鬼滅の刃−遊郭編






第9話「上弦の鬼を倒したら」

【原作】11巻90話「感謝する」
      〜92話「虫ケラボンクラのろまの腑抜け」

雛鶴は藤の花の毒を塗り込んだクナイを妓夫太郎に放つ__上弦の鬼でも隙きを作れるはず。「お願い効いて!ほんの僅かな間でいいの、そうしたら誰かが必ず頚を斬れる...!」

ある春の日、宇髄、雛鶴、まきを、須磨の4人は宇髄家の墓参りへ。宇髄は死んでいった兄弟たちの分として墓に酒をかける。墓の前で弁当を食べながら酒盛りをする4人。
雛鶴の頬に桜の花びらがくっつき、宇髄がそれを取る。雛鶴は「その花びら、貰ってもいいですか?」と尋ねる。それを見た須磨、まきをは「私も!!」と羨ましがる。

炭治郎と宇髄の刀が妓夫太郎の頸に迫る。が、妓夫太郎は足を再生させ、反撃に出る。『血鬼術 円斬旋回・飛び血鎌』予備動作も無い、無数の斬撃だ。『音の呼吸 肆ノ型 響斬無間』宇髄の攻撃で飛び血鎌はふせいだが、妓夫太郎は雛鶴の口元を掴む。宇髄は助けに向かおうとするも堕姫の帯に阻まれてしまう。

雛鶴の頭に宇髄達との約束がよぎる___
「上弦の鬼を倒したら一線を退いて普通の人間として生きていきましょう。忍として育ち、奪ってしまった命がそれで戻るわけではありませんが、やはりどこかできちんとけじめをつけなければ恥ずかしくて陽の下を生きて行けない。その時四人が揃っていなくても恨みっこなしです。」
雛鶴の危機に炭治郎は己を奮い立たせる。
「動け、動け動け動け。また殺される、目の前で人が殺される。俺が予想外の動きをすれば助けられる。神楽を使え、ヒノカミ神楽だ。考えろ、考えろ、自分にできる最大のこと、今の俺にできることは!!」
炭治郎は水の呼吸とヒノカミ神楽を合わせた技を発動。妓夫太郎の腕を切り落とし、雛鶴を助けることができた。妓夫太郎が炭治郎に襲いかかるが、宇髄は頸に目掛けて刀を振る。

一方、伊之助と善逸も堕姫の頸を狙おうとするが、攻撃が届かない。炭治郎も刀を振る。だが、刀を鎌で防がれてしまう。宇髄が背後からもう1本の刀を振るが、妓夫太郎は頸をぐるりと回転させて、口で咥える。宇髄は妓夫太郎が血鎌を放つ気配を感じる。妓夫太郎と共に飛び出す宇髄。一人で引き受けるつもりだ。
そこに堕姫の帯が迫り、伊之助と善逸がなんとか防ぐ。だんだんと3人の動きは鈍り、堕姫は「誰が最初に潰れるのかしら」と余裕の態度。「俺と紋壱(善逸のこと)が殆ど無傷なんだ、俺たちがやらねぇと。何のための修行してきたんだ、何のために!!」煉獄の最期の姿が頭によぎる。

炭治郎と善逸は伊之助を援護することに。
『獣の呼吸 捌ノ型 爆裂猛進』
『水の呼吸 参ノ型 流流舞い』
『雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃・八連』
3人の連撃が炸裂した。
さすがの堕姫も防ぐのが精一杯。そこに伊之助が防御を捨て、突撃する。『陸ノ牙 乱杭』刀を鋸のように使い、堕姫の靭やかになった帯の頸を斬り落とした。伊之助は時間を稼ぐ為に堕姫の頸を持ち、体から離そうと駆けていく。堕姫は「クソ猪!!」と髪で抵抗する。

