-鬼舞辻無惨-

***ネタバレ知りたくない方はご注意ください*** 


 

-産屋敷邸襲撃-

【原作】12巻98話「上弦集結」
上弦の陸である妓夫太郎と堕姫が炭治郎たちが倒した時には、上弦の鬼たちを招集した。

そして「くだらぬ。人間の部分を多く残していた者から負けていく。だがもうそれもいい。私はお前たちに期待しない。産屋敷一族をいまだに葬っていない"青い彼岸花"はどうした?なぜ何百年も 見つけられぬ。私はー…貴様らの存在理由がわからなくなってきた。」と言い放った。

それぞれの上弦の鬼が謝罪を述べる中で、上弦の伍である玉壺が「無惨様!私は違います!!貴方様の望みに一歩近づくための情報を私は掴みました!」と弁明するが、次の瞬間、無惨に首を刎ねられた。

そして「私が嫌いなものは"変化"だ。状況の変化、肉体の変化、感情の変化。あらゆる変化は殆どの場合"劣化"だ。衰えなのだ。私が好きなものは"不変"。完璧な状態で永遠に変わらないこと。百十三年振りに上弦を殺されて私は不快の絶頂だ。まだ確定していない情報を嬉々として伝えようとするな」と告げた。

無惨は「これからはもっと死に物狂いでやった方がいい。私は上弦だからという理由でお前たちを甘やかしすぎたようだ」と言い、玉壺と上弦の肆である半天狗を刀鍛冶の里へと送った。
→「刀鍛冶の里編



【原作】16巻137話「不滅」
刀鍛冶の里の戦いで半天狗と玉壺は敗北したが、その戦いで禰󠄀豆子が太陽を克服する。それを知った無惨は歓喜の表情を見せる。そして無惨は禰󠄀豆子を喰う事で太陽を克服しようとする。

その後、無惨は半天狗に変わって上弦の肆となった鳴女の能力により、ほとんどの鬼狩りの居場所と禰󠄀豆子の場所を補足する。そして単独で産屋敷邸に姿を現す。→【原作】16巻136話「動く」

その時――
無惨が平安時代に産まれた事、
産屋敷一族である事、
生まれつき体が弱くそれを治すための薬で鬼になった事、
無惨が死ねば全ての鬼が滅ぶ事 が明かされた。



【原作】16巻138話「急転」
病により、今にも死にそうになっている産屋敷耀哉を無惨は殺そうとするが、耀哉は無惨が来る事を悟っており罠を用意していた。耀哉は妻や自身の子供を巻き添えにして屋敷を爆破した。

それにより無惨は体の多くを破損する。そこへかつて無惨の呪いを解いた鬼・珠世が現れる。珠世は血鬼術により無惨の動きを封じ、自身が作り出した『鬼を人間にする薬』を無惨へ投与する。

そしてそこへ耀哉から罠の事を聞いていた岩柱の悲鳴嶼行冥が訪れる。悲鳴嶼は日輪刀で無惨の首を落とすが、無惨は日光でしか死ぬ事がなかった。

そして次々と柱や炭治郎たちが駆けつけ戦おうとするが、そこへ鳴女が現れ、鬼殺隊士たちを異空間である『無限城』へと落とした。無惨は珠世と共に肉の球の中へ閉じこもって薬を分解しようとする。



―鬼殺隊との戦い―

【原作】21巻180話「恢復」
柱や炭治郎たちの奮闘により、殆どの上弦の鬼が倒される。しかし、柱たちが到達する前に、無惨は復活してしまう。肉の球から出た無惨は、髪が白色になり、身体中に口がある異形の姿になっていた。

無惨の周りには一般隊士が多数いたが、一瞬のうちにその全てを惨殺して喰らった。無惨の手には頭だけとなった珠世の姿があった。結局、珠世の薬は無惨には効いていないようだった。

