。炭治郎は近くにいた義勇を突き飛ばし、ただ一人赤ん坊の肉の中に呑まれてしまう

赤ん坊が日に灼かれながらも逃走を始めると、生き残っていた鬼殺隊の隊士や柱たちはそれを食い止めようとして闘った。しかし、赤ん坊は止まらず地中に潜って逃げようとする。その時、赤ん坊の中にいた炭治郎が日輪刀を握った。赤ん坊は血を流して絶叫すると、太陽に灼かれて消滅した。
【原作】23巻第199話「千年の夜明け」
鬼殺隊の隊士たちは無惨の消滅に歓喜の声をあげた。そしてすぐに負傷者たちの治療が行われた。
伊之助の手当をしていた隊士は「いってえ〜っ!猪に噛まれたあ!」「めっちゃ元気コイツ!」「やばいやばい吐血した!死にそう!」と大騒ぎしていた。


そんな時、義勇が声を上げる。義勇は「動ける者ーっ!武器を取って集まれーっ!炭治郎が鬼にされた!太陽の下に固定して焼き殺す!人を殺す前に炭治郎を殺せ!」と叫んでいた。
無惨は死ぬ間際、全ての血と力を注ぎ込んで炭治郎を鬼にし、鬼殺隊を滅ぼさせようとしていたのだった。義勇は太陽で炭治郎を灼き殺そうとするが、炭治郎は太陽を克服し、陽光灼けを止めて義勇を攻撃する。

そこに現れた伊之助は「何してんだーっ!」と言って炭治郎の攻撃を弾いた。伊之助は「半々羽織り(義勇)だぞ!仲間だぞ!」と呼びかけるが、炭治郎は完全に理性を失っており伊之助に攻撃を仕掛ける。

その時、伊之助は炭治郎の言葉を思い出していた。柱稽古をしている時、炭治郎は「俺たちは仲間だからさ、兄弟みたいなものだからさ、誰かが道を踏み外しそうになったら皆で止めような。どんなに苦しくても、つらくても、正しい道を歩こう。」と話していた。

伊之助は炭治郎に刀を振るうが、その時「伊之助、これも食べていいよ。」と言って笑う炭治郎を思い出し、「斬れねえ。だめだ炭治郎。できねえ。」と言って涙を零した。
【原作】23巻第201話「鬼の王」
その時カナヲが現れ、炭治郎の攻撃を受けながらも、鬼を人間に戻す薬を投薬することに成功する。カナヲはしのぶからその薬を託されていたのだった。
【原作】23巻第202話「帰ろう」

その薬によって炭治郎は人間へと戻り、意識を取り戻す。伊之助は「お前にやられた傷なんか…たいしたこと…ねえぜ…。」と話し、わんわん泣きながら炭治郎にしがみついた。