頸を斬られた堕姫の力は弱く、伊之助は髪を斬っていく。が、伊之助は妓夫太郎に血鎌で刺されてしまった。毒が回り、戦いが長引けば不味い。ふと目をやると倒れた宇髄の姿が。左腕は斬り落とされていた。堕姫の帯が炸裂。善逸が庇おうとするも炭治郎は吹き飛ばされてしまう。

炭治郎は、自分が目を離さなければ、自分がもっと早く妓夫太郎に気付いていれば、自分が宇随のそばを離れなければ、と後悔します。



第10話「絶体諦めない」

【原作】11巻92話「虫ケラボンクラのろまの腑抜け」
      〜94話「何とかして」

堕姫、妓夫太郎からの反撃を受け、炭治郎たちは壊滅寸前まで追い込まれてしまう。

炭治郎の頭の中に禰豆子の言葉がよぎる。
「謝らないでお兄ちゃん、どうしていつも謝るの?そんなに誰かのせいにしたいの?精一杯頑張っても駄目だったんだから仕方ないじゃない。」
禰豆子の姿が人間だった頃から鬼となった今の姿に変わっていく。
「人間なんだから誰でも何でも思い通りにはいかないわ。幸せかどうかは自分で決める。大切なのは今なんだよ、前を向こう、一緒に頑張ろうよ、戦おう!!お兄ちゃんならわかってよ、私の気持ちをわかってよ!!」

炭治郎が目を覚ますと当たり一面が火の海。
目の前には妓夫太郎が立っていました。妓夫太郎からみっともねえなあ、と何度も侮辱され、さらに指を折られた炭治郎ですが、炭治郎は妓夫太郎に言い返さずじっと耐えます。
炭治郎は禰豆子が入った箱を抱えて逃げ出す。つかさず妓夫太郎は追いかけ、強烈な蹴りをお見舞いする。炭治郎は頭を下げ、動かなくなってしまう。

炭治郎は上を向く。「悔しいんだなあ、自分の弱さが。人を嘆く時天を仰ぐんだぜ、涙が溢れねえようになああ。」「俺は...俺は...準備してたんだ...!!」炭治郎の渾身の頭突きが妓夫太郎に炸裂する。ただの頭突きならば効果は薄いが、雛鶴から受け取ったクナイを同時に突き刺していた。遊女の香り袋を引っ掻いてクナイの毒の匂いを隠していたので妓夫太郎も気づかなかった。
炭治郎は渾身の力を込めて妓夫太郎の頸にヒノカミ神楽を纏った刀を振り下ろす。「お兄ちゃん!!」と堕姫の叫びが聞こえ、炭治郎は妓夫太郎に自分の顔を重ねる。

炭治郎は妓夫太郎の姿を見て、ひとつ間違えれば二人とも鬼になっていた未来もあったかもしれないと考えます。しかし、もし自分が鬼に堕ちたとしても必ず鬼殺隊の誰かが自分の頸を斬ってくれるはず、と確信し妓夫太郎の頸を斬ろうと全力を振り絞ります。
善逸が瓦礫の下から飛び出してくる。『雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃 神速』を発動して堕姫の頸を捉える。あまりの速さに驚愕する堕姫。炭治郎は必死で妓夫太郎の頸を斬ろうとする。が、毒から回復した妓夫太郎は飛び血鎌を発動。炭治郎は弾き飛ばされてしまう。

血鎌が炭治郎に迫ったその時、宇髄が受け止める。宇髄は筋肉を操作で心臓を止め、毒の周りを遅らせていた。「“譜面”が完成した。勝ちにいくぞ!!」宇髄は妓夫太郎の左腕を斬り落とす。押さえている間、炭治郎が妓夫太郎に斬りかかる。妓夫太郎に取っては炭治郎の攻撃は遅い。そのまま血鎌を顎に突き刺す。怯むこと無く、斬りかかる炭治郎。
炭治郎の額の痣が大きくなっていく。
炭治郎の刃が妓夫太郎の頸に深く食い込む。妓夫太郎は堕姫の操作に集中。まずは善逸の方を片付けることにする。そこに伊之助が到着、堕姫に斬りかかる。「お兄ちゃんが心臓を刺したのに...!」と驚愕する堕姫。体が柔軟な伊之助にとって心臓の医師と動かすのは造作もなく、険しい山で育った彼には毒も(あまり)効いていなかった。伊之助も堕姫の頸を捉える。3人の刃が堕姫と妓夫太郎の頸を切り裂いていく。
堕姫の頸が斬り飛ばされる。と同時に妓夫太郎の頸も斬り落とされた。2人の頸は転がっていき、向かい合わせに__。