珠世は「お前…は…今日…必ず…地獄に堕ち…る…」と声を絞り出した。そんな珠世に無惨は「今まで何百もの人間が私にその言葉を吐き散らかしたが、それが叶うことは決して無かった。気の毒なことだ」と吐き捨てた。珠世は「私の…夫…と…子供を…かえ…せ…」と涙ながらに訴えたが、無惨は「ならばすぐさま死んで己が殺した身内の元へ行くがいい」と返して珠世の頭を潰して殺害した。

そして無惨は無限城に入ってきた鬼殺隊士を虐殺し始め、「もういい。誰も彼も役には立たなかった。鬼狩りは今夜潰す。私がこれから皆殺しにする」と宣言した。



【原作】21巻181話「大災」
鳴女が無限城を操作した事により、炭治郎と義勇が無惨の元へと送られる。無惨の姿を目にした炭治郎と義勇は、これまでに命を落としてきた者たちの姿を思い浮かべ、怒りを隠すことができなかった。

そんな二人を見て無惨は「しつこい」と吐き捨てた。そして「お前たちは本当にしつこい。飽き飽きする。心底うんざりした。口を開けば親の仇、子の仇、兄弟の仇と、馬鹿の一つ覚え。お前たちは生き残ったのだからそれで十分だろう」と続けた。

無惨の言い分が全く理解できなかった炭治郎は「お前何を言っているんだ?」と問う。あまりにも身勝手かつ傲慢なその物言いを聞いた炭治郎は、かつてない怒りに身を震わせながら「無惨、お前は存在してはいけない生き物だ」と告げた。



【原作】21巻182話「激怒」
無惨は自身の手を刃状に変え、鞭のように伸縮させて炭治郎と義勇を攻撃する。無惨の攻撃の速度は凄まじく、炭治郎は感覚でかろうじて避けている状態だった。炭治郎は攻撃を掻い潜って攻撃しようとするが、無惨は炭治郎の右眼を潰した。

無惨は頸を斬られても死なないため、炭治郎たちは夜明けまで時間を稼ごうとする。すると無惨は「時間稼ぎ…夜明けまでか?光届かぬこの城の中、柱三人でそれは可能なのか?」と言った。
「柱三人」という言葉に炭治郎と義勇は疑問を抱く。すると無惨は「縞の羽織りの柱と女の柱はすでに私の部下が殺したようだぞ?」と告げた。無惨は上弦の肆である鳴女の視界を見ており、鳴女が蛇柱の伊黒小芭内と恋柱の甘露寺蜜璃を殺害したのを知っていた。

無惨はさらに攻撃を加え、炭治郎は匂いを嗅ぎ分けて状況を把握しようとするが、あまりにも攻撃が早すぎた為に匂いを嗅げず、息が詰まってしまう。炭治郎は壁に頭をぶつけてしまい、無惨は動きが止まった炭治郎に攻撃を加える。

その時、背後から蜜璃が現れて無惨に斬りかかる。炭治郎は伊黒によって助けられていた。死んだはずの柱が現れた事に激昂した無惨は「何をしている鳴女!」と叫んだ。鳴女は珠世が作り出した鬼・愈史郎により操られていた。

愈史郎は「何をしているかだって?操っているんだよ。この女の視界を」と言った。そして「無惨お前はこの世で最も重い罪を犯した。俺から珠世様を奪ったこと、後悔して跪け!今からお前を地上へ叩き出してやる!」と涙ながらに叫んだ。
 


【原作】21巻183話「鬩ぎ合い」
無惨は鳴女を通して愈史郎の細胞を吸収して殺害しようとする。しかし、義勇と小芭内が無惨を攻撃してそれを妨害した。それにより愈史郎は無惨の侵食を押し返した。

無惨はそこで鳴女の細胞を破壊して殺害した。しかし愈史郎は鳴女の細胞が死滅する前に無限城を操作して無惨を地上へ出すことへ成功した。
 


【原作】21巻184話「戦線離脱」
無惨たちが現れた場所は市街地だった。夜明けまではまだ1時間半もあり、炭治郎たちはそれまで無惨を地上に引き留めなければならなかった。