妓夫太郎の頸を斬り落とした炭治郎ですが、血鎌を顎に喰らったことで毒が全身に回り、炭治郎の体はすでに限界を迎えていた。なんとか呼吸で毒の周りを遅らせようとする。


そこに血相を変えた宇髄が__「逃げろーーー!!」その直後、頸を斬り落とされた妓夫太郎の体から血鬼術が放たれ、周囲の建物を破壊していきます。



第11話「何度生まれ変わっても」

【原作】11巻95話「最後」
      〜97話「何度生まれ変わっても(後編)」

炭治郎たちは最後の力を振り絞り、堕姫を妓夫太郎の頸を斬り落とす。だが、妓夫太郎の円斬旋回が発動。遊郭の街は切り裂かれていく。
炭治郎が目を覚ますと禰豆子が覗き込んでいた。禰豆子が血鬼術を使って、攻撃から助けてくれていた。何故か毒も消えているようで炭治郎は「なんで俺は生きてる?」と疑問に思う。

すると「炭治郎〜」と善逸の叫び声が聞こえてくる。善逸は目を覚ましており、痛がり続ける。だが、それ以上に重症なのが伊之助。毒が全身に回り、心臓の音も弱っていた。炭治郎が「どうする!?今何とかしなければ伊之助は死ぬ!」と考えていると禰豆子が手から炎を発動。伊之助を燃やしてしまう。すると伊之助は「腹減った、なんか食わせろ!!」と復活した。

一方、宇髄の元に3人の嫁・須磨、まきを、雛鶴が駆け寄る。解毒剤は効かず、宇髄の命も残りわずかの状況。宇髄は覚悟を決め「最期に言い残すことがある…」と言おうとする。が、煩すぎて過ぎて遺言どころじゃない。禰豆子の血鬼術によって毒が消え去り一命をとりとめます。禰豆子の血鬼術・爆血は鬼の体と血鬼術のみを焼くもの。宇髄の毒は綺麗に消えた。
禰豆子におぶさり堕姫と妓夫太郎の頸を探す炭治郎。確認するまではまだ安心できない。2人は血溜まりを見つけ、血を回収。猫の茶々丸に預け、珠世の元に送って貰う。上弦の鬼の血を採ることができ、禰豆子を人間に戻す研究も進むはずだ。

匂いを感じて向かう炭治郎。堕姫と妓夫太郎は頭だけの状態でお互いを罵り合っていました。堕姫は妓夫太郎を出来損ないの醜い奴と罵り、妓夫太郎も怒って「お前なんか生まれてこなければ良かった」と言いそうになりますが、その様子を見た炭治郎と禰豆子は悲しそうな表情を浮かべていた。言葉の途中で炭治郎は妓夫太郎の口を塞ぎます。

「嘘だよ。本当はそんなこと思ってないよ、全部嘘だよ。仲良くしよう、この世でたった2人の兄妹なんだから。」
堕姫は悔しさからか「死にたくないよぉ!お兄ちゃ…」と泣き叫ぶ。堕姫の頸が完全に崩れ、妓夫太郎は人間だった頃の名前である「梅!!」と叫ぶ。
妓夫太郎は人間だった頃の記憶を思い返す。
江戸時代、妓夫太郎は羅生門河岸という遊郭の最下層で産まれた。さらに醜い顔は美しさが全てである遊郭では最も忌み嫌われる存在。「虫けら、ボンクラ、のろまの腑抜け、役立たず__」この世にある悪口は全て妓夫太郎の為にあるようなもの。妓夫太郎は鼠や虫を食らってなんとか生き延び、遊び相手は客が忘れていった鎌だけだった。
やがて妹の梅が産まれ、妓夫太郎の人生も変わり始める。梅は自分とは正反対に美しい顔。さらに妓夫太郎は腕っぷしを活かした取り立ての仕事を始める。