無惨は「ほう。夜明けまで私をこの場に留めるつもりか。やれるものならやってみろ!」と言い放ち、背中から刃の触手を生やしてさらに苛烈な攻撃を繰り出した。

義勇、蜜璃、小芭内はその攻撃を掻い潜って刃を振るう。完全に日輪刀が無惨の身体を斬り裂いたが、無惨はその瞬間に傷を修復した。その早すぎる再生速度に義勇たちは無惨を切断することさえもできなかった。

無惨は自身に近づいてきた義勇たちに反撃を加える。しかし、側にいた鬼殺隊の一般隊士が肉壁となって義勇たちを守った。鬼殺隊の隊士たちは、無惨に対抗できる柱たちを守ろうと、次々に無惨に立ち向かい、無惨はそれを返り討ちにした。

無惨は「即死できた者は幸運だ。即死ができなくとも私に傷をつけられた者は終わる。あれを見るがいい」と義勇たちに言った。義勇たちが周囲に視線を向けると、そこには右眼が変形し、血を吐いて倒れる炭治郎の姿があった。

無惨は「私は攻撃に私自身の血を混ぜる。鬼にはしない。大量の血だ。猛毒と同じ、細胞を破壊して死に至らしめる。竈門炭治郎は死んだ」と告げた。
 


【原作】21巻185話「匂いのない世界」
 →禰豆子匂いのない世界
その後も無惨は柱たちと死闘を繰り広げ、傷を負わせた。甘露寺は一瞬の痛みに足が止まり、無惨はその隙をに攻撃を仕掛ける。その時、悲鳴嶼が現れ、甘露寺への攻撃を防いだ。また無惨の背後には実弥がいた。実弥は無惨に火をつけ「ブチ殺してやる。この塵屑野郎」と吐き捨てた。
 


【原作】21巻187話「無垢なる人」
→縁壱「古の記憶」【原作】21巻186話
→縁壱「無垢なる人」【原作】21巻187話
→炭治郎回想「無垢なる人」【原作】21巻187話
  


【原作】22巻188話「悲痛な恋情」
柱が集結したが、無惨の攻撃のスピードはさらに上がる。柱たちは運よく重傷を避けれている状態だった。その時、無惨の身体に多数付いている口が吸息を始める。その凄まじい吸い込みにより、甘露寺は身体を引き寄せられ、避けたと思った攻撃にあたって重傷を負った。それにより甘露寺は戦線離脱した。その吸息により、柱たちは大幅に無惨の攻撃を避けなければならず、通常の何倍も体力を削られた。
 


【原作】22巻189話「心強い仲間」
柱たちは徐々に傷を負い、身体の細胞が変化を始めていた。無惨は「予想以上に粘ってはいるが、もう間もなく全員が潰れる。夜明けまで一時間十四分。細胞が破壊され死ぬまでもう五分とかかるまい。踠いても踠いても結局終わる人間は」と勝利を確信した。

その時、一匹の猫が現れ、背中から注射のようなものを射出して柱たちに突き刺した。その注射の中に入っていた物は無惨の血に対抗する血清であり、柱たちの細胞が元に戻った。

無惨は「またあの女…珠世の差し金か。私の細胞破壊を止める血清のようなものまで…。無駄な足掻きをするな!潔く死ね亡者共!」と激昂し、更なる攻撃を放った。その時、伊黒が赫刀を顕現させた。
 


【原作】22巻190話「ぞくぞくと」
しかし、伊黒は渾身の力を使って赫刀を出した為、酸欠で失神しそうになっていた。無惨は伊黒に攻撃を仕掛けるが、伊黒は宙に飛んで攻撃をかわしていた。無惨は追撃するも、奇妙な動きで伊黒はそれを避けた。

無惨がそれを不審に思った時、自身の腕が奇妙な太刀筋で切断されている事に気付く。無惨は音や土埃から、3人の姿が見えない人間が周囲にいる事に気付いた。無惨が何もないところを攻撃すると、そこに善逸・伊之助・カナヲが現れた。

善逸たちは愈史郎の札を貼る事により、姿を見えなくしていた。無惨が善逸たちに気を取られている隙に伊黒が無惨を斬りつける。赫刀で斬られた無惨は、明らかに再生速度が鈍っていた。善逸たちが来た事で無惨の攻撃は分散し、その隙に悲鳴嶼は自身の日輪刀の斧と鉄球を衝突させた。

その衝撃と熱により、悲鳴嶼も日輪刀を赫刀に変えた。加えて実弥と義勇も互いの日輪刀を打ちつけて赫刀を顕現させた。
 


【原作】22巻191話「どちらが鬼か」
善逸たちが戦いに加わった上に、柱たちが赫刀を顕現させた事で無惨は時間を稼がれていた。更に悲鳴嶼が『透き通る世界』を使った事により、複数の脳と心臓を持っている事を知られた。

伊黒も『透き通る世界』が使える様になり、悲鳴嶼と共に無惨の脳と心臓を狙おうとした。その時、無惨は轟音と大きな振動を起こす。次の瞬間、柱や善逸たちは吹き飛ばされて意識を失っていた。

その中でカナヲはただ一人意識を保っていた。しかし、日輪刀を折られた上に重傷を負っており、戦うことができなかった。無惨はそんなカナヲに歩み寄ってトドメを刺そうとする。

その時、炭治郎が現れ、無惨の腕を斬り落とした。炭治郎は顔の一部が無惨の血で変貌していたが、愈史郎の治療により一命を取り留め、意識を取り戻していた。

無惨は炭治郎を見て「何という醜い姿だ。これではどちらが鬼かわからないな。竈門炭治郎」と吐き捨てた。その時、無惨は炭治郎と縁壱の姿を重ね合わせ、「…虫唾が走る」と呟いた。炭治郎は「終わりにしよう。無惨」と告げた。
 


【原作】22巻192話「廻る縁」
炭治郎回想→「廻る縁」【原作】22巻192話
無惨は柱を倒した時と同じ轟音と大きな振動を巻き起こす。炭治郎は出血するが無惨の攻撃が見えていた。無惨は背中の管や両手よりもさらに速い八本の管を腿から出して攻撃していた。炭治郎は『円舞』『烈日紅鏡』『火車』を続けて繰り出して攻撃を仕掛ける。
 


【原作】22巻193話「困難の扉が開き始める」
強くなった炭治郎を見た無惨は「死の淵を垣間見た生き物はより強靭になると私は知っている。死を回避する為に通常生きていく上では不必要だった感覚や力の扉が開かれるのだ」という思いを抱いた。その時、炭治郎の日輪刀は赫刀に変わっていた。

しかし、そんな炭治郎でも縁壱と比べるとまだまだ大きな差があった。無惨は「及ばない。遠く及ばないのだお前たちは。あの男には。あの男の赫刀は、斬撃は、こんなものではなかった」と思った。

日の呼吸を続け様に繰り出す炭治郎の動きはみるみるうちに鈍っていった。無惨は「もう技の精度が落ちた。赫い刃もすぐ元に戻る。所詮此奴もこの程度。当然だ。あんなもの(縁壱の事)然う然う生まれてなるものか」と思い、炭治郎に攻撃を仕掛けた。だが、炭治郎はギリギリで無惨の攻撃をかわしていた。

無惨は「何だ?変わらず動きは精彩を欠いて遅い。何故私はその疲弊しきった手負いの人間一匹に止めを刺せない?」という疑問を抱いた。無惨はすぐさまその答えにたどり着いた。炭治郎を倒せなかったのは、無惨自体も遅くなっていたからだった。無惨はその原因が珠世によって投与された薬にあると睨んだ。

無惨は自身に取り込んだ珠世の細胞に対し、「お前は何をした?私に使った薬は人間返りではなかったのか?」と問いかけた。すると珠世は「お前に…使った薬は…人間に戻すもの…。それと…言わない。無駄に増やした脳味噌を使って考えたらどうだ?」と言って笑った。無惨は珠世の細胞に問うのを諦め、細胞に残る記憶を読んだ。

珠世はしのぶと薬の研究をしていた。しのぶは「薬は複数のかけ合わせにしましょう。分解されることは前提で進めるべきです。
一つ目は「人間に戻す薬」。そしてそれが効かなかった場合、残った薬がより強力に作用するよう細工をします。
二つ目は「老化の薬」が望ましいですね。珠世さんが作ったこれなら一分で五十年無惨を老いさせることができる」と話していた。