梅が13歳の時に事件が起こる。
梅が言い寄ってきた客の侍に目に簪を挿し、失明させてしまった。彼女は見せしめとして生きたまま焼かれてしまう。妓夫太郎が戻って来た時には虫の息だった。
妓夫太郎は侍に後ろから斬られてしまう。妓夫太郎の力を持て余していた女将が仕向けていたのだった。侍は妓夫太郎にトドメを刺そうとする。が、妓夫太郎は一瞬のうちに後ろに回り、鎌を女将に突き刺す。妓夫太郎は侍を鎌で斬り裂く。

妓夫太郎は「人間は誰も助けちゃくれない、いつものことだ。いいことも悪いこともかわるがわる来いよ」と梅を抱えながら嘆く。やがて雪が降り、2人の前に上弦の陸の鬼・童磨が現れる。

「可哀想に俺は優しいから放っておけないぜ、その娘間もなく死ぬだろう。お前らに血をやるよ、2人共だ。あの方に選ばれれば鬼となる。」鬼に助けられ、鬼となることで妓夫太郎と梅は生き長らえることができた。
妓夫太郎は鬼になったことは後悔していませんでしたが、梅はもっといい別の人生があったんじゃないか、それが心残りだと考えます。
奪われる前に奪え、取り立てろと妓夫太郎が教えたから侍の目玉を突いたが、従順にしていれば何か違う道があったかもしれない、唯一の心残りは梅だった、と心の中でつぶやきます。

気が付くと妓夫太郎は知らない場所に立っていました。そこには人間だった梅の姿の堕姫もいます。妓夫太郎は梅についてくるなと突き放しますが、
「何回生まれ変わってもアタシはお兄ちゃんの妹になる、絶対に!!1人にしないで、置いてったら許さないわよ!!約束したの覚えてないの!?」梅は一生懸命謝るとお兄ちゃんについていくと言い、妓夫太郎の背中に抱きつき離れようとしません。

  人間だった頃__雪の降る中、妹を抱きしめていた時のことを思い出す妓夫太郎。「俺たち2人なら最強だ。寒いのも腹ペコなのも全然へっちゃら。約束する、ずっと一緒だ、絶対離れない。ほらもう何も怖くないだろ?」

そして、妓夫太郎は堕姫を背負ったまま地獄の業火の方へと進んでいく。

妓夫太郎の頸が完全に崩れ、光となって星空に消えていく。その様子を見て炭治郎は「仲直り出来たかな?」と、炭治郎は言い、禰豆子はそれを聞いて力強く頷きます。
 
宇随天元と合流した蛇柱・伊黒小芭内は、上弦の陸との戦いで左手と左目を失ったことを、ねっちねっちと責め続けます。宇随天元は失った左手と左目を理由に引退すると言いますが、伊黒小芭内は若手が育たず死に過ぎるから死ぬまで戦うように言います。
しかし、若手は確実に育っている、お前の大嫌いな若手がな、と宇随天元は言うと、伊黒小芭内は炭治郎が生き残ったことに気付き驚きます。この激しい戦いで生き残った炭治郎たちに宇髄は希望を見出していた。
一方、上弦の陸を倒したという連絡を受けた、当主・産屋敷耀哉は吐血しながらも、百年変わらなかった状況が変わると喜びます。そして、必ず私たちの代で鬼舞辻無惨を倒すと断言しますが、吐血が酷くなり倒れてしまいます。

一方、無惨の本拠地の異空間・無限城に上弦の参・猗窩座がやってくる。猗窩座は上弦が鬼狩りに殺られた、と直感します。