無惨は老化の進行を喰い止める為に力を削がれていたのだった。薬が効き始めるまでの時間を差し引いたとしても三時間以上は経過していた。つまり無惨は九千年は老化していたのだった。無惨の髪が白く染まっているのは、それが理由だった。

その時、鎹烏が「夜明ケマデ五十九分!」と告げた。その時、炭治郎は全ての日の呼吸を繋げる事に成功した。
 


【原作】22巻194話「灼熱の傷」
しかし、炭治郎は酸欠を起こしていた。無惨はその隙をついて攻撃を仕掛けるが、炭治郎は伊黒に助けられる。伊黒は無惨の攻撃で顔を斬り裂かれ、両目を潰されていた。伊黒が蛇の鏑丸の察知能力によって無惨の攻撃をしのぐと、無惨は「あのような畜生に私の攻撃が読まれているだと?」と激怒した。

無惨は老化薬の分解に手間取っており、そちらに体力を奪われて手負いの伊黒を倒せないでいた。その時、無惨の身体に無数の古傷が浮かんだ。それは縁壱につけられた傷だった。縁壱の攻撃は何百年経っても治癒せず、ずっと無惨の細胞を灼き続けていたのだった。



【原作】22巻195話「めまぐるしく」
無惨は「あの男(縁壱)は初め弱く見えた。覇気も、闘気も、憎しみも、殺意もない。そんな男が私の頚を刎ね斬り刻むなど、さらにはその傷が何百年もの間、太陽の光のように私の肉を細胞を灼き続けるなど、例え神や仏でも予想できなかったはず。出鱈目な御伽噺としか思えない。本当の化け物はあの男だ。私ではない!」という思いを抱いていた。

縁壱がつけた傷は、心臓と脳と一緒に移動していた。それにより、『透明な世界』が感知できなくても的確に急所を狙うことが可能となっていた。

その時、鎹烏が「夜明ケマデ四十分!」と叫び、それを聞いた無惨は逃走を始めた。無惨は誇りを持った侍でも、感情で行動する人間でもなく、生きることだけに固執している生命体であるため、逃走する事に一切の抵抗もなかった。

逃走する無惨は、背後から飛来する日輪刀に気づく。炭治郎は周辺に落ちていた日輪刀を投げていた。無惨は刀を払いながら「しつこい虫共。払っても払っても纏(まと)わり付く。今は斬撃よりも体深くに刀が貫通する方が危険だ」と思っていた。

しかし次の瞬間、伊黒に日輪刀を首元に突き立てられる。さらに愈史郎の札を持った炭治郎も追いつき、無惨の反撃を受けながらもなんとかその札を伊黒と鏑丸に渡すことに成功する。伊黒は愈史郎の札を使って鏑丸と視界を共有し、炭治郎と連携して無惨を挟むように戦った。

無惨は気づけば息切れをしており、自身の体力が限界に近づいているという驚愕の事実に気づく。



【原作】22巻196話「私は」
 →禰豆子私は
戦いを続ける中、無惨は柱たちの命の気配を感じ取り、柱たちが戻ってくる事を予感した。

夜明ケマデ三十五分!」と鎹烏が告げた時、無惨の左腕が膨れ上がった。無惨は縁壱と戦った時と同じ様に肉片を飛散させて逃亡しようとしていた。それに気付いた炭治郎は「伊黒さん、無惨が分裂する!」と叫んだ。

しかし、無惨の左腕はそのまま萎んでいき、無惨は驚愕の顔を浮かべた。無惨は分裂できなかったのは珠世のせいだと気付いた。

「そうか。薬は三つだったのか。人間返り、老化、分裂阻害。女狐が…!」と無惨は苛立ちをつのらせた。その時、幻覚か亡霊か無惨の傍らに珠世が現れ、「残念。はずれです」と言って笑った。その瞬間、無惨は吐血する。「薬は四つですよ。三つの薬で弱った所に細胞破壊の薬が効き始める。さぁ、お前の大嫌いな死がすぐ其処まで来たぞ」



【原作】23巻197話「執念」
「お前を殺す為にお前より強くなる必要はない。お前を弱くすればいいだけの話。お前が生きる為に手段を選ばないように、私も…私たちも、お前を殺す為に手段を選ばない」と珠世は告げた。

本来ならば、縁壱には遠く及ばない炭治郎たちの攻撃は無惨に通じるはずもなかった。例え肉を断たれたとしても無惨はすぐに修復が可能で、疲労する事もなかった。

しかし、珠世の四種の薬により無惨は追い詰められていた。無惨に投与されている毒は、しのぶが上弦の弐である童磨に使った物とも異なっており、分析・分解に時間が必要だった。

無惨は一瞬動きを止め、次の瞬間に周囲に凄まじい衝撃を放つ血鬼術を使用した。無惨の身体には巨大な口が出現していた。その血鬼術を受けた炭治郎と伊黒は痙攣が止まらず、身体を動かす事も、呼吸をする事もできなくなった。

さらに烏を通して戦いを見ていた産屋敷輝利哉やその姉妹にもその影響が及び、輝利哉たちは鼻血を出していた。この時、夜明けまであと二十五分になっていた。

無惨は炭治郎たちを置いて逃走しようとするが、伊之助が無惨の前に立ち塞がった。無惨は疲労により術を使用する事ができなくなっていた。無惨は地中から腕を伸ばして自身に斬りかかる伊之助を捕らえた。
しかし、善逸が割って入って伊之助を助ける。無惨は善逸を攻撃するも、伊之助に阻まれて善逸にとどめを刺す事ができなかった。

無惨は疲労により身体が鉛のように重く感じていた。何度も立ち上がる伊之助や善逸を見て、無惨は「また立ち上がる害虫共。潰しても潰しても死なない。湧いて湧いて、何度でも立ち上がる。夜明けまで。私の息の根を止める瞬間まで」と苛立った。



【原作】23巻198話「気付けば」
善逸と伊之助と戦う中、無惨は炭治郎と伊黒に使った衝撃波を放つ血鬼術を使用する。しかし連発する事ができない上に、腕や触手の速度も落ちていた。無惨は炭治郎に日輪刀を突き立てられ、壁に押し付けられた。

炭治郎を攻撃して逃れようとするも、そこに現れた甘露寺に左腕を引きちぎられ、さらに現れた実弥によって右腕と触手を斬り落とされる。次の瞬間、無惨の顔が割れ、巨大な口が出現して炭治郎に喰いつこうとすると、伊黒が間に入って炭治郎を守った。

その時、遂に夜が明けた。



【原作】23巻199話「千年の夜明け」
夜明けを見た無惨は強烈な衝撃波を放ち、炭治郎たちを振り払おうとした。実弥や伊黒は吹き飛ばされるが、炭治郎は左腕を失いながらも踏みとどまっていた。炭治郎は片腕で日輪刀を赫刀に変えようとしていた。その時、炭治郎の背後に義勇が現れ、共に日輪刀を握って赫刀を顕現させた。

無惨は吐血し、更に日に顔を灼かれた。「体を縮めれば一瞬で灼き尽くされる。肉体を守れ。肉の鎧を」と考えた無惨は、肉を膨れ上がらせ、巨大な赤ん坊の姿となった。炭治郎は膨れ上がった肉に呑まれた。

赤ん坊は日光に灼かれながら逃走を始めた。生き残っていた鬼殺隊の隊士たちは瓦礫を落としたり、車で赤ん坊に突撃したりして赤ん坊を引き止めた。赤ん坊が隊士たちに攻撃しようとした時、実弥が赤ん坊の腕を斬り落としてそれを防いだ。

そこに悲鳴嶼も現れる。悲鳴嶼は日輪刀の鎖を赤ん坊の首に回し、鬼殺隊の隊士たちと一緒に鎖を引いた。引き倒された赤ん坊は伊黒や義勇、実弥の攻撃を受けつつも、鎖を引きちぎって地中に逃げ込もうとする。

その時、赤ん坊に呑まれていた炭治郎が日輪刀を握って赫刀を発現させた。すると赤ん坊は血を流して絶叫し、太陽に灼かれて消滅していった。



【原作】23巻200話「勝利の代償」
→「悲鳴嶼行冥回想
→「伊黒小芭内回想
→「不死川実弥回想

鬼殺隊の面々は長い戦いが終わった事で歓喜の声をあげた。そしてすぐに負傷者の治療が行われた。

義勇は動かないように言われながらも、「炭治郎はどこだ…。炭治郎は無事か。」と言いながら炭治郎のもとへ向かう。すると鬼殺隊の隊員が「…とっ、とりあえず手当てを!」と義勇を遮るように立ちはだかった。

義勇はその奥で血だらけで座り込む炭治郎の姿を目撃する。炭治郎の周囲にいた鬼殺隊の隊員は「息してない。脈がない。炭治郎…。」と泣いていた。



【原作】23巻201話「鬼の王」
死ぬ間際、無惨は幼少の頃を思い出していた――
無惨は生まれつき身体が弱く、母親の胎内で何度も心臓が止まり、生まれた時には脈も呼吸もなく、荼毘に付されようという際に必死に産声をあげた。
 
本来、呼吸を極めた剣士の身体は鬼にはなり難いのだが、無惨は己の全ての血と細胞を流し込む事で炭治郎を強引に鬼化させた。そしてさらに本来であれば、無惨の細胞を大量に流し込まれた者は変化に耐えきれずに肉体が崩壊して死亡するのだが、炭治郎は無惨の期待通りその大量の血に順応してみせて、その結果無惨の言っていた「鬼の王」として蘇った。

無惨によって作られた全ての鬼は、無惨が死ねば残らず死滅するのだが、「鬼の王」は無惨の全ての力を継承してそれに順応して生まれた「新たなる鬼の始祖」である。故に無惨が死んだ後も独立して生き残り、「無惨の意思を継ぐ者」として活動とさらなる進化を続ける。

かつて産屋敷耀哉は、自分が死ぬ直前に無惨に対して、人の想いは継承できるからこそ永遠だと告げた。無惨がこのような最後の手段を取るに至ったのは、無惨が産屋敷の言葉を心の底から認めたからだろう。
鬼になった直後で飢餓状態に陥って理性を失い、涎を垂らしながら義勇や隠の面々に躊躇なく襲いかかる炭治郎に対し、義勇は悔し涙を浮かべながらも「炭治郎が人を殺す前に」「炭治郎のまま死んでくれ」と彼の抹殺を即断。

自分を含めて無惨および上弦との戦いでもはやまともに戦える者がほとんどいない今の鬼殺隊の戦力ではその頚を斬って殺すことは困難と判断し、無惨と同じように太陽の光で焼き殺そうと炭治郎を日向で拘束する。

しかし、炭治郎に太陽は効かなかった。
最初こそ日光で皮膚が焼け付いていたが、それもほんの数秒で停止。

無惨は後に太陽光を克服して見せた禰豆子と血を分けた兄にして、「日の呼吸(ヒノカミ神楽)」を体得した炭治郎ならば、自身が鬼となっても妹と同じように陽光を克服できるだろうと目算、その予測は見事に的中。

まさかの戦友の変貌に善逸は為す術もなくただ絶望の言葉を零し、伊之助も現場に駆けつけ状況を即理解し炭治郎の頚を斬ろうとするが、彼との過去のやり取りを思い出して剣が鈍り、泣きながら「斬れない」とその悲痛な心情を吐露した。
 



【原作】23巻202話「還ろう」
しかし炭治郎が伊之助に襲い掛かる寸前で、遂に人間とへと戻った禰豆子が駆け付ける。禰豆子は兄にしがみ付きながら「家に帰ろう」と必死に呼びかけ、これ以上皆を襲うのを喰い止めようとした。

そんな禰豆子や善逸と伊之助の叫びも虚しく、炭治郎は禰豆子を傷つけ仲間達に襲い掛かる。その状況を見た義勇は禰豆子に噛み付いて人の血肉の味を覚え、なおかつ目の前に血の滴る禰豆子がいるにも関わらず喰おうとしない事で、炭治郎もまた禰豆子と同様に抗っているのではないかと気付く。

その時現れたカナヲが、残された左目で「終の型・彼岸朱眼」を使い、傷を負わされながらも、しのぶから万が一に備えて預けられていた「鬼を人間に戻す薬」を炭治郎に注入――この薬は珠世が作った3つの「鬼を人間に戻す薬」とは別に、しのぶが藤の花から作った物である。

動きを止めた炭治郎は、カナヲの「禰豆子ちゃん泣かせちゃ駄目だよ・・・」という言葉に反応を見せた。



【原作】23巻第203話「数多の呼び水」
カナヲの活躍によって、鬼の肉体の奥底に閉じ込められた炭治郎の意識が目を覚ますが、ただただ家に帰る事だけを望む炭治郎に無惨の肉片が語りかける。

「帰ってどうなる」
「家族は皆死んだ」
「死骸が埋まっているだけの家に帰ってどうなる」

炭治郎は家族との「幸せな日々」の思い出が残っている――そしてそれらは自分と禰豆子が生きている限りは消えないのだと無惨を振り切ろうとするが、無惨は「禰豆子は死んだ お前が殺した」と炭治郎を引き留めようと嘘を吐く。

失った両親や兄弟たちに背を押されながらなおも無惨の支配から逃れようとする炭治郎に、さらに無惨は心を砕こうと辛辣な言葉を投げかけ続ける。

それでも「みんなが俺を心配してくれてる 匂いでわかる」と決して折れない炭治郎に無惨は業を煮やし、痣の寿命の話を持ち出して炭治郎を説得しようとする。

「鬼でなくなれば数年の内に死ぬのだぞ 痣の代償を払わねばならぬ」「自分のことだけを考えろ 目の前にある無限の命を掴み取れ」

だがそれすらも炭治郎は「無限の命なんか少しも欲しくない いらない」と撥ねのける。炭治郎の自責の念に訴えかけようとした無惨の言葉は、炭治郎の心を挫きかける。
その時だった――炭治郎の背中を押す7人の腕。かつて炭治郎を救い、あるいは救われ、共に戦い、そして命を落とした勇敢な剣士達が、今再び炭治郎を支えていた。

「こんなものお前の妄想だ 恥を知れ!やめろ」と焦る無惨を尻目に、炭治郎は懐かしい匂いを感じとる。

「しのぶさんの匂いがする いや…これは…藤の花の匂いか…」

いつの間にか炭治郎の頭上一面に咲き乱れていた藤の花。そこから差し伸ばされる手は人間に戻った禰豆子の手、そして善逸、伊之助、義勇ら多くの仲間達の手だった。

「お兄ちゃん 帰ろう」
天上へと引き上げられていく炭治郎にしがみつきながらなおも叫び続ける無惨。だが炭治郎はそんな無惨の自分勝手な言葉を「(みんなは)自分ではない誰かのために命を懸けられる人たちなんだ」と一蹴する。

もはや無惨は炭治郎にしがみつく事すら出来ず、取り残されてただ懇願する事しか出来ない。そしてそんな無惨の言葉にもはや炭治郎は応える事すらなく、そのまま藤の花から差し出された義勇、善逸、伊之助に加え、多数の仲間達の手が炭治郎を引き上げる。

無惨は「炭治郎!炭治郎行くな!私を置いて行くなアアアア!」と叫んだ。
炭治郎が目を覚ますと、そこにいたのは人間に戻った禰豆子、そして死闘を共に戦い抜いた仲間達だった。

自身が鬼になってしまい禰豆子を、そして仲間を傷つけてしまった事を謝る炭治郎に、やっといつもの炭治郎が戻ってきてくれたのだと歓喜に沸く禰豆子と仲間達。

こうして炭治郎に自身の歪んだ意志を押し付け「鬼の王にしようとした無惨の目論見」は潰え、全ては終わり平和が訪れた。